第14話 浮野の新兵器
織田信勝が起こそうとしていた再度の謀反は、失敗に終わった。
その謀反を画策し、駿河国の今川義元と組もうとしていた尾張守護・
時代は正親町天皇が即位し、『永禄』と改元されていた──。
◆◇◆◇◆
永禄元年(1558年)、比叡山・延暦寺。
津々木蔵人──いや、もとの自分に戻ったクラウドは任務失敗により、ここ比叡山へ戻っていた。
僧侶A「ご苦労だったな。計画は失敗したが……」
クラウド「いやあ、この時代の言葉遣いで喋るのは疲れましたよ。それより、みんなは?」
僧侶A「記録解析が進んでないので一旦、引き上げた。当分の間は待機だな」
クラウド「やっと、帰って休めるのかぁ~。でも、みんないなくなって大丈夫なんですか?」
僧侶A「心配するな。例の『データイ』がまだ目覚めないから、俺がここに居残ることになった。それに──あとのことは美濃の一色義龍に任せてある」
クラウド「あのう……『一色義龍』って誰ですか?」
僧侶A「ああ。もとは斎藤義龍──何でも、父殺しの汚名を避けるため『一色』という名に変えたそうだ。あいつも相変わらず小心者だよ」
クラウド「はぁ……」
僧侶A「それより──
クラウド「手強いですよ……。一瞬でしたが、殺気に圧倒されそうになりました」
僧侶A「そうか、手強いか──義龍がうまくやってくれればいいが……」
謎の僧侶たちは、比叡山を一時撤退した。彼らは美濃の一色義龍に何を任せたのだろうか、そして『データイ』とは何なのだろうか──。
◆◇◆◇◆
同年、尾張国・清洲城。
津々木蔵人の一件で、この頃からノブたちは謎の僧侶から狙われている危険を感じ始め、今更ながら素性がバレないように、この時代の名で用心深く行動するようになっていた。
『ドドドドドーン』
この日、朝から爆音と振動でノブナガは目を覚ました。そして城から音のした方向を見下ろすと人だかりができているのが見え、急いでその場に行くと前方で
「何なんだ! この騒ぎは──」
「あっ! ノブナガ様、見てください。スゴいんですよ」
ノブナガは人混みを掻き分けながら大声で叫ぶと、先頭にいた
「ちょっとバズーカ砲もどきの、水鉄砲を作ってみたんだ!」
「これに僕が作った爆弾と合わせれば、武器として使えそうなんで、いま実験してたんだよ」
「なるほどなぁ──で、どうなんだ?」
「……うーん。実戦でないとわからないけど──飛距離は大体、200から400m程かな。威力はそこそこありそうだけどね」
「そうか──なら、急いで10台程作れるか?」
「そうだなぁ……丁度いい竹があればね」
この頃、ノブナガは尾張国内に目を向けると岩倉織田家を倒せば、尾張のほぼすべてが手に入るところまできていた。そこで、どうやって攻略するか模索していたところ、この『加圧式水鉄砲』を見て攻略法を閃き、
こうして5日後には10台が完成し、
◆◇◆◇◆
──ノブナガは2千の軍勢を率いて浮野の地に陣を敷いていた。信勝亡き後、末森城を守る柴田勝家の軍勢も遅れて参戦することになっている。
そもそも清州城と敵の居城である岩倉城とは至近距離に位置していたが、わざわざ迂回して浮野という土地を戦場に選んだのは、
この武器は安定した足場で固定する必要があり、敵との距離を測定しやすく視界が開けた浮野はその条件に合う場所だった。また、幸いにも岩倉織田家では家督争いが勃発しており、その隙をついてノブナガは迅速に布陣を完成させ、優位に先手を取ることができた。
そして出鼻を挫かれ、出陣してきた岩倉織田家・
「放てーっ!」
ノブナガの合図で加圧式水鉄砲10門が先陣を切り、一斉に放たれた爆弾は突進してくる敵勢の隊列に着弾して凄まじい爆音とともに土煙が舞い上がり、敵兵の悲鳴が響き渡る。
「「「うわああああーーーっ!」」」
その殺傷力は予想を超えており、この一撃だけで岩倉織田軍は半数余りの死傷者を出し、壊滅的な打撃を受けた。
さらに逃げ惑う兵を、合流した柴田勝家の軍勢とノブナガ軍が巧みに散式火縄銃や弓で追撃して城際まで追い詰め、ついには抵抗もできずに岩倉城へと敗走していき、浮野の戦いはノブナガ方の圧勝で幕を閉じた──。
その後、岩倉織田軍は篭城を試みたが、内紛により統率を欠いた織田信賢の下では持ちこたえることができず、降伏したのだった。
こうして尾張国の大半を制圧したノブナガに、もはや国内において指図できる立場の者は、誰もいなくなったのである。
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