4.愛してるゲームⅡ(左耳)

//右から、普通の距離で


「じゃあ、お次は左のお耳を攻めちゃうね。ずっと同じ場所からやってると、せんぱいも慣れてきちゃうだろうし。それじゃあつまんないよね。せっかくのゲームなんだから、楽しまないと」


//左に移動しながら

「よいしょ……っと」


「では、左耳、失礼するね……ふーっ」//耳に息を吹きかける


(先輩、想定していたので耐える)


「む、流石に同じ手は効かないか。やるねせんぱい」


「なら、これはどうかな? ……あーむっ」//耳を噛む音


(先輩、びっくりしておもわず動く)

(後輩も、びっくりした先輩の動作に驚いてちょっと離れる)


「ひゃっ……、ご、ごめん。そこまで驚くとは思わなかった」


「う、うん。いまのはさすがに、なしってことでいいよ。事故みたいなものだし、それに、これで終わっちゃったらつまんないもん」


「でも、驚かすのは成功したみたいでよかったー。これで無反応だったら、せんぱいの神経が繋がっているところから怪しまなきゃいけないとこだし」


(先輩、どこでこういうこと知ってくるの……と疲弊しながら聞く)


「あ、こういうの、どこで知ったのか気になる? それはまあ……ネットとか、漫画とか? 色々だよ。色々」


//いたずらっぽく


「……もしかして先輩、私がそういう、えっちいのを一度も見たことがない、ぴゅあっぴゅあな子だと思ってた?」


「だったらごめんね。というかいまどき、純粋無垢な子なんていないよ。ざんねんでしたー」


//恐る恐る


「それとも……せんぱいはさ、そういう子の方が、私よりも好きだったりする?」


(先輩、後輩みたいな子の方が断然好きだと返す)


「……ふぅん。そうですか。私の方がいいんだ。えへへ……それなら、よかったね。せんぱいの理想の女の子が、こんなに近くにいて。私もそういう、せんぱいの素直なところ、好きだなー」


「でも、あんまり好きだ好きだと言っているのは、なんだか軽く聞こえてきちゃうよね」


「だから私、いまから心を鬼にします」


「せんぱいのことが好きなのと同じくらい、嫌だなーって部分はあるんだから。せっかくの機会だし、言わせて貰うよ」


//囁き声で


「私ね、せんぱいのこと、ずっと嫌いだなーって、思ってたの。知らなかったよね。驚いた?」


「でも、ほんとだよ。私、せんぱいのことが嫌い」


「嫌い。嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。大嫌い、大嫌い」


「他の人と話してるせんぱいが嫌い。毎日私のところに来てくれないせんぱいが嫌い。私からの連絡にすぐに返信しないせんぱいが嫌い」


「私の知らない場所で、私の知らない人たちと、私の知らない時間を過ごしてるせんぱいが嫌い」


「昼休みも放課後でも、なんでもない顔で、いつも私の前からいなくなっちゃうせんぱいが嫌い」


「もう来てくれないんじゃないかって思う私の気も知らないで、帰っちゃうせんぱいが嫌い」


「私になんでもないみたいに優しくするせんぱいが嫌い。下心のあるせんぱいが嫌い。それをいままで見せてくれなかったせんぱいも、大嫌い」


//穏やかな声で


「でも、そんなせんぱいが私……好きだよ」


「何度も嫌な気持ちになっても、嫌いになりきれない。せんぱいと話すと嬉しくなって、嫌な気持ちなんてなかったみたいに忘れちゃう。また明日って言われるだけで、憂鬱な次の日が待ち遠しくなっちゃう」


「私、せんぱいのこと、好きなんだよ。たぶんせんぱいが思っているよりも、ずっとずっと」


//SE:少し離れる


「……せんぱいもさ、ずいぶん我慢強いよね。そんなに私とお付き合いしたいの? これまでの関係じゃ、満足できないの? 私には、わかんないや」


「それとも、せんぱいは本当に私のことが好きなのかな?」


「大好きな女の子の部屋で、こんな風にくっついて、好き好き言われて。年頃の男の子なら、こういうときに、我慢できるものじゃないでしょ? でも、せんぱいは何もしてこないなんて……逆に怪しい。恋心を疑うには十分過ぎるよ」


//わざとらしく


「せんぱいは口だけの人なのかなー。どうなんだろうなー」


(先輩、何か行動しそうになるけど、グッと堪える)


「ふふ。なんて、引っかかりませんよね。流石はせんぱい。手強いですね」


//不安そうな声で


「……ねえ、せんぱいはさ……もし、私と付き合えなくってもさ、これまでみたいに、お話してくれる? 他の子のとこに行っちゃったりしない?」


(先輩、肯定しようとするが、それよりも先に後輩は言葉を続ける)


「……ごめん、せんぱい。私、悪い子だ。せんぱいが嫌だって、しないって言うような人じゃないってこと、わかってて聞いた。これじゃ他の人のこと、嘘つき呼ばわりできないや」


(先輩、そんな後輩も別に嫌いじゃないしむしろ好きだ、と返す)


「……でも、せんぱいは、そんな私も好きなんだ。ふふ、せんぱいは物好きなひとだね」


「でもね、せんぱいがうれしいことを言ってくれても、手心は加えてあげたりしないよ。ゲームはゲーム、勝負は勝負だから。ね?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る