「……もう驚かないよ」


 また、この屋上で、少女と鉢合わせる。


「また会ったね」


「また会ったね、じゃないよ。流石に今回は狙ってきたでしょ」


「だって、前言ってたから」


「前言ってた? 何を…………あ、確かに一週間後に死ぬって言ってた。前スーパーであった時に。で、また止めに来たの?」


「……」


 何を言ったらいいのだろう。


「無言を貫くってことは、そうだって言いたいのね。何で君はここまで私に執着するの?」


「……」


 わからない。


「ちょっと、何か言ったらどうなの? 私は、こうやってここで死のうとしてる。辛いから死のうとしてる。だったら、君がそこまでして、私を止める理由を教えてよ!」


 けど。


「……君には、生きていてほしいから」


「生きていてほしいって、それは今思ってることかもしれないけど、じゃあ何で初めは止めたの?」


「……」


 そんなの、胸糞悪いじゃないか。


「やっぱり偽善でしょ。ほんとくだらない。多少はひねったことを言ってくれると思った私が馬鹿だった。じゃあね」


「……!」


 僕は、前の様に少女の腕をつかんだ。そして。


「ちょっ、やめて! 痛い! なんでまたつかむの…………って、え?」


「……」


 ああ、ここからの景色はこんなにきれいなんだ。


「ちょっと、なんで君が飛び降りようとしてるの?」


「……そんなの決まってる」


「決まってるって、まさか、君死にたいの?」


 少女は必死そうだ。あんなに人に死を邪魔されて腹立てていたのに、こうやって僕の邪魔をする。


「……本当にくだらない。帰る」


「帰るって、ちょっと待ってよ!」


「死にたいなら勝手に飛び降りてくれ」


「…………え」


 僕は屋上の扉を閉めて、階段をかけ下りた。

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