どうして、こんなに綺麗だと感じるのだろう?

 ひとこと紹介の通りの印象があります。

 美しいのではなく、綺麗。

 世界が滅ぶ日、その直前を描いた物語はディストピアではなく、とても安らかな世界で、読んでいくうちに明言されていない景色まで浮かぶ様でした。作者が想定しているのとは食い違うとは思うのですが、全編通して、入道雲もない真っ青な夏の空をイメージしてしまうくらい、突き抜けて綺麗な世界です。

 こういう日でなければ口にしなかった言葉、取らなかった行動だと感じてしまうが故に、この滅びへ向かう日が回避されない事すら綺麗に感じます。

 最終話も、こんな状況だから実った徒花かも知れませんが、それでも花は花。

 とても綺麗な、宝石でできた花の様な短編3つ、今、読めて良かったと思える物語です。