銀色の少女
いつの間にか眠っていたようだ。
レコーダーを発見してから早3日。
貴重な音声記録とまではいかないが、残しておく価値はあるだろう。
周りには人影どころか小動物すらいやしない。
「よっこらしょっと。」
備蓄は残り3日分。そろそろ探しに行かなければ。
「さてと、音声が言ってた施設はどこかねえ。」
先人は失敗したみたいだが、それは大人数分の食料を持ち帰ろうとしたからだ。
俺みたいに一人ならば、持ち帰る物資は少量で済む。奴にもバレにくい。
「周りにゃ...なにもいねえか。」
見渡す限り廃墟とコンクリの灰色。
「まったく、こうも同じ景色ばかりじゃ飽きてくるな。」
と、その時、何かが動いていて...
「ん?一応準備はしとくか。」
肩に背負っていたゴルフバックを下す。
重かったからすっきりする。
「ここを、こうしてっと。」
少し力はいるが、組み立て終われば、
「アンチマテリアルライフルの完成ってな。」
黒光りするデカ物のお出ましだ。
奴を倒すなら、近距離での乱射より遠距離からの一撃のほうがいいはず。
さっき動いたものが何なのか、確かめるために照準器を除き、しかし、
「いねぇ。組み立てに時間かけ過ぎたか。」
こうなると怖くなる。気づいたら首が飛んでいたなんてならないように歩く。
生まれてから47年。そう簡単には死んでやらないという覚悟はある。
歩き始めて10分は立っただろうか、交差点に差し掛かって、
「っ!」
その時感じたのは突き刺すような殺気。
「お出ましってかァ!?」
すぐさま撃つ。
そっちをむく暇なんてない。体を向けつつの乱射だ。
横を向きかけた視界の端に、少し銀色の光が見えた。
「やべっ」
しゃがむ。頭上を何かが通り抜けたかのような感覚が来て、しかし、
...生きている
「こっちの番だ!」
弾丸を惜しまず撃つ。やらなきゃ死ぬ。
改造したおかげで重量を犠牲に弾数は増加している。
そうして飛んで行った弾はしかし何かにはじかれる。
それはさっき頭上を通り過ぎた光の正体で、それを知覚するぐらいの間自分の動きを止めてしまったということは、
飛んでくるのは風と音。
受けるのは自分の体。
「がっ!」
内臓にダメージが来たのか、血液交じりの息を吐きだす。
相手はこちらがもうほぼ動けないとわかっているのか、歩いている。
その姿は、今までこちらを殺しに来ていたとは思えないほど、
可憐で、
幼い、
───銀色の、少女だった。
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