第5話

 昼寝から起きた時高坂はいなかった。

 スマホを開いたら政府からのメールが届いていた。来てくれと。

 面倒が次々振ってくる……本当に嫌だ。こっちでは平穏に暮らしたかったのに、台無しだ。暇つぶしのダンジョン攻略も出来なくなるの? それは嫌だな。

 政府のメールを無視したかったが、来なければダンジョンの出入りを禁ずる。と書かれていたから仕方なく向かった。それを脅しに使うなんて最低だ。

 目的地に向かっているとちらちらと俺を見てくる視線。鬱陶しい。

 ビルについて受けつけに「呼ばれた夏希律です」と言うとあっさり通してくれた。手回しが早くない?

 

「ああ、夏希律くん。よく来たね」

「……何の用ですか」

「そう急かさなくてもいい、ほら、椅子に座って」


 椅子に座る。ふわふわしてる。高級品? 

 偉いやつ……多分政府の上層部とかそこらだと思う人が俺ににこやかに話しかけてくる。


「配信を見させてもらったよ」

「はあ」

「いつもマントで姿を隠していた攻略者一位がまさか学生だなんてね、こっちは大騒ぎさ。そして君は一年前にダンジョン攻略を始めた。――戸籍無しの君がね」

「…………だからなんです? 戸籍なしはごまんといるでしょう」

「君の事を調べさせてもらったんだけれど、可笑しな点があってね。君、50年前に行方不明になっていたそうだね?」

「…………」


 面倒だ。帰ろう。


「ああ、待ってくれ」

「用はないのでしょう。ないのなら帰ります」

「分かった。要件を言おう。君、うちの娘と同行してくれないかな?」

「……うちの娘?」


 娘……娘、すぐに思いつくのは高坂……。

 

「君の同級生の高坂秋。うちの娘なんだ」


 最悪。面倒を押し付けられるって事か。


「俺にメリットがない」

「支給品無料。依頼報酬倍増。どうかな?」

「金には困ってない」

「記事を取り下げて君の事を公表しない。とかはどうかな?」


 う、それは揺らぐ。平穏が一番だから公表されないのはいいけど……。記事取り下げも……。


「――はぁ……わかりました。受けます」

「ありがとう。ではよろしく頼むね」


 受けてしまった。まぁ……前と同じ同行者が増えるだけだし……まぁ、なんとかなるか?

 高坂の父は俺に向かえを用意して自宅まで送ってもらった。

 自宅について郵便物を確認すると手紙が入っていた。珍しい。手紙なんて。


『調子に乗るな』

『明日まってろ』


「……はあ?」


 何だこれ。いたずらか? 赤いペンで書いてるのがいたずら感あって笑える。というか今どき手紙でこれって、駄目だ笑う。

 ここの人の強さはどうなんだろ。能力が発現したってあったし、向こうとは違って面白い戦いになりそう。

 面倒だけど、暇つぶしにはなりそうだから明日は学校に行こう。

 手紙を燃やしてから家の中に入った。


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