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「あれ、奇遇だね。スーパーに来てるなんて」
スーパーの卵コーナーで、買い物中の少女と出くわした。
「何してるの?」
「何って、スーパーで買い物以外にすることある?」
「それはそうだけど……」
「まあ、いいや。私の家、親がなかなか帰ってこないんだよね。だからいつも自分でご飯を作ってる」
「すごいね」
「別に大したことじゃないよ。別にどうせ死ぬんだから、栄養も考えなくていいし。お金さえあれば一人暮らしできるんだろうけど、また次の人生で考えようかな」
「……」
少女は平気な顔でそんなことを言う。
「そういえば、君はどうしてここに?」
「おつかいで」
「へー、おつかいか。親の手伝いって、えらいじゃん。手伝える親がいるだけましだね」
「そ、そうだね」
「でも、かごの中身、インスタント麺だらけだけど」
「こ、これは自分用」
「えっ、自分用なの? 君にはまだまだ長い未来があるんだから、もっと栄養価高い物食べなきゃだめだよ?」
「そうだね」
「まあ別に、君の人生に口出す義理はないからね。逆に、君も私の人生に邪魔しないこと。前は水を差されたけど、一週間後、今度こそあそこで死ぬから」
「……」
「じゃあね。あ、レジあっちの方が回転早いよ」
「ありがとう。じゃあ僕はこっち行くから」
目の前の、長い列に並んだ少女の隣に立つ。
「いや、あっちが空いてるよって、あっちに行きなって言ったんだけど」
「だったら君が行くべきだ」
「いや、私はいいから。別にこの後も予定ないし」
「じゃあ、一緒にここに残ろう」
「一緒にこの列にって、それ何の意味があるの?」
「……分かんない」
「分かんないって、まあいいけど。君のよくわからない暇つぶしに付き合っても、私が死ねなくなるわけじゃないしね」
「やった」
「なんで喜ぶの? 変な人」
嘲笑するように言い放ち、少女はその場にとどまった。
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