第10話 思いがけない再会

「何の話かと思ったら、そんな話、今更されても困るよ」

「とにかく瞳に聞いて欲しかったんだ。あの時、瞳と付き合うことになったら、涼子とは付き合ってなかったと思うし。瞳はさ、俺のこと、少しぐらいは好きだった?」

「まあ、一緒に生徒会頑張った仲間だし、気になってたけど、涼子とは親友だったからね。涼子から龍と付き合うことになったこと聞いた時、嬉しかったし。とにかく、龍も結婚して、新たな人生を歩み始めたんだから過去を振り返ってばかりいたらダメだよ」

「そうだけど、実は俺の奥さん、病気で余命宣告されてるんだ。可愛らしい人で俺にぞっこんで結婚したから大事にしてるけどね」

「それは大変だね。でも龍も覚悟の上で結婚したんでしょ。大事にしてあげないと。私は話を聞いてあげることしかできなくてごめんね。そろそろ出よっか」

「瞳は今、幸せ?」

「私、まあ、同棲中の彼とは喧嘩中だけどね」

「早く仲直りしろよ。あっ、ところで、念の為、名刺渡しとく。何かあったら、連絡しろよな」

「じゃあ、私も」

龍と瞳は名刺を交換すると立ち上がった。


 外に出ると物陰からこちらの様子を窺っている人影に瞳は気づいた。目を凝らしよく見るとその人影は翼だった。びっくりした瞳は翼の方に駆け寄った。

「どうして、こんなところにいるの!?」

「ごめん。実は後を付けてた。一緒にいる奴、誰?」

「同窓会の幹事の滝野龍さん。久しぶりに少し話しただけ」

「もしかして元彼とか?」

「まさか、高校卒業してから七年ぶりに会った級友よ」


その時、龍が徐に駆け寄ってきた。

「初めまして、滝野龍です」

「初めまして、上田翼です」

一瞬流れた重い空気を振り切るように瞳が言った。

「一応、同棲中の彼です」

「喧嘩中だけどな。瞳が家を出た後もすぐに追いかけたんだ。ビジネスホテルに泊まった後、安アパートに契約しただろ?びっくりしたよ」

「えっ、追いかけてきたの?それじゃ、ストーカーじゃん!」

「まさか本当に出ていくと思ってなかったから。あの夜、ドアを叩いたのも俺」

「えっ、大家さんは殺人事件があったって言ってたけど」

「あれは俺が頼んで口裏合わせしてもらったの。瞳が実家に戻ってからもお母さんからそれとなく様子を聞いてたんだ」

「それで、今もここにいるの?」

「まあね、とにかく、滝野さん、瞳はこれで家に連れて帰りますので。さっ、瞳、家に帰ろう」


瞳は躊躇しつつも龍に向かって手を振り、差し出された翼の手を握った。



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七年後の同窓会 中澤京華 @endlessletter

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