第12話 忘れ去られた記憶 part4

「レティ!大丈夫だった!?あの人に、お父様

 に何されなかった?」


「大丈夫だったわよ。

 少し、お話をしただけだから。」


「な、何の話だった?」


「うーん、そうだねー、、、

 貴方の名前がオリビアじゃないって話だったよ」


「うっ、、、ご、ごめん、、、ずっと言おうと

思ってて、そしたらある日突然レティはいつもの優しいお兄ちゃんと町へ来なくなってて、、代わりにあの人と来るようになって、あの人が怖くて、苦手で

だから、いつの間にか本当の事を言えなくなったの」


「優しいお兄ちゃんって、、、フィリップお兄様でしょう?あの方としか行ったことないわよ?」


「 • • • • • • • • 」


「フィリップお兄様が苦手だったのね、、

 好きだと思ってたわよ?」


「全然好きなんかじゃないよ、、、

 あの人嘘吐きだったし、、。」


「嘘つかれたの?」


「わたしじゃないよ、、、レティにずっと嘘付いてたのよ」


「フィリップお兄様が私にそんな事しないわよ。

 とても優しくて大好きだったわ、、。」


「そうだよね、」


「それで、貴方の本当の名前を教えて?」


「エ、エレインよ、」


「エレイン、とても素敵な名前ね!」


「あ、ありがとう、でもわたしはレティがすき」


「私もエレインが大好きよ?」


とエレインを抱きしめると、暴れ出した。

仕方なく離す。


「ば、ばか!抱きつかないでってずっと言ってるでしょう!?でないともう我慢ができなくなるから、」


「えっ?何?」


「な、何でもない!レティのばか!」

とまた怒られた。


「エレインは思春期だね」

と苦笑しながら言うと凄い顔で睨まれた。


「ち、違う!もう!レティの分からず屋!ばーか!」


「はい、はい、わかったわよ」

と受け流すレティシアである。


「これからどうするの?」


「そうね、、用事はもう済んだから帰るわ」


「ま、待って!レティは情報が欲しいんでしょ?わたしなら手に入れるよ?」


「本当!?」


「うん!だからまだここにいてよ」


「でも本当に良いの?迷惑だったりしない?」


「全然迷惑なんて思ってない。寧ろレティに

 役立てるならわたしは嬉しいよ?」


「ありがとう!今度ちゃんとお礼をするわ」


「やった!楽しみにしてる!

 ルーファス、きて」


扉が開き青年が入ってきた。

目が合ったがすぐに逸らされた。

(何処か見た事あるような、、何処かしら、

あっ、この間町まで送ってくれた人だわ。

 この間は暗かったから見え難かったけど

 思ったより若いわね)


「エレイン様、何なりとご命令ください」


「フィリップ王子に関する情報を集めて、

 いくらかかっても構わないよ。

  明日の朝までに持ってきて、わかった?」


「かしこまりました」と言って出ていった。


「この間の馬車はエレインが送ってくれたんだね。」


「あっ、、え〜と、し、心配だったから」

 エレインは顔を俯いた。


「でも、どうやって?、、、、まさか!?

 私に魔法を使ったの?」


「うっ、うん。フィリップ王子が亡くなったと聞いて、レティが心配で会いたくて、そ、それで

 監視魔法でレティの様子を見てたの。」


「あれからずっと?」


「うっ、うん。」

エレインはずっと俯いている為、

顔は見えないが耳は真っ赤にさせている。


エレインのした事を聞いて、流石に犯罪だとレティシアは思った。だから、彼女を叱ろと思った。


「エレイン、顔を上げて。」

言われた通りに顔を上げた、彼女の顔は赤くて、

目には涙が溜まっていて、今にも溢れそうだった。

そのため、レティシア叱るのを辞めて、彼女を抱きしめた。


「悪い子ね。もう、しちゃ駄目よ?もし私に会いたくなったらいつでも会いに来て良いわよ?」


「い、いいの?本当に?」


「良いわよ、寧ろ嬉しいわよ。最近、みんなに避けられていて寂しいのよ。」


「そ、そうなんだ。」

と明らかに動揺したエレインを残念ながら

レティシアは気付くはずもなかった。



翌日、2人は朝食を済ませて、部屋でチェスを

していると、誰かがノックした。


「エレイン様、ルーファスでございます。」


「入って。」


「失礼致します。」


「どうだった?」


「例の場所に人を連れてきました。」


「わかった。案内して、レティ行こう?」


エレインに腕組みされて、何処に行くの?と聞こうとしたら、いつの間にか不気味で薄暗いところにいた。


移動魔法はやっぱり苦手なのだとレティシアは思う


真っ直ぐに進むと、ある部屋へと案内された。

そこには男性は椅子に縛られており、目隠しされている。


「だ、誰だ!?」

と怯えながら聞いてきた。

「そんなに怯えないで聞きたい事を教えてくれたら

 解放してあげる。」

エレインは落ち着いた声で言う


男は子供だと声で分かり、態度を一変させた。


「ガキが何の用だ!お前に教える事なんて無い! 

 さっさと解放しろ、でないと痛いみ合わせてやるからな!」と怒鳴り散らした。


「おい!言葉に気を付けろよ!?もう一度

 お嬢様に大口を叩いてみろ、お前だけでなく

 お前の家族もただでは済まないからな。」

 とルーファスは低い声で脅す。

 いや、間違いなく脅しではなく、本気だろう。

 この人ならやりそうだとレティシアは思った。


「ひぃっ、、ゆ、許してくれ、、頼む!

 家族には手を出さないでください!

 知ってる事何でも答えます!む、息子はまだ

 幼くて、病気なんだ、、お、お金が必要で

 仕方なかったんです!助けてください!」


「で何を手伝ったの?」

 さっきと変わらない口調でエレインは問う。


「お、俺の目は生まれ付き特殊で、一目で見ただけで

 建物の構造が全て分かります。そ、それで、

 2ヶ月前、フードを被った男に突然話しかけられ

 て、王宮の設計図を作ってくれたら、大金をあげる

 と言われました。言われた通りに作って、そうした

 ら約束通り、一生仕事しなくても、

 贅沢して暮らせる大金を頂きました。

 最初は喜びましたが、フィリップ殿下が亡くなった

 と聞いて、もしかしたら、ヤバい事に加担したので

 はないかと不安になり、

 何か分かるのではと思って、闇情報屋に行ったら、そちらの男性に気絶され、起きたらここにいました」


「フードの男は特徴とか無い?些細な事でも良いから思い出して」


「その人は目が見えないかもしくは、

 悪いのかだと思います。

 あ、あと金の杖を使ってました。」


 それを聞いてレティシアは固まった。


「他は?」


「もう、ありません。全身に黒いモヤがかかっていて何も見えませんでした。」


「わかった。ありがとう。」


「あ、あの、こ、これからおれはどうなりますか?

 せめて家族だけはどうか助けて下さい!」


「とりあえずあなたはこのまま、此処に居てもらいます。家族はもう保護しているから安心して、後で会わせるよ。」


「あ、ありがとうございます、

 か、感謝致します」


エレインの部屋に戻ってからもレティシアは上の空にいた。


エレインは心配そうにレティシアの顔を覗き込んだ。


「レティ、大丈夫?なんか様子が変だよ?」


「だ、大丈夫よ。とりあえず屋敷に戻るわ。」


「レティ!ま、待って」

エレインに言われたがそれを無視して、

姿を消した。

 








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