第9話

その後、寮長が間に入って”事”は収まったが、スポーツでもないのに成人した大きな体がぶつかり合うというイレギュラーな事態は、常に時間を持て余している才能ある人間たちへの大きな話題となってしまった。




”事”は収まったが、”コト”は始まったばかりだった。


話題と同時に、エマニュエルと上級生の”関係”が明るみになり、エマニュエルと上級生は強制的な半年間の休学を申し渡された。








「エマニュエル。聞いたよ」


「あぁ、僕の休学と上級生の関係?」


「ルゥオーギュスタン・ド・レオ、君までうるさいことをいわないで」




「何も言うつもりはないよ。君が納得して行っているならね。僕は難しいことはわからない。僕らは近い存在だと思うけれど、本人ではないから君の気持ちまではわからないんだ。だから、聞けるなら聞きたいなとは思っているよ」




「…吐き気がするほど常々人格者だよね」


彼の好戦的な瞳は初めて見た。


ゾクゾクと新しい刺激を仙骨部から背中に感じて、僕は嬉しくなってしまった。


ーーーーまた、新しい彼を知った!


「僕って人格者かい?好きに生きて言いたいことを言っているだけさ!」




「…レオ、君は何にも縛られないな」


僕らの寮の部屋は綺麗だ。二人で育て始めた観葉植物は青々と草を光らせている。


「ねぇ、聞いてくれるかい」




「あぁ、人格者としてね」




僕がほほ笑むとエマニュエルが笑った。



 

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