第6話
***
初めて僕の部屋を彼が訪れた放課後から、僕たちは一緒に授業へ行き、息をひそめながら講師たちの話を聞いた。授業後は学園内の植物園へなどにも赴いてみては、時に共に絵を描いたりもした。そして、時折彼はどこかへふらっと消えていった。
「そういえば、以前質問したことがあったけどさ、どうして君を“エリー”と呼ぶ人がいるの?」
一瞬エマニュエルはぐっと言葉を飲み込んだように見えたが、すぐにいつもの作り笑いを作っては僕に笑って答えた。
「僕のことを女性扱いしているヤツが呼ぶやつね」
僕はまだその時は、彼の言っている言葉の意味はわからなかった。
自分がどんな顔をエマニュエルに向けて聞いているかも考えていなかった。
「え、彼らは君のことを女性だと思っているの?」
僕があまりにもまじめな声を出して攻めるように質問するもんだから、エマニュエルは得意の笑顔を見せた。
「君は本当におもしろいねレオ」
桜の花びらのような唇から言葉が出てくる。
その言葉やしぐさや感情は、僕の知らない世界だった。
エマニュエル・モロー
どうして君は、そのちいさな体に一人でたくさんの不安を抱え込んでいたんだい。
あの頃の僕たちは、まだ幼くて
成長した体に”こころ“がまだ、ついていっていなかったのだろうか。
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