10

 そっからまたなぜか修行のような日々や。

 ヨサクに合気道習ったり、レギウスと飛ぶ鳥を百羽落とすまで帰れません!とか。

 婆ちゃんと魔法攻撃各種、防御魔法各種って。

 剣もグウェインと木刀で撃ち合って。

 カルロスと投擲はナイフ、石、手裏剣?クナイ?各種あったで。


「やりたない」ってごねて。

「普通に商店で働くとかでええんやって」~って泣いてる。


 したら、「ルーノはすぐ覚えちゃうから他の子に比べたらかなり軽い修行よ~」って。

 うそやろ。


 私が望んでたのは格闘ゲームのイージーモードやったんか?

 それとも剣と魔法のゲームのイージーモードやって言うたか!?


 ちゃうで!

 人生のイージーモードや。


 私、今とっても人生ハードに感じてるん。


 やっぱ詐欺やー!!!!


 勇者と共に活躍したらしい元高ランク冒険者だった村の爺婆に英才教育ってなんやろか?


 ブチブチ言いながらの毎日。

 

 私の癒しはグレンちゃん。


 酒好きなんは好かんけど鍛治の腕は天下一品や。

 朗らかに歌ったりする悪ぅない酒やしな。


 熱々になった鉱物グレンちゃんが真剣な眼差して打つんや。髪とヒゲで顔ほぼ見えてへんけどな!

 真っ赤に熱せられた鉱物がどんどん形変えて最後ピカピカのキラキラになるんはおもろい。

 グレンちゃんの剣は魂が入ってる気がするわ。


 グウェイン達との打ち合いに剣がいるようになったら、グレンちゃんが私のために打ってくれることになった。


 私の体格を考慮して短めのにしようってなった時、思いついちゃった。

 日本刀がいいなって。

 刀がイケメンに顕現するゲームは少しだけやったんや。

 大太刀や槍は無理でも脇差と短刀なら私でも扱えるやろ。

 

 グレンちゃんは刀を知っていたのですぐ理解してくれて。

 昔、刀を欲した人がめちゃくちゃ注文つけてきてえらいしんどい思いしたらしいわ。



 色々相談した結果、脇差と短刀を両方作ってくれることになった。

 大きゅうなったら打刀も作ってくれるって。


 でも日本刀に使うような玉鋼とかは存在しないみたいで、オリハルコンとミスリル使うんやって。

 ん!?それってめっちゃすごいヤツやんな!?


 婆ちゃんにヤバい~って伝えたら、ごろごろ落ちてたとこからたくさん回収してあるから良いのよって笑ってた。


 私は楽しみすぎて毎日訓練を早めに終わらせては見に行ってたんや。


 一ヶ月後、仕上がった私だけの刀はそりゃもう美しかった。


 前世での日本刀は銀の煌めきたった。

 グレンちゃんが打ってくれた刀は白く発光したかのような輝や。

 ほんまに美人さんな刀やで。

 拵はふた振りとも紅や。金と銀、鉱石で装飾が入って煌びやか。

 刀身の波紋まで美しなぁ。

 

 名をつけろ言われたんでめっちゃ悩んで。


 打刀を迦楼羅で、短刀は紅蓮にした。


 由来は、迦楼羅の方は火を吐く鳥、龍を喰う鳥ってことでカッコええから。

 紅蓮は普通に打った人の名前を付けるから当て字で燃え盛る花って意味も加わってええ感じやろ。


 グレンちゃんにそう説明したら喜んでくれた。

 漢字はこの世界ではただの記号に見えるらしいけど、自分の名前の文字を知りたいって言うから紙に書いてあげた。


「ほっほ~ぅ」

 

 しきりに見つめてから私の刀に銘を彫ってくれた。グレンちゃんのマークはすでに入ってたんだけどね。

 迦楼羅の方も彫ってくれたけど〈羅〉が難しすぎて苦戦してたわ。


 私は刀が嬉しくて厨二病の如くグウェインや爺ちゃんに挑んでウザ絡みした。

 刀の美しさにデュークやカルロスもってグレンちゃんが忙しくなってもうた。

 使い慣れん形の刀なんか持ってどないするんかな?


 その後もなんだかんだハードな二年を過ごしたわ。

 一人でビッグボアもサーペントも倒せるようになったで!

 解体も屁のかっぱじゃ!


 山へはおぶられずに爺ちゃん達と疾走出来るし、レギウスとの狩も山奥まで入れるようになった。


 馬に乗って弓も弾けるようになったで。カッコええやん。


 んで、合気道は我流混ぜて好き勝手するようになって、ヨサクを一本背負い出来るようになった。柔道!

 相手の意表をつく動きをしてじゃないと勝てないから柔道でも空手でもレスリングでもなんでもいいから思い付くまま技をかけた。

 ルールとか無いし、ヨサクの合気道って多分、前世持ちが見よう見まねで知ってた程度のを広めたとしか思えないチグハグやったし。


 あとはなぜかパンもめっちゃ上手く作れるように特訓受けたし、婆ちゃんの薬術も叩き込まれた。


 スパルタ過ぎへん?二年で詰め込むん鬼すぎへん?


 十歳過ぎても相変わらず、ハードな日々や。


 

 婆ちゃんは表に出てる薬草やハーブ類は好きに使っていいって言ってくれてたからハーブソルトやスープに入れたりはしてたんだけど、私はついにカレーを作ることを思い立った。

 ちなみに海の街ではカレーがあるそうや。ここからはかなり遠いらしい。


 前世でレトルトカレーは一袋で2回分に分けてお得やったから好きやってん。

 本かなんかで自分でスパイスを好みに調整してってやってたから興味があったんや。


 ちょっと薬くさいカレーが爆誕した。


 足りないスパイスはなんだろう。


 それでも爺ちゃんは喜んでくれて、皿を抱えたまま飛び出した。カルロスに自慢するんだろう。


 私は明日のパン用に残していたパン生地を使ってお芋を足してカレーパンを揚げた。


「あら、これは美味しいわね」


 婆ちゃんは体にええからってドリンクやサラダにハーブを大量に入れたりするけど、味が強烈なんよ。慣れたけど。

 薬膳ぽい味のカレーが美味しいかは謎なんやけど婆ちゃんの味覚で美味いんならまぁええか。


 カレーに使ったハーブの薬効が凄まじいので明日も朝は元気溌剌のお肌艶々プルプル間違いなしやで。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る