第7話

***


「ねぇ、レオ。君が描いてくれた僕の絵をお爺ちゃんにあげてもいいかい?」


昼下がりの青空が広がった真夏の中、僕たちの制服の袖はまだまだ白かったが肩までの短さになった。


校内では肩峰まで袖を捲し上げるのが流行っていたが、エマニュエルは決してそのようなことはしなかった。彼は真夏の最中でも手首を出さなかった。


夏にもなると、嫌でも周りがエマニュエルへ対する態度がわかるようになった。




取り巻く女の子たちはエマニュエルの頬にキスをしたがり指を絡めたがる。


近寄る男は肩を寄せたがる。




あの頃の僕は彼と周りを取り巻く環境を深い深い暗闇へと閉じ込めて目をつむって耳を閉ざした。ただただ彼の横にいて、彼を描くことだけが僕の興味だったから。






「もちろんだよ!なんならこないだ完成した絵を渡してもいいよ!毎日デッサンしてあげるよ!」


「それはもうしているだろう」


エマニュエルの乾いた笑いが聞こえる。




僕らが冬に進級すればまた新しい学年が春からスタートする。


来年の寮での生活にエマニュエルと同じ部屋を希望した。


僕らの毎日はきっと笑いで耐えないだろう。



 

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