脱走

耳に甲高い声が届く。

それは叫び声のようで、悲鳴のようでもあって、怒鳴り声でもあるような気がする。

そんな判別もつかないほど、周囲は音に満ちていて。

でも、そんな騒音すらも気にならないほど私が高揚しているのも確かで。

これは夢だとわかっていても、覚めたくないと思っていても。

周りがとてもうるさくて。音で無理やり私は起こされて。

起きると同時にそれは消え失せて。

ああ。夢すらも見させてくれないならば。

すべて壊してしまおう。

ああ。なぜ今まで我慢していたのだろう。

先にやったのはそっちだ。私を晒し者にしたのはあっちだ。

晒し者になった原因を作ったのもあっちだ。

全部あっちが悪いのだから、私がつらい思いをしなければいけない理由なんぞ存在しなかったんだ。

そうと分かれば話は早い。

壊そう。

人も、物も、動物も、それ以外もすべて。

私の入れ物となっていたものを壊す。外に出る。

一瞬の静寂の後、爆音が耳に届く。

悲鳴、叫び、怒号。

夢で見た世界がそこにはあって。

私を縛り付けていたものも今は無く。

ただ、自由のみが、そこにはあった。




『...臨時..ュー...です。

先ほど、■■基地に収容さ...いた■■が脱走。現在は人を襲,,,つつ都市部に...かって移...しています。

■■は、......マシ..を自..に操り、こちらを殺...しよう..して..ます。

交..は不..能だ..思わ..ます。

■■市、■■市、■■市にお住...の...々は必要..低限の荷...を持ち、避...してください。

そのほ..の場所にお..いの方々も、...物をまとめ、いつでも避...できようにお願いします。

■■に対しての攻..は無...味だと思われます。

現在、軍が鎮..・...害を試みて...ますが、成果...出てい...せん。

以上。...時ニュ...スで..た。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る