なんと美しい物語でしょう。
「第二王子と水の精霊」のスピンオフですが、独立した物語としてもお読みいただけます。
一人の王につかえる、正妃と側妃。二人の妃は、学生時代から、親友でした。
そして、側妃マレリィは、敵国から、停戦条約の証しとして、嫁いできたのです。
家来たちから敵意にさらされ、萎縮する側妃マレリィ。
しかし、正妃は、その手をとるのです───。
この三人は、誰もたちいる事ができない絆で結ばれていました。
正妃と、側妃マレリィ、二人とも、強い女性です。
読後感も良く、「第二王子と水の精霊」を読んだ方なら、ああ、彼女たちの子どもだから、ネイクーン王国の王子と王女達は、あのように健やかなのか、と思います。
ぜひ、ご一読を!
ザクバラ国のマレリィと、ネイクーン王国のエレイシア。
第三国の皇立学園で出会った二人の少女は、敵対関係にある両国の事情を越えて親交を深め、無二の親友となります。
やがてネイクーン王太子の正妃としてエレイシアが、側妃としてマレリィが入城する事となります。それは、ザクバラとの休戦協定の一環…政略婚でした。
王宮を舞台に、王妃エレイシアの柔らかくも芯のある強い生き様を中心とした、彼女を取り巻くマレリィや王太子の物語が丁寧に紡がれていきます。
主な登場人物はわずかに三人ですが、彼女達が織りなしていく心の機微や瑞々しい想いが巧みに表現されていて、一気に読み進めてしまう事請け合いです。
また、余分な表現を極力削ぎ落とし、厳選された言葉で読む者の心に真っ直ぐ訴えかける文体は、作者様がもっとも得意とするところ。気楽に肩の力を抜いて、物語の世界に身を委ねる事が出来ます。
作者様の長編ファンタジー「第二王子と水の精霊」の番外編でもあるこちらの作品ですが、本編をお読みいただいている方は勿論、そちらにまだ目を通していない方にも充分楽しんでいただける形にまとめられています。
王宮で咲き誇ったエレイシアという花の行く末と、彼女が遺した鮮やかな色を、どうぞご堪能下さい。