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 私をダシ飲んだくれて年寄りたちはとにかく元気だった。

 翌朝大声で叩き起こされて、カシムの爺ちゃんと一緒に村の端っこの川へ連れて行かれた。


 これは子供が「◯◯ちゃーん!あーそーぼ!」って誘いにくるやつや。

 前世での体験はないけどな!


 川に行って何するんか思ったら釣りと銛つきと水浴びって言うな。

 爺の半裸を見せ付けられるって罰ゲームちゃうの。


 私は釣竿垂らして太公望やで。そもそも爺ちゃんたちが飛び込んだりしてて魚なんて逃げとるやろ。


 でも前世でアウトドアなんぞしたことないからちょっと楽しいで。


「ルーノ!あそこに針投げ込め」


 カルロスってパン屋の爺さんが大声で指さす。


 ブリンちゃんが追い込み漁みたいに岩場へ向かってバチャバチャと水を叩いてるあたりに投げろって。

 失敗したらブリンちゃんに当たるやん。


「大丈夫だから!」


 知らんで!


 ビュンと竿を振ったらオモリのついた針がビュオンと妙な動きをしたけど教えられた場所に落ちた。


 これってこの先どうなるん!?って思ったらグンッと竿が引っ張られた。


「うあ!」


 足がガクンてなって川に引っ張られそうになったらカルロス爺さんが私を後ろから抱き込み竿を持つ手を支えてくれた。


「体幹が弱いな!鍛えないと」


 えええ!8歳児に体幹とか言うん?


 カルロスの太い腕が私の腕を上手く補助して?いやほとんどカルロス爺さんの力や。竿を一気に振って糸を巻き込んでやっとこさ魚が釣れた。


 川魚は前世では見たことない凶悪な顔したヤツや。これうまいんやろか。


「なかなか大きいな!ルーノ、やったな」


 カルロス爺さんがニカって笑った。


「初めてで大物釣ったのはすごいぞ」


 ほとんどカルロス爺さんの力やったけどなんか嬉しいな。


 ブリンちゃんが手掴みで何匹か釣って?カルロスは銛でザクザクや。


 カシムの爺ちゃんはもう少し奥に離れた深いとこでヨサク爺さんと潜ってる。


「ルーノ、水の中入らないか?」

「え?服で!?」


 水着なんて無かったし脱いだらキャミとパンツやで!


「すぐ乾くからそのまま来い」


 カシムの爺ちゃんがそう言ったらカルロス爺さんが私をポーイって投げよったで!!


「あーーー!!!」


 カシムの爺ちゃんががっしり受け取ってくれたけどあんまりや。


「ははは!ルーノ!綺麗な魚がおるぞ」


 ってそのまま私を抱いて潜った!


「ぐぼぼっ」


 あんな!アウトドア経験なし、そんで川遊びってあるわけなしやろ。いきなり顔を埋められたら死んでまうわ!!

 学校のプールは体の傷がバレるから言うて親が休ませよったからの!泳げるわけないんや!!


 手足バタバタさせとったら、爺ちゃんが肩車に変えてそのままトプンと潜った。


 どんなやり方でもまず息の仕方わからんのや!!


「溺れるっちゅうねん!!」

 思わずテンコツしばいたったわ。


「可愛い平手だな。ほれ一瞬息止めて中で目を開けてみろ」


 それ最初に説明してくれたらええやろが!

 って水ん中で目開けるんはハードル高いで!


「んーっ」

 抵抗は無視でまたも潜られた。


 恐る恐る目を開けるとキラキラして光と白いのと透明な石がゴロゴロしてて透明度の高い水の中から上を見るとすごく綺麗だった。


「がぼぼぼぼ・・・」


 息継ぎできず溺れそうになったわ。


 岸に上がってゼーハーしてたらカシムの爺ちゃんが「ドライ」って言って私の服と髪を乾かしてくれた。


 魔法便利だな。


「おぅい、昼飯にするぞ」


 ブリンちゃんが河原に焚き火を用意してさっきの魚を焼いてる。


「オッちゃんら仕事はええの?」

 朝からずっと気になってたことを聞く。

「ははは!俺らはお互い様でもその時々やりたいことをやるのさ」


 ん。ダメな方の親父や。


 火を囲んで魚が焼けるのを待ってたらベネっていうカルロスの奥さんがやってきて。

「女の子ならまずは私たちと遊ぶ方がよかったわよ。ジジぃども気ぃ効かんね」

 もっともだ!でも年齢違いすぎてどう接すればいいんだろうね?


「ルーノちゃん、サンドイッチ持ってきたから食べてね」


「わーい、ありががとう」


 爺さんどもの危ない遊びの中で救世主が来たわ。


「そういえば来週行商が来るって。何かルーノちゃんに良いものがあるといいわねぇ」


 もらったサンドイッチはおいしい。気持ちがこもってるのかな。だと嬉しいな。


「おいひい」

 くちいっぱいに詰め込んで咀嚼。

 ポテトサンドとチーズとハムサンドやね。


「あんたらあんまむちゃしたらダメよ!」


 ほんまにな。


 魚もめちゃおいしい。これは外遊び効果かもしれん。


 腹拵えが済んだらみんなで村に戻る。


 爺ども半裸のままやけど。身内しかおらんならええんかな。


 爺ちゃんは魚をみんなに分けるからって別れてうちに戻った。


 改めて家の外観と内部が容量合ってない感。


「家をしげしげみてどうしたんだい」


 シルバの婆ちゃんが中から出てきた。

「家のサイズと中の広さが合ってない気がする」

「ああ、空間魔法で広くしてあるんだよ。他の家も大体やってるね」

 ほえー。

「外のものが来た時にでかい家ばっかだと狙われるからね」


 誰に!!?


「悪かったね。男どもの相手させて」

「川にぶん投げられた」

「アイツら!子供のしかも女の子の扱いが下手すぎる」


 ちゃんと調教するわねっていい笑顔になって。


「朝っぱらから疲れたろ」


 そう言ってハーブたっぷり煮出したお茶をくれた。


「にがっ」


「滋養にいいからがんばりな。体も温まるよ」


 気持ちは嬉しいけど限度があんねん。









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