美して、悲しい。切ない。でも温かい雛鳥の物語。

羽耳を持つ雛鳥たちが住まう島、クレセンティア。
そこには、人間を悪夢に閉じ込め、命さえも奪う黒い蝶・夢喰がいた。
祓うことができるのは、神獣セレニティの加護を受けた雛鳥の歌声。
故に歌うことが雛鳥の価値であり、力だった。

けれど、主人公のオトは過去のトラウマで歌えない。
さらに見目も片羽。
他の雛鳥たちから虐げられてしまうのだ。
それは、オトも感じる想い。『歌えない』自分。『片羽』の自分。

何重にも押し固まった概念という鳥籠は、簡単に破れるものではない。
だから少しずつ少しずつ、ゆっくりと寄り添うヒーローが必要なのだ。
しかし、このヒーロー。
自分とオト以外はどうでも良いという考えで、周りを振り回す。

真逆にいながらも寄り添えるのは、彼もまた……。

世界観もさることながら、歌の描写や歌詞。そこから見えてくる背景。
さまざまな演出を是非、読んで想像して見て欲しいと思いました。

美して、悲しい。切ない。でも温かい気持ちになる、このシンデレラストーリーを。

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