プロローグ に

 死んだら無になる。


 そう思ってたんは間違いやった。


 なぜか眩しい空間で煌びやかな美人さんが首輪付けられたつり目ヤンキー少年?を踏んでて、周りにお爺さんや豊満お姉さん、渋いおっちゃんと言う多種多様な人が私に謝ってる。


「ほんとうにごめんなさい」

「我らの監督責任だ」


 なんて口々にされた内容をまとめると。


 ここに揃っているのは全世界の神様で、地球以外にも星や異次元の全てを管理しているらしい。

 そして私の人生が最低だったのは踏まれてるヤンキーが暇つぶしに〈実験〉をしたからだそう。


 幸運値をマイナスにして、愛され度も低ランク、能力値も元の予定の半分。

 そしたらどんな人生送るんかな?っていろんな国で試してたらしい。

 神やなくて悪魔ちゃう?


 何がしたかったかわからんほどバラバラや。そう言うんやったら全部マイナスとかするやろって思ったら全部マイナスにしたら生き残れへんのやって。

 幸運値マイナスの時点ですでに簡単に死にそうやん。しぶとく生きたけど。何回死にかけたことか。


 このヤンキーのやらかし全部調べ終えたって時に私が死んでしまったらしい。

 死んでなかったら軌道修正で慰謝料の意味で幸運値を150にして他のも元の設定にするはずだったらしい。

 38歳からいきなり幸運になっても微妙じゃね?


 ともかく死んでしまったので謝罪と弁済をと言われている。


「じゃ二度と生まれ変わらない永久の安らぎをお願い」


 そう言ったらおじいちゃんや豊満お姉さんが泣いた。


「生きるのは素晴らしいことじゃと知って人生を全うして欲しいのじゃ~」


 普通に生きてても素晴らしいって言い切れる人ばっかじゃねぇよ。


「随分とやさぐれて・・・」


 心読まれた!!


「いや、そなた今魂だから筒抜けだ」


 ふぉおおおお!!!


「煌びやかな美人の美の女神アルテナです♡」

「豊満なお姉さんのゾビアよ。豊穣を司ってます♡」

「知識を司るお爺ちゃまのバートラムじゃ」


 他にも名乗られた。白銀の髪が印象的な誓約の女神ギセラさま、マッチョなイケメン、戦争の神ルカニアさま、とんがり帽子ってお約束な魔術の神ヴィンスさまだって。


 踏まれているのは風の神ラキ。

 風は気まぐれってやつやな。タヒね!!

 

「わしらのためにももう一回生きてほしいんじゃ」


「いやや」


 別になんの謝罪もいらん。そんなもん今更塵紙より意味ないわ。


「出来るだけ望みを叶えてやるから」


 なんでこんなちっぽけな人間にそんな下手にするんやわからんけど、今一番望むんは決まっとる。


「ならそのラキっちゅうあかんたれに私と同じ体験させたってみ」

「「同じ体験?」」


 神様たちが首を傾げる。神様だけあってどんな角度になっても美形レベルが高いな。


「クソッタレな親元に生まれてめっちゃ不細工でめっちゃ奇抜な名前つけられて、クソッタレな兄貴に好き放題暴力受けて、菓子どころか飯も満足に食えへん、しょっちゅう事故って、体痛ない日なんてほぼない、好きなこと以前に何もしたいことも見つからへん、て言うかそんな余裕も金も気力もあらへん、友達もろくに持てへん、夢も希望もない人生を送ってみろや。ほんで最後は見知らぬ人間に巻き添えにされて鉄筋に潰されろや」


「「「「・・・・・・」」」」


 調べて知ってるだろうけど実際言葉で聞くと辛いんか?泣きそうな顔になってるわ。


「おい!クソ女!それは自分次第でなったんだ!!俺は土台を用意しただけだ!!俺のせいじゃない!!」


 ラキは踏まれたまま暴れようと蠢いてるけど、乗っかってる足はびくともしない。

 すっご!!!美の女神の脚力すっご!!


