飛べにわとり
塔架 絵富
飛べにわとり
第1章
第1章ー1話 クレーンと誕生した生命
「なあ、
「どんなやつだ?」
「にわとりの卵だ」
「え……? これ?」
「そうだよ。この卵を取って、にわとりを飼うんだ」
「食べるやつじゃないのかよ」
ウィーンと、音をクレーンが立てる。
「取れそう!」
「取れた!」
「えっ! マジ?」
「うん。簡単だから掛もやってみなよ」
「そんなに簡単か?」
またクレーンはウィーンと音を立てる。
うわ。これ絶対取れないわ。先端だけしかつかんでなかったら、無理だろ。
「取れたわ」
「だろ。簡単でしょ」
「うん。簡単」
簡単だった。全然無理じゃなかった。そうして取った卵を家に帰ってからすぐに布で包み、生まれるのを待っていた。
二ヶ月後
パキ、ピキ、パキ、ピキ。
「あっ。大地、生まれそうだよ」
「あっ。本当だ」
バキ!
“生まれた”
「可愛いひよこだ」
「僕の方が可愛いし」
「いや僕の方が……」
「いや両方同じくらいかわいいな」
「そうだね」
こんなに可愛いひよこは初めて見た。まあ、ひよこ見るの初めてだけど。
「そういえば名前考えないと。掛は考えてある?」
「まだ」
「僕はもう考えてある」
「早いな」
名前はとても重要だ。慎重に決めないと、後で大変なことになる。
「決めたよ」
「早いな」
「じゃあ、せーので」
「了解」
「せーのっ――」
「
「
壱鳥、いい名前かなあ? もし変だったらどうしよう。
鳥空か。かっこいいな。将来マジシャンやってそう。鳥だけど。
「じゃあ、餌買いに行こっか」
「そうだね」
チャリーンと、鐘の音が鳴った。入店音だ。
あのクレーンゲーム簡単すぎて、たくさん取られてるのが分かる。にわとりの餌が残り少ない。僕たちは餌を買えたので良かったけど、会計が終わった後餌があったところを見ると、もうなくなっていて三人の少年が悲しい感じに会話を交わしていた。
僕は買えてよかったと思った。同時に、買えない状態に陥りたくないなと思った。
家に帰って、餌をやった。その後、毎日餌をやってぐんぐん成長した。
そんなある日、餌がなくなって買いに行ったら、完売していた。嫌だと思った状態に見事に陥ってしまった。僕は運がないな。
大地と一緒に来ていたけど、そんなことも忘れて立ちすくした。僕が現実に置いて行かれるように。
「掛、しょうがないから今日は作ろっか」
大地の声を聴いて、我に戻った。
「そうだね」
そのまま家に帰り、作る準備をした――。
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