愛を知らぬ雛鳥が恋を始める御伽語。

 いきなりの題名ぶった切りから入ってしまった……。が、それこそがこの物語の真骨頂ではと思わせる。

 この作者様の作品は、いつも読んでいるのにその景色が鮮やかに見えてしまう。独特の世界観で描かれる、情景描写は本当にその色や匂いまでわかる様。

 今回のお話はとある東洋風の島国で暮らす、特殊な「羽耳」を持ち、神の恩寵を受けた「唄」を歌う少女と大陸から来た領事とのラブロマンスだが、そのお話の始まりは、読んで息苦しさを感じるほどに辛く痛々しい。そこに彼が現れて、それはもう颯爽と華麗に彼女をその苦境から連れ出してくれるのだが……。

 前半部はその辛さに共感し、後半部ではもう……苦いコーヒーをがぶ飲みしたく成るほどに、甘く切ない時が続く。

 情景描写と心理描写の妙に読むのは止まらなくなり、あっという間に読み終わること必至です。

 が……その読了後、余韻が永く続きます。

 オトの健気で純真無垢な心と、ノアのクソ甘イケメンぶりをどうぞアナタも体験して下さい。

 読了後、マジでコーヒー飲みたくなるから!

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