6.愛してるゲームは終わらない
//SE:離れる音
//向かい合う形になる
//柔らかい声で
「ごめんね、せんぱい。お見苦しいところをお見せしちゃって」
「でも、もう大丈夫だから」
//話を切り替えるように、明るく
「……それでせんぱい、ゲームのことだけど」
「うん、せんぱいの負け。ルールはルールなんだから。自分から破っておいて、温情なんてありません。負けは負けです」
「私はせんぱいとお付き合いしてあげることはできません。これからも、先輩と後輩という関係で、仲良くしていきましょうね」
(先輩、自分のしたことに後悔はしていないが、落ち込む)
「落ち込んでる様子を見せても、取り消したりはしないよ」
「……でも、せんぱいは、一度フラれたくらいで、仕方ないって諦めちゃうような、そんな人なの?」
//わざとらしく拗ねたように
「私のことが好きって、たった一度で諦めることができちゃう程度だったんだ。ふーん、そうなんだ」
「あーあ、残念だなー。せんぱいからの私への思いが、その程度だったなんて」
//少し間を置いて
「ねえ、せんぱい。私に何か言うこと、ない?」
「いまなら聞くだけ聞いても、いいよ? ……たぶん、私、同じ気持ちだと思うんだけど」
(先輩、改めて告白する)
//後輩、嬉しそうに返事。
「うん……私もせんぱいのこと、大好き」
「これで、晴れて恋人だよ。せんぱい、よかったね」
「ちょっと、遠回りしちゃったかもだけど。でも、せんぱいも悪い思いはしてないわけでしょ? ……うん。だったら文句はいわないこと」
「……でもさせんぱい。本当に私でいいの? 私、たぶんせんぱいが思ってるよりも、面倒くさい子だよ?」
(先輩、既に今日一日でだいぶ振り回されましたという反応)
「……なにその、もう十分わかってるーって顔。まあ、せんぱいがいいなら、いいけどさ」
「それに、今更嫌だって言われても、私の方が無理だもん」
「ねえ、ぎゅー、しようよ。付き合い初めてからの、初ハグ。それ以上は……ちょっとまだ、恥ずかしいから、今日はなしで」
//SE:抱きしめる音
//声、少し左側から
「ん……やっぱり、あったかいね。せんぱいは暑くない?」
(大丈夫。と返す先輩)
「ならいいんだけど」
「でも、改めてこうしてると……くっついているのって、こんなに幸せになれるんだね。ちょっとヤバいかも。せんぱい中毒だ」
「このままだと、毎日こうしないと禁断症状が出るようになるかも。そしたらせんぱい、責任とってよ?」
「なんてじょーだんじょーだん。でも、せんぱいとこうしていて、嬉しいのはほんと」
//静かで優しい声で
「……実はね、愛してるゲームを始めよーっていったとき、せんぱいになら押し倒されたりしてもいいかなーって思ってた。せんぱいと一緒にいられるなら、それでもいいかなって」
「でも……せんぱいは、そうしなかった。無理やり迫ったりしないで……ただ、私のことを想って、受け止めてくれた」
「せんぱいが、私のせんぱいでよかったなーって……私、そう思うんだ」
//SE:服が擦れる音
//後輩、正面で向き合い、面と向かって
「ねえ、せんぱい」
「私、せんぱいのこと……愛してる」
「うん。私の本心。ゲームのときは、言えなかったけど……いまなら、言えるから。せんぱいが私に、勇気をくれたから。こんな私でも、せんぱいのこと、好きでいていいんだって」
「流石に何度も言うのは、恥ずかしいけど」
「でもさ、またそのうちしようよ。愛してるゲーム。意外と楽しかったし。今度は先輩からもいう形で。せんぱいだって、私にいいたいこと、いっぱいあるでしょ? 私聞きたいなー」
「あ、恥ずかしい、とかいって逃げるのはだめだよ。私に言わせておいて、自分は口にしないなんて、そんなの通らないよ」
//SE:強くハグする音
//後輩の声、左側から聞こえる形に
//やれやれと思いつつ受け入れるような声で
「あ……もー。抱きしめて誤魔化そうとしないでよ……でも今日だけは、誤魔化されてあげる。感謝してよね、せんぱい」
//軽い調子だけど、静かに縋るような声で
「ねえ、せんぱい。私、夏休みが終わったら……授業に出ようと思ってるんだ。まあ、まだ一ヶ月も先のことだけど」
「元々、考えてたんだ。出席日数のこともあるし……それに、学校辞めちゃったら、せんぱいと会えないし」
「……あ、でもその理屈だと、せんぱいが卒業しちゃったら、学校、辞めちゃってもよくなっちゃうのか。ねね、せんぱい、留年とか興味あったりしない?」
「なんて、冗談、冗談。うん、冗談だから……まあ、半分くらい?」
//明るい声で
「じゃ、真面目な話はそういうことで。次は、楽しい話をしようよ。夏休み、どう過ごそっか」
「せっかく恋人になったんだし……そうじゃなくても、会いたい。一ヶ月も会えないなんて私、ぜったい耐えられないよ」
「それに、別に恋人だからーって特別なことをしなくたって、いつも通りでいいんだよ。一緒にいて、お話して、ゲームして……それで私は満足」
「でも、せんぱいがどーしても私と一緒にどこかにお出かけしたいーっていうなら、やぶさかではないかなー」
「ちなみに、ハグ以上のことをするのはー……まあ、おいおい?」
「そーゆーのは、焦ってするようなことでもないじゃん。それに、せんぱいがどこか他のところに行っちゃうことはあるかもだけどさ、私は……どこにも行ったりしないから」
「……まー、そういうわけだから。改めまして、これからはずっと一緒にいて、ずっと私のこと、見ててよね。せんぱい」
あなただけに懐いているダウナー後輩と、放課後愛してるゲーム 大宮コウ @hane007
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