極上の幻想文学。そして相対性理論

「土手下に立つ桜木のそばに『黄昏』は集められていた。

 お気に入りは、豚の貯金箱に貯められた夕方の電車の音。豚のおなかに耳を当てると、町の中央駅から出発した電車が、がたん、となる。」

たまらない情景描写に興奮してレビューを打つ指が震える。


集められていく『黄昏』
そして盗まれてしまう『黄昏』

一日の中からすっぽり抜けてしまった。とある。

最高の恐怖。最高の幻想。

本来『黄昏』は、相対的なものであって、絶対的なものではないとわかる。それはそれぞれの人の心にうつる、心象風景であると思うからだ。

だが、ここでは、沢田こあきによる『黄昏』とは絶対的なもので、等しく皆から失われる存在だ。それだけの数がそれぞれのボトルにおさめられ、等しくそれだけの数が、盗まれてしまったのかもしれないけれども。


私の『黄昏』が盗まれてしまったら。この世は一体どうなってしまうのか。

取り戻された『黄昏』が、たしかにいまここにあるように。

読み終えたその瞬間から、世界が変わる可能性を持つ。

最高の、幻想文学でした。


ありがとうございました。

一生読み続けたい。


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