少女倫理

「最初に言ったように、この学院に吸血鬼なんかいない。いや、そもそもこの学院なんか、存在しないんだ」

ある日の放課後。保健委員の用事を済ませた保健室から寮への帰路で、鵜月彼方（うづきかなた）は雛森結（ひなもりゆい）にこう言った。しかし雛森は、行方不明になった上級生と下級生の話を聞いたことがあった。そして学院に蔓延る吸血鬼の噂も。

……厳格で規律を重んじる校風の私立望月女学院。この学院には「吸血鬼が潜んでいる」という噂が囁かれていた。〈吸血鬼〉が出現するのは、満月の夜。魅入られた相手は攫われてしまうのだという。

全寮制の女学院の本当の姿は、特殊な病を患う少女達のための隔離病棟なのだと鵜月は言う。病を強制的に発露させるための言葉を、既に知っているはずだ。吸血行為を行うと、お互いの身体が灰にな…続きを読む