第7話 洞窟攻略

 

 

 翌朝。

 またしても爽快な目覚めだった。

 体が軽い。

 どうやらレベルアップしたようだ。

 また一段強くなった。


 朝食を食べて、準備をしてからダンジョンへ。

 ゴブリンが湧いている。

 やはりリスポーン時間は、丸1日よりは短い感じか。

 最近のゲームのデイリークエストみたいだ。

 早朝に更新されたり、22時間とか20時間のクールタイムだったり。


 未知のエリアを探索するのは、しばらくお預けだ。

 昨日寝る前に考えた通り、毎日一狩りできればそれでよし。

 毎日ゴブリンを20体狩ることを目安に頑張ろう。


 それを、とりあえず5日ほど繰り返す。

 そしたら切りよく銀貨100枚だ。

 レベルも上がるし、ドロップアイテムもそれなりに出るだろう。

 その資金で装備を更新して、物資を充実させて、未踏エリアの攻略といこう。

 完璧な計画だ。


 それ以外の時間は暇だけど、そこはまあ適当に時間を潰そう。

 なんならパソコンを買ってもいいかもしれない。

 データ管理とかも、やるならPCの方がやりやすいし。

 ゲームもできる。


 初期投資はかかるものの、無料ゲームで遊べばカネはかからない。

 暇を持て余して街に遊びに出るよりは、長期的に見て安上がりだ。

 そうしよう。


「いつかは絶対欲しいし、今買っても変わんないだろ」


 むしろ早ければ早い方がいいまである。

 ……別にゲームがしたいわけじゃない。

 これは仕事用、これは仕事用だから。

 決して娯楽の為ではない。

 ないったらない。


「うし、気合入れていくか!」


 PCの購入を決めたらテンション上がってきた。

 何買うか迷うな~。

 デバイスとかも揃えないと。


 その為にはカネを稼ごう。

 今日も、ゴブリン狩りの時間だ。



***



 5日後。

 攻略の手を止めて、定期的なゴブリン狩りを始めてから5日が経過した。

 私が洞窟で目を覚ましてから、ちょうど1週間だ。


 その間、毎日欠かさず狩りを続けた。

 自分に課したノルマのゴブリン20体をしっかり達成してきた。

 1日の稼ぎは、約銀貨20枚。

 日本円にして10万円。


 実働時間は毎日2時間程度。

 それでこれだけ稼げるんだから、もうウハウハだ。


 レベルは2度上がり、ドロップアイテムは3つ獲得した。


『ブロンズヘルム(Tier1)』

 魔力+1

 魔力回復+1


『メイジハット(Tier1)』

 筋力+1

 敏捷+1


『レザーレギンス(Tier1)』

 体力+1

 物理防御+1


 頭装備がかぶった。

 無理やり重ね着してみたけど、どうやら装備の効果は重複しないらしい。

 先に装着していた方が優先されるようだ。


 装備欄とかは見れないけど、ゲームのような装備枠はしっかりと設定されているらしい。

 そりゃそうだよな。

 でないと、カネに飽かせてとにかく装備を身につけるだけで、どんどん強くなってしまう。

 バランスブレイクもいいところだ。


 恐らくはショップでの分類が、装備の枠となっているのだろう。

 頭、胴、腕、脚、足。

 これが防具の5部位。

 他に武器や装飾品なんかのカテゴリもある。


 でも、アクセは戦士の指輪とゴブリンの冒険証で重複してるな。

 どういう扱いなんだろう。

 指輪と首飾りで違うとか?

