第12話

「ふっ…ぁ、ッ…んっぁ…は」


生きるために半開きの唇で息を整え、どこでもない遠くを見つめながら生理的な涙を流す姿に、僕は震えた。


「っ…あ、レ」




彼の中を確かめたくなる。どう言った形をして、保っているのか。




彼をひっくり返して青白い双臀に手をかけ、顔を埋めた。蜜壺へすっかり温まった舌を這わせる。


「ぅッ、あ」


小さい感嘆の声。


粘る舌にさらに唾液を絡めて口吻を続ける。


「レオ!まって、今…ッ」


中指で入口をトントンと叩きゆっくりと中へと侵入していく。




エマニュエルは「ふぅーっふぅーっ」と息を整え、枕にふるふると顔を埋めている。




熱くうねる彼の中に中指の先端はすっかりと飲み込まれた。


しかし、中々その先へは進めなさそうだから、まとわりつく周りをぐるりと優しく撫でてやる。


「ぅぐっ」と声を上げる部分を見つけて、その“弱い部分”を擦って攻め立てた。




エマニュエルの表情は確認できないが、細く長い指は枕を先ほどよりも固く掴んでいた。




閉鎖された中の入口は拡がり優しく擦りながら先へ先へと進んでいく。


エマニュエルの中は熱く、ヒダがみっしりと並んでいた。




「あっ」


指を引き抜いたり入れたりを繰り返す。耳に心地良い声が響く。


本数を増やしても自由に入るようになった。


僕の下で何度も見た彼が震えている。




すっかり昂まった僕自身と頭で引き返そうとする理性の僕が駆け引きしていた。




ーーでも、きっともうこの世界で彼を描くことはできなくなるよ




理性のない僕がそう言った。




「レオ、いれてよぉ…っ」




エマニュエルが涙で濡れた僕を横目で見る。


彼の下半身も期待に再び膨らんでいる。


いきり勃った肉棒をあてがうと、ぴくんと彼の身体が跳ねた。




彼の身体にすんなりと入っては、獣のように彼に打ち付けていく。


喘ぎと共に、彼が言葉を発している。僕は聞こえないふりをして彼の腰を掴んだ。




「っあ、おれ、おれっ…っあ、欲し」




絡みつく熱に腰が止まらず、恥骨を突く音と粘膜が絡み合う音が部屋に鳴り響く。


エマニュエルは僕とは違うどこかへ行ってしまったのか、別人のように乱れた。




しなやかな身体が美しく弧を描き、リズムに合わせて上下する。


切なげなうねりを上げる肢体はもっとも恥ずかしい部分を擦り合わせれば合わせるほど蛇のようにしなった。




僕は彼の昂まりきった男根に手をかける。


「あぁぁっ…!」


きつく上下して腰を突けば、喜悦を上げる彼の声が耳元に聞こえる。ドロっと指に彼の出した熱。


僕の名前を呼ぶ熱い吐息を感じて僕は彼の中で頂上を極めた。






僕らは両手を広げて白いシーツの上に落ちた。


息を整え終えた僕は『汗が冷えるなぁとか』『風邪ひくかも』と、現実に戻りはじめていた。




「レオ、不思議だ。君の瞳の中に、炎が見える」


興奮したエマニュエルが僕の目の中の奥を凝らしてみている。


僕の上に乗って僕の目をまじまじと見つめるエマニュエルのふわふわの髪を撫でた熱を帯びたエマニュエルの瞳と柔らかい唇にキスしたくなった。


「君の目って不思議だ。真っ黒な瞳の奥はよく見ると炎が見える」




「エマニュエル君の瞳も不思議だ。美しい木々のように緑色に澄んでいる」


エマニュエルが照れくさそうにまつ毛に影を落とす。




僕はエマニュエルの細い手を握った。




「君は、汚れてなんかいない。


その美しい心を大切にして。僕がいつも君の心に寄り添うよ。大丈夫」




白くて細い指。


この手に騙されているかもしれない。


でも、肌が触れ合ったときに感じたんだよ、君の優しいぬくもりを。






ーーーエレファントの目玉が欲しい


彼が僕に抱かれて泣きながら、うわごとのように言った言葉が忘れられない。



 

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