「じゃかぁしいわ!!そんならその土台とやらで体験してみい、そんで幸せに生きれたら納得したるわ!!」


 女神さまのピンヒールが肩甲骨にブッ刺さってるけど元気に騒いでる。痛覚ないんか?もしかしたらドMなん?


「・・・その要求はもっともなことだ。実行すると約束しよう」

「約束するからもう一度今度は楽しい人生を送らないか?」


 拝まれる方の神様たちに拝み倒され、諦めて受け入れることにした。


「次はそこそこ幸せで苦労なく平凡で事故とかで怪我せんでいい・・・とにかく必死にならんでも楽に生きていける普通の庶民がええわ。人生イージーモードってやつやね。めっちゃイージーでお願いするわ」


 住むところ探すんや仕事探しも懲り懲りや。

 美味しいもの食べれて・・・。


「可愛いのがいい!!」


 そうやった。ブスやブスや言われて、しかも事故ばっか遭うから人と付き合いもなかなかできへんかった。


 可愛いは正義や。愛嬌あって性格明るなって人付き合い苦労せんでいいやろ。


「十人のうち七人くらいが可愛いって言う顔になれへんかな?」


 完全な美は神様になってまうからな。ちょっと格下げとかな。


「良いわよ。女の子は可愛いって言われないとね」


 美の女神がマーベラスに微笑んでくれた。


「そうよね。親しみのある優しい感じにしましょうね」


 豊穣の女神が柔らかく私を抱きしめた。


「苦労なくなら知識を与えよう」

「怪我をしたくないなら強さを与えよう」

「楽に生きるなら魔法を与えよう」

「前回のマイナスを振り替えて幸運値MAXにしよう」


 え!?魔法が使える世界に行くの!?

 魔法はちょっと嬉しいな。


 いや、ちょい待ち!過ぎた幸福はなんか怖いから普通でええねん!


「ああ、言ってなかったな。次は我らの目が届きやすいよう、干渉しやすい世界に連れて行く」


 連れて!?


「生まれ変わるわけだが我らの干渉で魂が向こうの種族の赤子に合わぬ。体を用意して転移させることになる」


 それは生まれ変わることになるん?


「そなたの魂が癒され納得して次の生を全うしてもらわねばならぬから記憶は消さぬ」


 ん!?悲惨な今世の記憶なんて別に要らん。


「でも、記憶持ってた方が楽に暮らせるんじゃないかしら?」


 そうかな?


「応用して自分のいいように暮らせると思うんじゃ」


 そんなもんかな?


「苦労しないようにいっぱいステイタスを盛ってやるからな」

「ならば地球の暮らしとに差に不便を感じぬように・・・」

「無限収納は必要ね」

「護身術もいるだろう」


 すごく楽しそうに盛り上がってるから口挟めへん。


 ラキはなんかされたんか憤怒の顔のまま固まってる。


「よし!決まったわ。えー、りんちゃんって名乗ってたのよね。今度使う名前はどうする?」


 生まれ変わるなら〈りん〉はやめておこうかな。過去は妹と共に眠らせてしまいたい。


「んー、どんな顔か見てからじゃないと?」


 名前負けとか嫌やん。


「あら、そうなのね。じゃぁ後回しね」

「では新たな身体を構築しよう」


 私に向かって神様たちが手を翳して。


 私の魂が重みと熱を持った。


「あら可愛い♡」

「おお、なかなか良い感じじゃの」


 褒めてくれるけど私は自分の首から下しか確認出来へん。


 んーと、子供っぽい?


「そうよぉ。あなたの楽に生きるって言う希望に沿うと自分で活動できる年齢の子供からが良いかなってことで」


 私は8歳くらいになったらしい。

 ファンタジーに出て来そうな服と靴を身につけてる。


「初期装備っていうのか。色々必要そうなものを入れてある」

ってマジックバッグらしき鞄を渡された。


「カバンに手を入れれば入ってるものがカテゴリ別に頭に浮かぶ。アイテムボックスも使えるようにしたが悪人にバレると利用されるからアイテムボックス使う時も鞄から出し入れするポーズは忘れるなよ」


 そう言われて手を入れてみたら。

 着替えがいっぱい。武器や食べ物も入ってて。

 電子辞書まで入っている。


「出来ないから不便と思わないように地球の辞書とこれから行く世界の情報を入れてある」


 地球の辞書が役に立つ場面あるかわからへんけど心遣いはわかった。


 ほんで鞄の中に手鏡があったから出して自分を見てみた。


「!!!!???」


 はぁ!???


