第2章
第2章ー1話 鳥三郎の過去
「鳥空、やっぱすげえよ。できるようになったらすぐ上達するなんて」
「ありがとう、壱鳥」
「これでカラスに勝てるね。まだ半年もあるけど」
「そうだね、壱鳥」
俺たち二匹はワイワイと盛り上がっていた。飛べたことがとても嬉しくて、心が満たされている感覚だった。鳥三郎が真実言うまでは。
「二人とも、盛り上がってるところごめんね」
「どうしたんですか?」
「僕ら三匹だけ連れても意味ないと思う」
「どういうこと? 教えてください……」
鳥三郎さんの話を聞くと、思いがけない真実を知ることになった。
◆鳥三郎◆
二人は知らないことだがカラスは思ったより強いんだ。
「カラスは強いんだよ。僕ら三匹が飛べるだけじゃ意味ない」
僕は彼らに語った。
カラスたちは三匹しか来ない。しかし強い。飛べるようになったら少しは勝てる可能性が出てくるだろうと思って、今までやってきたけど、実際どうなるかはわからない。
カラスは想像を超えてくる――。
僕にはわかる。僕は現実世界でカラスに苦しめられた身なんだ。鳥王国の平和すらカラスが破壊している。どうにかしないと。
これは僕が現実世界に住んでいた時のことだ。
僕は最初野良鳥だった。というか、野良鳥から生まれた卵だった。木の上にあった巣に僕は卵としていた。僕は生まれる前に僕の卵を全身黒いパーカーで覆われた人間に取られた。その数日後に僕は孵化した。初めてそいつを見た時は震えが止まらなかった。怪しすぎる見た目をしていたから。僕が生まれてすぐにそいつは、「全然かわいくないやん。もういいや」そう言ってそいつは生まれたばかりの僕を捨てた。僕は段ボールに入れられどこかに捨てられた。のちに知ったが、その段ボールの側面には”かわいくないごみみたいなひよこです”と書いてあった。あの黒パーカー男、最低だ。そうして風雨に耐えて数日を過ごした。
ある日、僕の段ボールの近くを人が通った。それはよくあることだがこの人は違かった。この人は僕を無視しなかったんだ。
「ん? なんだこの段ボール……」
彼は僕の方に近づいた。
「かわいくないごみみたいなひよこです? 可愛いのに……。僕が拾ってあげるか」
そういい、彼は段ボールを持ち上げ、家に持ち帰った。
僕は感謝をした。にわとり語は伝わっているかわからないが、感じ取ってくれるだろう。弱々しい声だったが。
「ぴよ、ぴよ……」
もう一度言っておく。僕は生まれたばかりで風雨に数日間さらされていた。
僕は彼に救われた――。
飛べにわとり 塔架 絵富 @238f_peng
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