 アクセの枠は複数あるのかな。

 この辺は要検証だな。


 メイジハットが戦士系の特殊能力で、ブロンズヘルムがメイジ系っぽい効果。

 やはり特殊能力のつき方はランダムなのか。

 何で逆じゃないんだ。

 なので今はメイジハットをかぶっている。

 頭部の防御力よりも、筋力と敏捷の上昇効果の方が価値が高いと感じたから。


 いらないブロンズヘルムは売却した。

 しかしショップでの売却価格は、Tier1装備の半額の値段、銀貨5枚だ。

 鑑定で銀貨5枚を使ったし、それが返ってきただけ。

 せっかくアイテムがドロップしたのに、何だか損した気分だった。

 システムの鑑定に頼らず、とりあえず装備してみて体感で能力を検証する、というのもありなのかもしれない。


 お金も貯まった事だし、装備をTier0からTier1へと全て更新した。

 足りない部位を購入して、Tier1装備を揃える。


 『ショートソード(Tier1)』

 魔法攻撃力+1


 『ヒーターシールド(Tier1)』

 スタミナ回復+1


 『レザーベスト(Tier1)』

 信仰+1


 『レザーブーツ(Tier1)』

 運+1


 武器は、ショートソードとヒーターシールドのTier1を買った。

 やはり使い慣れたものが一番だ。

 見た目も使い勝手も変わらない。

 単純に性能がアップした。

 並べて置いたら同一品で見分けがつかない。


 防具は、動きやすさと防御力を両立していそうな、革系装備にした。

 金属鎧は、防御力は高そうだけど動きにくそうだ。

 機動力が落ちるのは好きじゃない。


 特殊能力がゴミで買い直したくなったけど、厳選し始めたら沼だろうからやめた。

 恐らくTier0とTier1で、基本的な性能は変わっていない。

 特殊能力が付くようになったのが違いだ。

 ただその能力がカスなら、Tier1で固めても意味がないのでは。

 銀貨10枚出す価値があるかというと……。


 いや、考えるのは良そう。

 きっと体感できないだけで、基礎性能も向上してるから!

 無駄じゃない、と思いたい。


 装備の購入に銀貨40枚。

 鑑定費用に銀貨15枚。

 包帯を買い足して銀貨10枚。

 装備の修理費や生活費で銀貨10枚。


 残りは、銀貨約30枚ほどだ。

 日本円にして15万円ほど。

 パソコンを買うには心もとない資金。

 自分へのご褒美はまだお預けかな。


 稼いではいるけど出費も凄い。

 もしかしたらショップで装備を買うのは罠なのかもしれない。

 ドロップすればより性能のいいものがタダで手に入ると考えると、コスパが悪い気がする。

 まあ売却すれば銀貨5枚は返ってくるから、その辺を考慮すればトントンか?


 何にせよ、準備は整った。

 いよいよ明日はダンジョン攻略の再開だ。

 なにがあるのか、楽しみだ。



***



 翌日。

 起きたらレベルアップしていた。

 いい朝だ。


 今日はダンジョンの攻略を再開していく。

 これだけ準備したんだ。

 一気にドカッと進みたいところだ。


 朝の支度を終えて、ダンジョンへ。

 まずは日課を済ませよう。

 洞窟の手前のゴブリンたちを一掃する。

 もはや勝手知ったる洞窟の中。

 ゴブリンを倒して回るだけの簡単なお仕事です。


 小1時間ほどで掃討完了。

 残念ながらドロップアイテムはなし。

 先に進もう。

 いざ、未探索エリアへ。


 しばらくは手前のダンジョンと変わらない光景だった。

 単独で出てくるゴブリンを倒して進む。


 ゴブリン、ゴブリン、ゴブゴブゴブリン。

 どこに行ってもゴブリンしかいない。

 ゴブリンの洞窟かよここは。


「お……ついに出たか」


 やがて予想していた通り、集団行動するゴブリンと遭遇した。

 隊列を組んだ3体のゴブリン。

 前衛の剣持ちが2体に、後衛に弓が1体。


 敵もまたこちらに気づいたが、今すぐ逃げれば追いつかれることはないだろう。

 さあどうする?

 自問自答の答えはすぐに出た。

 戦おう。

 私は戦いに来たのだから。


 まずはポケットから鎮痛剤を取り出して、錠剤を1つ飲んでおく。

 負傷を見越して、念のため。

 多少ミスしたところで、痛みに怯まなければごり押しで倒せるはずだ。


『ゴブルァ!』

『ギィギ!』


 前衛の2体が突っ込んできて、後衛が弓で援護射撃。

 なかなかいい連携だ。

 だが、私を倒すには色んなものが足りていない。


 弓の軌道を見切って回避。

 突撃してくる前衛に向かって、こちらからも距離を詰める。

 そのままショートソードを振るう。


『ゴ、ゴブゥ!?』

『ギギィ!?』


 一合で相手の小剣を弾き飛ばし、続く一撃で首を飛ばした。

 横合いから斬りかかってくるゴブリンの攻撃は、軽くステップして回避する。

 そのまま流れるように、ショートソードを横薙ぎに振るって反撃。

 深々と胴を切り裂かれたゴブリンが崩れ落ちる。

 これで前衛の2体は全滅だ。


『ギッ!ギィ!!』


 残ったのは弓持ちのみ。

 慌てたように射撃してくるも、掲げた盾で受け止めて前進する。

 二の矢をつがえる暇も与えず、一気に距離を詰めた。

 そのまま振り下ろす一閃で首をはねる。

 ボールのように転がるゴブリンの頭部と、崩れ落ちる体。

 戦闘終了だ。


「ふう」


 剣についた血を払うような仕草をしながら、息をつく。

 やはり、群れたところでゴブリンは大したことはない。


 レベルと装備、そして戦闘経験。

 私が持っているアドバンテージは、既にゴブリンを圧倒している。

 最初は素手のゴブリンと死闘を繰り広げていたというのに、私も成長したものだ。


「探索を続けよう」


 銀貨を回収して、先に進む。


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