柔く優しく、そして気高い花の名は

ザクバラ国のマレリィと、ネイクーン王国のエレイシア。
第三国の皇立学園で出会った二人の少女は、敵対関係にある両国の事情を越えて親交を深め、無二の親友となります。
やがてネイクーン王太子の正妃としてエレイシアが、側妃としてマレリィが入城する事となります。それは、ザクバラとの休戦協定の一環…政略婚でした。

王宮を舞台に、王妃エレイシアの柔らかくも芯のある強い生き様を中心とした、彼女を取り巻くマレリィや王太子の物語が丁寧に紡がれていきます。
主な登場人物はわずかに三人ですが、彼女達が織りなしていく心の機微や瑞々しい想いが巧みに表現されていて、一気に読み進めてしまう事請け合いです。
また、余分な表現を極力削ぎ落とし、厳選された言葉で読む者の心に真っ直ぐ訴えかける文体は、作者様がもっとも得意とするところ。気楽に肩の力を抜いて、物語の世界に身を委ねる事が出来ます。

作者様の長編ファンタジー「第二王子と水の精霊」の番外編でもあるこちらの作品ですが、本編をお読みいただいている方は勿論、そちらにまだ目を通していない方にも充分楽しんでいただける形にまとめられています。
王宮で咲き誇ったエレイシアという花の行く末と、彼女が遺した鮮やかな色を、どうぞご堪能下さい。