業と心理。

レビュー筆者はこの世に生まれてからずいぶん時間が経ち、決して若いとは言えない歳になりました。
そんな自分自身を幼少期から振り返ってみると、今は尊いと理解している生命も、小さい頃は全く意識しておらず、作中に出てきた男児のいたずらのような出来事も身の周りにたくさんありました。

私自身は決して生まれながらに倫理観を備えていたわけではないと思うのですが、ではいつそうしたものが身に付いたのか、考えてみてもはっきりした時期はよく分かりません。

今はそこそこ真っ当な倫理観が身に付いたと自分では思っていますが、そんな私の中にも人に言えない罪悪は山ほどあり、他人に知られたら社会から爪弾きにされるのではないかと思うほど、猛省しなければならない過去もあります。

この作品は人間の業に真正面から光を当てて心情を描いてます。
胸の中の闇に光を当てられた時、人はどんな気持ちになり、その目で何を見るのか、美しい言葉遣いで丁寧に描いて下さっています。
蟲を介した業の表現は読者の皆様に深い印象を残すと思います。

男児と虫のシーンが印象的だったので、ふと幼い頃のことを思い出し、このようなレビューになりましたが、この他にもたくさんの魅力が詰まった作品です。

この作品の世界観に、ゆっくり浸って頂きたいです。

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