8

 お買い物の日。

 まだ空が明るない時間や。

 爺ちゃん婆ちゃんとカルロス。

 多分婆ちゃんのおかげで幌馬車になった。

 爺ちゃんとカルロスだけやったら全力疾走で行ったんちゃうか。

 めちゃくちゃホッとしたわ。


 ってカルロス、パンまたベラさんに任せちゃったのか。


「じゃぁやるわね」

 何をって思ったら、婆ちゃんがまず馬車に〈重量軽減〉を掛けて、馬に〈身体強化〉〈俊敏駿足〉やって。

 全力疾走させると前提?


 魔法を使うときは動作や詠唱、魔法陣など全部私が見て習得できるように配慮してくれてる。私が簡単に獲得出来るのをしってるから。

 

「さあ出発よー。ジョニーちゃん、バニーちゃんよろしくね」


 ぶ!婆ちゃんが馬をひと撫でして呼んだ名前!!ジョニーはともかくバニーはウケるやろ。ウサギちゃんやん。


 腹筋がヤバいのに爺ちゃんが私を抱えて馬車に乗り込んだ。婆ちゃんも続いて。


 カルロスが馭者なんや。


「本当はこの世界の景色をゆっくり堪能してもらいたいところだけど街までただの草原と岩場なのよね」

「見所はないな」


 それはもう知ってる。爺ちゃんのおんぶでガクガクしてても見えた景色は大草原やったやん。まぁ前世では見たことない壮大な大草原や。一回は感動したで。


「まぁ街に近づいたらちょっとは楽しめるわよ」


 案の定、馬車は爆走。揺れるか思ったらそうでもない。婆ちゃんの魔法かな?


 急にスピッードを落としたと思ったら、

「おーい、前方にブラックビッグボアがいるぞ〜」

って言って完全に停車させた。


「ご馳走だな!」

「ボーナスだね」


 爺ちゃん婆ちゃんが外に出て私を馭者台に乗せてからカルロスと共に前方で構える。


 ボアはこっちに突進してくるみたい。


 爺ちゃんはマジックバッグから大楯を出して構えてカルロスは投擲用のナイフを構えてる。あれ?カルロスって接近戦向いてないな?

 婆ちゃんは魔法陣を空に描いて狙いを定めてる。


「行くよ!ウィンドアロー!」


 婆ちゃんの魔法陣が形を変えていきなりレーザービームみたいなの発射した。


 ボアの眉間に刺さったけまだ気付いてないのか爺ちゃんに突進。

 爺ちゃんは大楯を正面に向けたままちょっと押されてる。

 と思ったらいきなり大楯を前にバァンって出して「バッシュ!!」って言ったらボアが吹っ飛んだ。

 そこをカルロスがさらに眉間を狙ってナイフを投げた。


 ボアがすごい音出して倒れたわ。


「よし、綺麗に倒せたわね」


 どうやら街で素材を売るんやて。毛皮と牙は状態がいいほど高いって。でも肉は売らんそうや。


 婆ちゃんがアイテムボックスに仕舞って再び出発や。


「最初にいきなり首を落とす方が早いんだけど血は他の魔物を呼ぶから街道沿いはなるべく血が汚さないようにするのよ」


 いきなり首狩っちゃうのか。スプラッタやな。


 街には多分十時頃到着した。


 顔見知りなんやろう、門番は笑顔で迎え入れてくれる。

 そういや、ほかに並んでる人おらんね?


「こっちの門は宵闇の白狼の村の者しか来ないから」


 こっち側、ほかに村ないんや。


 門近くにある馬屋さんに馬と馬車を預けてからお買い物スタートや。


「迷子になるといけないから私と手を繋いでいようね」


 おお!こんなん言われたことないわ。

 かなり小さい頃は放牧で、多少大きなったらスーパーすら連れてって貰えんやったな。


 面映い感じで婆ちゃんの手を掴む。

 

 神様の言う生き直しってのはこー言うんも含まれてたんかな。


 爺ちゃんは「俺の手も繋ぐか?」って。身長差で疲れそうやからお断りした。そんな凹まんとってや。


 ちょっと進んだら「まずはギルドね」って。



 冒険者ギルド!!ファンタジーの定番や!!

 入り口に剣と杖と盾の絵が描かれた看板。

 木造の建物にウェスタンな作りの入り口。


 なんかカッコええ!


 買取カウンターに向かったら、途中に。


「シルバさんだ」

「カシムさんとカルロスさんもいる」

「ってあの子供まさかシルバさんが!」


 どうやら婆ちゃん達、有名人や。

って!婆ちゃんが私を産んだら世界記録とかやで!?


 婆ちゃんがカウンターで売りたいもの出したらまた騒がしくなった。


 さっきのボアだけやなくて最近狩った獲物の素材も一気に放出らしい。


 カウンターの人は慣れてるからかテキパキと他のスタッフに指示出して素材を奥に運んでく。

 この間のサーペントの皮かなり良いお値段らしいで。

 

 なんか厳ついワイルドなヒゲのおっちゃんが出てきて婆ちゃん達に挨拶した。

 聞いてると婆ちゃん達のクランにいた若いもんやったみたいや。

 尻尾があったらブンブンしてそうな笑顔で話してるで。


「シルバさん、いつお子さん産んだんだ?」

 

 お前もか。


「バカをお言いででないよ。私が産んだ子は王都に行ったっきり一回も訪ねてこない薄情息子一人よ」


 息子さんいたんや。


「シルバさん、あの村を単身で訊ねるのは俺でもハードルが高すぎるぜ」


 ヒゲおっちゃんは肩をすくめて笑う。


「そうね、バード、あんた弱いもんね」

「ヒデぇなぁ、これでもAっすよ。まぁシルバさんのSSには到底届かないけどなぁ」


 婆ちゃん!!!???


 もしかして爺ちゃんも!?


「そんなキラキラして見られると言い辛いが俺はSだぞ」

「俺はAだ」

 爺ちゃんもめっちゃすごいし、カルロスもすごいやん!!


「村にはBもいるし、着いてきた嫁や旦那は一般人もいるから別にそこまで危険じゃないよ」


 ベラさんとかかな。あの旦那についてきて魔物で肉祭りとかしても平気だから一般人っちゃうと思うで。


「あんたらが一緒だからだ。自分たちだけで行くのはキツいって話だって」


 行商が来るって言ってたけどその人は平気なんかな?


 査定が終わったってカウンターの人が伝えにきたのでお金とボア肉を受け取って出ることに。


「もう帰っちゃうんすか」 


 おっさん、イケオジっぽくてギルド長なのになんかウザいな。


「今日は買い物と買い出しだよ、じゃあね」


 耳がシュンっと垂れてそうなおっちゃんにバイバイして冒険者ギルドを出た。


「あいつは相変わらずシルバが好きすぎるな」

「舎弟だったしな」


 婆ちゃん、姉御肌っぽいもんな。


 街の中歩いて商店街に出たら良い匂いがし始めた。


 グゥ〜。








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