第2話 ※三人称

 ダンジョンが現れてから50年、最近の世間の流行りはダンジョン配信者だった。ゲーム攻略のようにダンジョン配信をする者が多くなり、認知は大きく広まった。

 ダンジョン配信者とは生放送でダンジョン内を撮影したりする人間の事で、それは攻略の鍵になりうる事があったので、政府はダンジョン配信者を正式に雇うようになった。

 政府公認になったダンジョン配信者希望者が年々増えていった。視聴が増えれば貰える金額も増える為余計に殺到した。

 だが命をかける仕事な為、危険である事は変わらない。視聴や配信は自己責任だった。

 世間はダンジョンに潜らなくてもダンジョン内の様子が分かる為視聴する者や、攻略の為に見る者や、配信者ごとに違う能力を見る者等で視聴者は年々増えていった。

 ダンジョンが現れてから発現した能力。一人一個の能力は違い、使い方も様々だった。それを見に来る者も多く、ダンジョン配信者は大いに盛り上がった。


 そんな中、有名ダンジョン配信者、糸使いの『アキヨ』がダンジョンの中層の途中まで来ていた。


「先日、アキヨちゃんは探検者ランキング42位まで登り上げましたぁ! これで、

50位以内に入ったから中層配信の許可が下りたよ! これで超! 超最高難易度と呼ばれる『白楽ダンジョン』中層に潜れる! 長かった!」


:うおおおお!!! おめでとう!!

:アキヨちゃんもついに50位以内に……成長したね

:白楽ダンジョン中層配信待ってました!!


 ダンジョン配信にはルールがあった。強さ順位ごとにダンジョン配信が解禁されていくタイプだった。

 100位から最高難易度と言われる白楽ダンジョンの上層配信権限の解放。50位から中層配信権限の解放。

 一度ランキングに入ってしまえば権限は解放される為、上位ランキングを目指す者は多かった。

 100位からは魔境と呼ばれる強さで、ランキング上位に入るのは難しかった。特に1位のダンジョン攻略者は最下層まで無傷で帰ってきているという噂で、2位でさえ傷を負う事に、世間は1位を化物か? と噂した。


「中層だから、まだ下層には手が届かないけど、頑張って10位以内に入って下層権限貰うよ!」


:下層って配信してるやついたっけ?

:いないいない

:初の下層配信者くるー???

:アキヨちゃんなら10位もすぐだよ!!


「流石にすぐには10位にはいかないよー。またこつこつ力をつけてくよ! 皆見ててね!」


:応援してる!!!!

:初下層配信者待ってるーー!!!

:世界一になっちゃえ!!


 アキヨの言葉にコメント欄は大いに盛り上がる。アキヨは浮遊するスマホを見ながらダンジョン内を単独で進む。

 普通なら団体で来るべきの白楽ダンジョンを一人で進む彼女は狂っていると言われていた。団体でも骨が折れるのに単独で行く。狂っていると思いつつ視聴者は彼女の配信を楽しんだ。

 団体ではなく単独。視聴者のウケになり、アキヨは大人気になった。

 元々ただの高校生で視聴者側だったアキヨ。配信を見ていて好奇心が刺激されこうして単独で配信をする事になった。

 足を引っ張るのが嫌だし、足を引っ張られるのも嫌。そんな考えで単独でダンジョン攻略を始めた。

 単独だから怪我をしても一人で帰るしかない。傷を即効薬を飲んだり、糸で塞いだりと対策をしながら今まで生きて帰って来れた。


 だが、そんな彼女の前に剣を持っている幽霊のようなモンスターが現れた。アイスゴブリンを倒した直後にだった。


「はっ……っは、攻撃が、効かない……」


:物理効かないとか終わったわ

:アキヨちゃぁぁぁん

:逃げてぇぇ!!


 モンスターは魔法を使ってアキヨに攻撃をしかける。それを糸を使って移動し避けるが、モンスターの方が早く、背中を斬りつけられる。


「きゃぁぁ!!」


 痛みでその場で倒れ込む。起き上がろうと体に力を入れるが体は動かずアキヨは手を動かして配信を止めようと手を伸ばす。だが手はスマホに届く事はなくその場に落ちた。

 

「むり、かぁ……」

「よっと。シャドウか」


 意識を失おうとしていた時、声が聞こえ、重い頭を動かし、声のした方を向く。

 そこには短剣を投げて取ってを繰り返している律の姿だった。


「ぇ……」

「『ブリザード』。おーい、生きてるか?」


 モンスターを凍らせて倒してから律はアキヨに近寄った。アキヨはその姿を見ていたが痛みで目を閉じた。




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