津波

銀の濁流が包み、流し、周囲の固定されていないものをすべて掻っ攫った。

人、置物、全て。その濁流の中心に佇む少女は、管の中にいたときとは違い、

憎悪と怒りを含んだ目で周りを見渡し、その目で見られた方向に銀色が迸る。

銀色に包まれ揺蕩う私には何もできず、ただ見ていることしかできなかった。

周りにいた人々の多くはすでに銀色の下へと沈み、動きを見せない。

なぜ自分が飲み込まれないのか、そもそもこの銀色は何なのか。

その問の答えは返されることなく、私の意識は沈んでいった。




次に目が覚めたのは荒廃した景色の中。

少女と銀色はどこにも見えず、人の姿も見えない。

建物の殆どは表面が長い年月が立ったかのように寂れ、電飾は光を発さずにいる。

自分が長い間寝ていたか、気絶していたのかと自分の体を見るが、年月の変化を感じない。

それに、銀色の液体のようなものに使っていたはずなのに、服や体は少しも濡れていない。

出てくるものは疑問ばかりで、そのすべての答えは出ない。

わかるのは何故か世界が荒廃しており、周囲に人影がないということ。

何もわからぬまま、とりあえず屋根の下に入ろうと建物の中に入ると、商品棚から落ち、壁に押し付けられたかのような食品や飲み物、雑誌などが目に入る。

元はコンビニだったのだろうか。

人影も見えず、気配もなく、空腹だったので、ありがたく食べれそうなものをいただきつつ、今後について考えるべきだろうか。

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