 十人中七人言うたのにめちゃめちゃ可愛いんですけど!?


「あらぁ?そうかしら?」

「希望通りよね?」

「まぁまぁだ」


 神様の基準と私の基準違うかった!!!


「まぁ可愛い分には良いんじゃないかしら?」

「そうよねぇ」

 あんたらファビュラスな姉妹か!!


「さてこれで条件は整った。ラキよ、そろそろ罰を受けよ」

 

 誓約の女神ギセラさまがそういうと戦争の神ルカニアさまがラキを起こして、告げた。


「そなたの権能を奪い、下界へ落とす。そなたが無意味に苦痛と苦悩を与えた多くの魂の苦しみを知れ」


 身体が拘束されているのか「うーうー」唸って顔を真っ赤にさせているラキは見る間に小さな光となって地面?に空いた穴から落とされた。


「そなたが父母にされたように兄にされたように。全ての痛みを感じるだろう。そしてまた生まれ変われば他のものに与えた苦痛を味わうだろう」

 ギセラさまが手元を光らせると書類みたいのが出て来て光って消えた。

「我、誓約を司るもの、そなたの望みを実行し完了するまで見守る。そなたが次の生を全うした暁きには報告することになろう」


 私以外の分も味わうなら私が次ここに来れてもまだ終了してないんじゃ?


「ふふ、ここは時間軸があって無きようなもの。必ず報告出来ようぞ」


 自分次第でどうとでもなるそうだし、ぜひ幸せになって成功した姿を見せてほしいものだ。おきばりなはれやー。


「さて名前は決めれたかい」

 お爺ちゃんなバートラムさまが頭を撫でながら聞いて来た。


 元の名前はナシだけどいざ好きに決めろとなると難しいねぇ。


 でも今の私はめちゃくちゃ可愛い。

 真白でピカピカツルツルの肌にピンクブロンドの髪。タンザナイトのような薄い紫の瞳。

 アニメヒロインかなんかやん。

 乙女ゲームヒロインちゃうん?


 どんな名前でも似合うやろ。


「ん~・・・ルーノ!なんか可愛いやろ」

「意味はないのか?」

「ないと思う」


 なんも意味ないのがいい。何も枷のない生き方ができるように。


「そうか。なればそろそろ見送ろう」


「あなたに祝福を。次は幸せに生きられるように」

「ルーノが愛に包まれますように」


 女神さまが頬にキスをしてくれて。お爺ちゃんが額に手を翳し、魔法帽子さまが手に持ってる杖で何か光る粉?を私に振りかけて。



「ルーノを保護して守ってくれる者の元に送る」

「良き人生を」


 そんなわけで死後どれくらい経ったんかわからへんけど私は生まれ変わることになった。


 どんな人に保護されるんやろか。


 次に目を開けた時、私はだだっ広い草原のど真ん中にいて。


「??」


 保護者は目に見えへんお人やろか。


「ほう!本当に子供がいる!!」


 大きな声がした見渡す限り人影なんて無かったのに。


 今私を見下ろしているのはマッチョで大きいおっちゃん?

 爺ちゃん?


「めんこい子だな。よし!一緒に帰るぞ!」


 いきなりガシッと持ち上げられ、あっという間におんぶの状態になって爺ちゃんはいきなりダッシュと言うか飛んだ。

 ピョーンと軽やかに跳ねて歩く?


「わしはカシム!お前の名を教えてくれ」

 ハイスピードで移動中に言われても困るわ。


「ルーノ!!」


 大声で答えたけど聞こえたかな。


 なんかさ。小説とか異世界行くやつで幼女が最初に会うのってSランクのイケメンとか貴族の家族ちゃうん?

 あ、庶民て言うといたからか?


 私今爺ちゃんに背負われて首ガクガク言わせてん!!


 いきなり幸運じゃなくない!?


 なんなん!!





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