一気読み推奨! 謎と不思議に挑む作家の冒険を追体験
- ★★★ Excellent!!!
禍魔の仮面という物がある。
主人公は小説家という事もあり、今までの知識と新たな情報で好奇心を刺激されていく過程がまず描かれるのだけど、本当にそういう伝承や面が存在するのかと思って検索してしまった読者がここに一人。それぐらい「本当にありそう」と思ってしまった程のリアリティある作りこまれた設定が語られ、これはもう主人公じゃなくても好奇心が疼くはず。気になるな、その仮面!
すると嬉しい事に主人公が好奇心に導かれるままに、その仮面について調べに行くではありませんか。これはもう読者としてもワクワクで、素直にページを繰ってついていくわけですよ。
すると突然の事故、暗転、そして……。
不思議な方法ではあったが、なんとか目的地についた主人公。しかしそこは他とは隔絶された文化を持つ村だった。近々行われるというカーニバル、月の目が開くと世界が滅びるという伝承、小鬼と四人の友達。支離滅裂なようで何処か統一感がある、不思議な世界観。
怒涛の如く謎と不思議が溢れかえり、押し流されそうになりながら、主人公にしがみつくように読み進めていく羽目に。話が進みそうな気配がするたびに道がかき消える感じが、走ってるつもりなのに走れていないのと同じ感覚で、もどかしい気がするのに気にならない。全くストレスがない。気付けばバンバン読んでました。
最後の種明かしに、ああ! と膝を叩くと同時に、あの不思議なもどかしさの感覚の理由も同時にわかる。これは、主人公が体験していることを読者も体験したんだなと。
読まないとこの不思議な読書感覚が共有できないのも中々もどかしい。不条理フィクションめいたファンタジーの雰囲気をまといつつ、しっかりミステリ。