これぞ幻想文学!

黄昏を全部盗みたいと言うヨシダくんと、そんなヨシダくんを見つめながら、素直な気持ちを打ち明けられない少女の物語。
ヨシダくんは「私」にだけ秘密を打ち明けた。それは「私」がヨシダくんを否定しない唯一の存在だったからなのだろう……と考えを巡らせながら読みました。
夕方の景色や音や匂い、黄昏の欠片が盗まれ、土手の下に集められていく。風景の中の一部であるはずの夕焼けが、使い古しの衣類か何かみたいにダンボールにぎゅうぎゅうに押し込まれているところがなんとも愛らしいです。
初々しく、優しい文章に心を打たれました。

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