『わたしは、自分が幸福であることを願ってやみません』それは魔女の信念。

 とある国の書庫の奥の奥、乾いたほこりの匂いと魔法の光に包まれたその場所で、いつも通りに過ごしていた彼女の元に届いたのは、不穏な争いの気配。

 何とも唐突な出会いから、不思議な方法で婚姻を結んだ静謐の魔女と戦火の聖人。魔法に満ちた世界で、人とは違う彼らが少しずつ互いを「揺らし」ながら絆を育んでいく様子は本当に不思議で美しく、それを紡ぐ言葉そのものが持つ想像力や豊かさを改めて感じさせてくれます。

 何より静謐の魔女、という性質ゆえに孤独の影を常にまとっているように見える彼女は、それでもその長い時の中で倦むことなく、たくさんの素晴らしい物語やお気に入りのものを蓄えとして身のうちに積み重ね、友人たちがそう望んでくれた通り自分の幸福をまっすぐに肯定して生きています。

 人とは違うのに、どこか人間らしいと感じてしまう彼女のそんなまっすぐな強さに元気をもらいつつ、他者と相対する時には苛烈で怜悧な聖人が、伴侶である魔女には翻弄しつつもされてしまう様子に思わずにこにこしてしまいます。

 静謐と戦火、対極にある二人のどこまでも不思議で美しく、もだきゅんも満載な「嫁入り(?)からのセカンドライフ」。

 今後がとっても気になる物語です。