終末世界の孤児院

 経過報告

 昨日拾ってきた少女はおおむね健康体のようだ。目立った怪我もなく、病気に罹患している様子もない。

 昨日、入浴させようとして気づいたが、外には使える入浴施設など残っていないはずなのに、少女の体は清潔に保たれていた。

 土や砂が付着していないどころか、垢なども見当たらない。

 近くにまともに使える入浴施設が残ってたのだろうか。そうだとしたらこの孤児院の衛生状況は大きく改善される。

 明日の物資捜索当番の人に伝えておかなければ。

 少女はこの孤児院の生活に慣れていないのか、あまり言葉を発さない。

 ほかの子供たちに話しかけられた時もそうだが、私たち保護者代わりの大人たち相手にさえ最小限の発声で済ませる。この孤児院に慣れていないだけならばいいのだが。

 当分は少女との会話を多く試みることで、少女の好悪の対象や精神性などを知っていかなければ。会話を繰り返していけば、少女も打ち解けてくれるだろう。一刻も早くこの環境に慣れてもらわなければ。


 少し小さな鐘の音が、終末世界の朝を告げる。

 その鐘の音をきっかけとして、布団のこすれる音や、衣装棚をあける音が響き始める。

 10分ほどたてば、複数人の子供たちが各々の部屋から飛び出してくる。元気に挨拶する子供もいれば、会釈だけで済ます子供もいる。

 年齢はバラバラで、性格も違う子供たちだが、肥満体系のものはおらず、表宇淳からやせ型くらいの体系のものしかおらず、この孤児院の食料事情を改めて痛感する。

 少し前に保護した少女も、まだ完全に打ち解けてはいないようだが、あいさつをされたら会釈を返す程度には進展したようだ。

 可憐で、新入りであるその少女は、男子の人気の多くをかっさらい、女子からの嫉妬を買っていたようだが、彼女の臆病で、人見知りであるという面を知ったものは、

彼女の面倒を見ているところを見ることが多くなった。

 大人組は彼女が保護される前に使っていたであろう入浴施設を探しているが、進展は芳しくない。

 子供たちの食事を作ったり、一緒に遊んだりする人員が必要な以上、そこまで人を割けない。

 そのせいもあるのか、入浴施設本体どころか手掛かりすら見つけられていない。

 保護から今まで少女の体は常時清潔に保たれていることから、彼女の体質なのではないかと噂するものさえ現れる始末だ。

 

 ───そういえば、少女を保護した場所には死体が転がっていたが、あの死体の犯人は誰なのだろうか。

 あの死体は、首を切れ味の鋭いもので一直線に首を切られていた。

 そこら辺にいる人間にはできない芸当だし、死体の近くには銃も転がっていた。つまり、あの死体の犯人は、銃を使う相手に対し接近し、ものすごい技量で相手の首を切断、その後、荷物などを荒らさずにどこかへ去ったことになる。

 周りに死体の血痕以外がなかったように見えたため、犯人は一発も被弾していないことを考慮しなければいけないかもしれない。

 誰がやったのかはわからないが、警戒を強めておくに越したことはないだろう。

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