6

 カルロスがパンを焼いてからくるって言ってたから油断した。

 なぜ朝の6時からくるんや!?

 しかも婆ちゃんお弁当用意してくれてんねん。

 竹筒の水筒におやつのバニャニャまであるねんで。

 前世で遠足でも弁当なかったんにな。


「カルロス、パン屋は?」

「釜に突っ込んできたからあとはベラが見てくれる。店番も看板娘のベラがいた方が喜ばれるしな!がはは!」

 これはダメ親父なんでは?

 

 ポルポル鳥は人気だから私たち以外にも山に向かう爺さんちらほら。


「急ぐから今日はおんぶな」

 カシムの爺ちゃんにガシッと持ち上げられ背に乗せられる。


 おおおぅ、ガクガク再び!


「今日はどれくらいか」

「レギウスも出たから結構じゃないか」 


 鳥の量?レギウス?


 物凄い速さで草原を駆けていく。


 ちょっと離れたところに川があるっぽい。


 景色を楽しむまでも無く山について今度はおんぶのまま駆け上がられて流石にゲーしたろか思たわ。


「ついたぞ!」

「三番乗りか!出遅れたぞ」


 マジか。爺共朝元気すぎじゃ!


「ルーノ、もうじき一斉に鳥が飛ぶからカルロスの動きを良く見ろ」


 うん。良い加減わかってきたわ。

 あれや。野鳥観察やのうて狩りやってな!!

 自給自足舐めてたわ。そりゃ優雅に野鳥眺めとるわけないわな!


 カシムの爺ちゃんは私を肩車して前がよう見えるようにしてくれた。


 近くにいる爺さんもパチンコみたいの持ってるしその奥の人は弓構えてる。

 ついでに言うと猟犬?もいてるわ。


 バササ!!

 

 大きな羽ばたきの音がして大きめの鳥がたくさん空に舞い出た。

 ド派手な孔雀みたいに綺麗な色合いの鳥が一気に羽ばたく姿は壮観や。

 

 ブン!

 ヒュン!!

 ブン!

 パチン!

 ゴオォ!!


 いろんな音が聞こえてん。



 あっちゅう間に鳥たちが下に向かって落ちていく。

 あんなきれいなに一瞬で儚なった。


 カルロスの動きなんて見てられんわ。こんなん初めてやから鳥見てしまったやん。


 鳥が地面に落ちる前に風が鳥たちを包んでこっちに運ばれてくる。魔法か?

 範囲を外れた鳥を猟犬が器用に背中に乗せて運んできた。賢ない?


 風魔法を使ってるぽい人を見たら。



 !!??!!


 若いのがいる!!!


「おや、その子が預かり子か」


 若くて綺麗で耳が長い!!


 もしかしてエルフ!?


「ふふ、顔が面白いことになってるな」

「レギウス、この子はルーノだ」

「若い人おった!!!」


 挨拶せなと思ったけど無理や。インパクトがデカ過ぎて思わず口に出たわ。


「ははは」

「ガハハ!こいつは俺たちよりジジィだぞ」


 ん!?どう見ても二十代か三十代やで?


「ルーノ、私はレギウス、エルフだから長命なんだ。こう見えても321年生きてるぞ」


 321歳!

 想像出来へん!


「引退するほど歳やない!?」

 まだピチピチのピンピンや!!


「そうだね。でも長い生の少しの間、ここにいるのも悪くないさ」


 ほえー。寿命いくつか知らんけど悟りでも開いてそうや。


「おーい、鳥、血抜きするぞ」

「ああ、今行く」


 猟犬連れた爺さんが呼んだ。

「俺たちもいくぞ」


 え!?


「狩りも解体も覚えないと暮らしていけないぞ」

 えええ!

 肉は肉屋さんで買いたいわ。


「街で買うと高いし、自分で獲って捌いたら鮮度全然違うぞ」


 ええ、肉は熟成のが良いってなんかで見たよ!


 肩車されてたので逃げ場なし。

 

 爺さんたちのとこに行くと手際よく羽毟って袋に詰めてる。


「羽は売れる」

「布団に入れるのも良いぞ」


 羽毛布団はあるんや。


 血抜きよりはって羽むしりに参加した。


「俺たちはまだ残る」

 全部血抜きが終わったらレギウスのマジックバッグに収納して、猟犬連れてる爺さんたちと山の奥に入って行った。


「他の獲物探したり魔物がいないかチェックするんだよ」

 ふーん。血を廻すぎてブルーだわ。

 流石にサバイバルな食生活はしてなかったからな。食べたん野草までや。


「さて弁当食べてから投擲の練習しよう」

 少し開けた場所に移動してからお弁当を広げて見たら、めっちゃ日本の弁当や。


 おにぎりにだし巻きにミートボール、ナポリタン。きゅうりとうずらの卵とちくわみたいなのの串。

 完全に日本人伝授の品やで。


「シルバの弁当はうまい」

「うむ!」


 おにぎりの中に梅干しさんがあるん。すごいわ。

 シャケはないけど昨日の魚使うたおにぎりも美味いで。


 なんやな。前世では親の手作り弁当なんて夢のまた夢やったのに、何故かこの世界で普通に子供の頃に羨ましかった友達のお弁当みたいなのを食べてんねん。ふしぎやな。


「うまいか!!」

 カシムの爺ちゃんもカルロスも私の頭を掻き回す。

 夢のお告げとやらでどこまで私のこと知らされてんやろか。


 お茶は麦茶やった。めっちゃうま。

 謎のハーブドリンクやなくて良かった。


 お弁当が済んだら、カルロスが手頃だと言う木に的代わりの葉っぱを刺して。


「ルーノ、これをこう持って、こうますっぐな」

 カルロスが手取り足取り指導してくれる。


「よく見てろよ。こう投げるんだ」


 ドスッ!!


 的にしてた葉っぱごとナイフがめり込んだ。


 刺さり具合エグない?


「ちと力が入りすぎたな」

 カルロスが笑ってナイフをとった。いや腕力もすげぇ!!


 新たに葉っぱをつけてくれたので今度は私が投げる。


 ようはダーツやな?本物やったことはないけど子供のころ兄貴が百均おもちゃのダーツ持ってたからちょっとだけやったことあるで。


 一回投げたら木を通り抜けてしもた。

 カルロスが姿勢と腕の動かし方を指示してくれて角度を調整してもう一回。

 今度は木にはあったたけど下の方行った。


「先に筋力つけないとダメだな」


 ええ〜筋トレ!めんどくさい〜。


 とりあえず十投して的に当たるようになったので家に戻る。


「筋は良い。体力筋力をつけよう」


 うおー、地道な努力がいるヤツやん。


 またおんぶで首ガクガク言わせながら帰宅したら、婆ちゃんが出迎えてくれた。


「お疲れさま、筋肉疲労に良いドリンクだよ」

 って冷えたコップを二個差し出された。

 爺ちゃんも顔を引き攣らせてるから好きじゃないんやな。


 二人で顔を見合ってからドリンクを一気した。


 優しさが痛いよ。



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