1-3
「え、もしかして君ストーカーしてるの? なんで公園に?」
気分転換に訪れた公園で、ベンチに座る少女と出くわした。
「ちょっと歩きに」
「歩きにって、確かにウォーキングできるくらい広い公園だけど、だったらなおさらなんで私に構うの? ここは色々あるから飽きないじゃん」
「例えば?」
「例えばって、ほら、あそこの池、フェンス低いから簡単に入れそう」
木々の隙間の池に、まるで新しいおもちゃを見つけた子どものような無邪気な目線を向ける。
「……カモがかわいそう」
「カモがかわいそう……? 確かに、さすがに動物に危害を加えるわけにはいかないか。私個人の問題で、他人に迷惑をかけてもいいとは思っていても、何の罪もないカモも一緒に殺すのはだめだね」
「でしょ? 動物好きなの?」
「動物? まあ、好きだったかな。野良猫と遊んだことも何回かあったし、燕の巣を探しに駆け回ったこともあったよ。でも、うちはペット飼えないからさ、こうやって眺めてるだけでいいなって思ってる」
「どの動物が好き?」
「一番好きな動物か。うーん…………ウサギ、かな」
「なんで?」
「可愛いじゃん。それに、ぴょんぴょん跳ねて移動するところとかさ、なんか愛らしくて。小学校でも飼ってたなー」
「うちも飼ってたよ」
「えっ、君の所も? 名前は?」
「くるみ。茶色の毛の」
「へー、くるみちゃんかー。私の所はね、マロンちゃんだったよ。もうめっちゃ可愛くて……はっ」
「どうしたの?」
「……ううん、何でもない。なんで私こんなに楽しそうにしてるんだろ」
少女は雑念を振り払うように立ち上がり、公園の外に歩いて行ってしまった。
「あ、ちょっと……」
どこかに行っちゃった。
ウサギの話してる時、楽しそうだったな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます