3.愛してるゲームⅠ(右耳)

「じゃあせんぱい、肩、失礼するね……っと」


//SE:肩に触れる音


「ん? なーに? 近い?」


「そんなの私とせんぱいの仲だし、今更じゃん。ゲームしてるときに、隣でやったりとかさ。それとも、いままでずっと意識してたってこと? ……ふーん。そうなんだ」


「まあ、これから色々するけどさ、全部ゲームのルールの範囲ということで。大人しく、されるがままでいてね」


「あ、話すのは別にいいよ。私も先輩とお話しするの、好きだし。うん、ライフワークと言ってもいいかも。なにせ基本、保健室の先生と、お母さんと、それからせんぱいとしか話さない生活だし。これからどうなるかは、せんぱい次第だけどね?」


「事前の確認はいいよね? じゃあ、早速……ふーっ」


//後輩、耳に息を吹きかける

(先輩、体をびくりと震わせる)

//悪戯っぽく


「んふふ、せんぱい、びくってした。奇襲、大成功だ」


「せんぱい、おみみ弱いんだ。意外な弱点、発見だ。これじゃー先が思いやられるなー」


(先輩、愛してるゲームは囁くゲームだと言ってきたのに、卑怯ではないかと抗議する)


「え、ずるくないかって? 愛してるゲームなら、愛してるって言うだけじゃないのかといわれると……まあ、一理あるかも。でも、ずるくはありません。なにせ今日は私がルールだよ。私がゲームマスターだから、当然の権利です」


//囁き声で


「それに、お耳の弱いせんぱいのこと、私……好き、ですよ」


(不意打ちに、再び反応する先輩)

//後輩、先輩から少し離れて、愉快げに


「いまのは嘘じゃないよ。うん、私、このゲーム中には嘘、つかないから。約束する。そんなことしたら、私が嫌いな人たちと、おんなじになっちゃうよ」


「だからね、せんぱい。私がゲームの間に話す言葉は、本心だから。まあ、少しは……ゲームのエッセンスとして、ちょっとだけ過剰に言ったりするかもしれないけど。そこはご愛敬で」


//熱っぽく囁き


「私、せんぱいのこと、好きだよ」


「せんぱいの好きと一緒じゃないかもしれないけど。それでも、好き」


「私も、せんぱいのことが好き。大好き」


「好き、好き、好き……何度好きって言っても言い足りないくらい、好きだよ」


「ずっとずっと、せんぱいが側にいてくれることに、感謝してた。せんぱいは、気づいてないかも知れないけど」


「だからこれも、私からのささやかな恩返しだと思って、聞いていてね」


「好きだよせんぱい。好き、好き、せんぱい大好き」


「私と一緒にいてくれるせんぱいが好き。私のことを気に掛けてくれるせんぱいが好き」


「大好きなせんぱいと、ずっと話していたい。大好きなせんぱいと、ずっと一緒にいたい」


「せんぱいだけいればいい。せんぱい以外いらない」


//SE:離れる音

//冷静に分析するような声で


「ううん……せんぱいのことはちょろいと思っていましたけど、中々手強いね。まだせんぱいからなにもされてないとは、予想外だ」


(先輩、後輩の台詞の温度差に対して、え、いまの演技だったの!?と驚く)


「あ、ちなみにいまのは私なりに、気持ちの重たい女の子をイメージして演技したんだ。どう? なかなかそれっぽかったでしょ」


「嘘は言ってないし、これも味付けの範囲内」


「実は私、せんぱいのことが意外と好きなんだよ。知らなかった?」//いたずらっぽく


「でも、人に好きって言うの、なんだか楽しくなってくるね。世のバカップルと呼ばれてる方々が、どうして日夜節操もなく好き好き言うのか、少しだけ理解できた気がするよ。まあ、私達はそういう関係じゃあないけどね」


(先輩、照れ隠しも含めて、こういうことを他の誰かにしてるのか聞く)


「……え、他の人にもしたことあるのか、って……もしかしてせんぱい、心配してくれてる? それとも、いるかもわからない相手に嫉妬しているの? まだお付き合いもしてないのに?」


//後輩、ふかーく溜息


「私がせんぱい以外に話すような相手がいないって、せんぱいが一番良く分かってるでしょ。やれやれだね、せんぱいはもう、まったくだ」


「でも、せんぱいもけっこうかわいいところ、あるんだね。いいんだよ、誤魔化さなくって」


「……私だって、せんぱいが保健室に来ていない間、他の人たちと一緒に授業受けたり、話したり、遊んだりしてるんだろうなーって思ったりもするし。お互い様だよ」


「安心して。せんぱいにだけ、特別だよ。よかったねー、せんぱい」//耳元でからかうように囁く


//囁くけど、声音は普通に


「にしてもさ、せんぱいは私のことが好き……なんだね」


「だったらさ、うれしいよね。こうして大好きな後輩に、こんなに近い距離で好きっていっぱい耳元で囁かれて、頭おかしくなっちゃうくらいだよね」


//少しだけ演技がかった囁き声で


「好き、好き、好き好き好き、大好き。私も、せんぱいのこと、大好きだよ」


「だからせんぱい、がんばって、まけないで」


「私が大好きなひとを、大好きなままでいさせてね、せんぱい」

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