第11話 忘れ去られた記憶 part3
彼の名はエイダン•ラグランだ。
彼は王都一の商団の主でそして公爵である。
14歳の若さで父から公爵を引き継いだ。
その権威は絶大で多くの者から恐れられている。
その反面、一部の者からはそれが面白くなくて、
彼を妬み始末したがっているのだ。
だが彼は全てに対して完璧だ。
だから、彼らは公爵を狙うのを諦め、彼の
最愛の愛娘を狙い始めたのだ。
彼は子供が生まれると聞いて、嬉しい気持ちで
いっぱいだった。
だが、不幸に幸せは長くは続かなかった。
出産は難産で母子ともに危険な状態であった。
彼は迷わず妻オリビアを選んだ。
子供はまた作ればいいと考えたからだ。
だが、意識朦朧としている状態でオリビアは
それを頑なに拒んだ。
彼の手を強く握りしめ、涙を流しながら
こう告げた。
「あなた、、や、約束を守って、、、っ、、」
「 • • • • • • • 」
「こ、この子をま、守って、、お願い、」
(ああ、、、そうだった、、、
あまりにも幸せすぎて、すっかり忘れていたよ)
オリビアが子供を赤ちゃんを手放したくない理由
彼は痛いほど知っていた。
オリビアは元々平民出身であった。
彼女は親に恵まれておらず、親は彼女を見るなり、
罵声を浴びせ、暴力を振るった。
それは公爵と出会ってからも続いた。
彼女は公爵と交際をしてからも、関係を秘密に
してほしいと頼んだ。彼を困らせたくないからだ。
だから、仕方なく公爵は承諾した。
その代わり、できるだけ彼女と会い、あちこち
連れて行った。少しでも、彼女をあの家から
守るためである。
だが、ある日彼女は親の多額の借金代わりに
金持ちの貴族に奴隷として売られそうになった
ところを公爵が救って、もう誰にも手出し出来ないように、妻として迎えた。
最初は誰もが反対をした。
だが、それを掻き消すくらいに権力をあげた。
ある日、彼女は言った。
「ねえ、貴方、、」
「なんだい?」
「私ね、夢があるんだ。
私達に子供ができたら、うーんと
甘やかして、愛が重いっよって
文句を言われるくらいに愛して、
愛してあげるの。」
「もちろんだ。」
「だからね、もし私に何かあったら
私の分まで愛してあげてね?」
「縁起でもない事を言うな!」
「もしもの話ですよ?だから約束してくださいね」
真面目な顔で言うオリビアである。
「ああ、わかった!約束するよ。」
と2人は約束を交わすのだった。
彼はオリビアの冷え切った手を強く握り返した。
「わかった、、、約束を守るよ。
私達の子を絶対に守って、大切に育てるよ。」
「あ、ありがとうございます、、、
エイダン様、愛してます、、こんな私を
大切にしてくれて、ありがとうございます。
とても愛しています。」
「私もだよ、、愛してるよ、、
これからもずっと、、」
彼の目から大粒の涙が流れ、
ポタポタと地面へと落ちていった。
彼は妻との約束を果たし、そして
亡き妻の分まで娘を大切に育てると再び誓った。
公爵の話を聞いて、レティシアは何を言った良いのか
分からなかった。
先に口を開いたのは公爵であった。
「レティシア様、どうしょうもないバカ娘と
どうか、これからも仲良くしてください。」
と言って頭を下げた。
「もちろんですわ!私の大切な友達ですもの。」
「ありがとう。では体調が回復するまでこちらに
休んでください。レティシア様の屋敷にはしばらく
ここに居ると手紙を送りますので
ご安心ください。私もこのあと王宮に戻りますので
ご両親にもそこで直接謝ります。」
「は、はい。ありがとうございます。」
(そうなりますよね、、、はあ、、絶対怒られるわ、)
落ち込むレティシアだった。
公爵はレティシアを残して部屋を後にした
(娘は私のせいで何度も何度も危険な目に遭ってきて、私以外の者には心を開かなかった。
毎日この部屋に閉じ籠っていました。だが、ある日を境に娘が変わりました。娘の中に一体何があったと
思い、探ったが彼女は頑なに秘密にしていた。
そうでしたか、、貴方がエレインを変えてくれたのですね。ありがとうございます。)
と公爵は感謝の気持ちを心に留めたのだった。
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