禍魔の仮面という物がある。
主人公は小説家という事もあり、今までの知識と新たな情報で好奇心を刺激されていく過程がまず描かれるのだけど、本当にそういう伝承や面が存在するのかと思って検索してしまった読者がここに一人。それぐらい「本当にありそう」と思ってしまった程のリアリティある作りこまれた設定が語られ、これはもう主人公じゃなくても好奇心が疼くはず。気になるな、その仮面!
すると嬉しい事に主人公が好奇心に導かれるままに、その仮面について調べに行くではありませんか。これはもう読者としてもワクワクで、素直にページを繰ってついていくわけですよ。
すると突然の事故、暗転、そして……。
不思議な方法ではあったが、なんとか目的地についた主人公。しかしそこは他とは隔絶された文化を持つ村だった。近々行われるというカーニバル、月の目が開くと世界が滅びるという伝承、小鬼と四人の友達。支離滅裂なようで何処か統一感がある、不思議な世界観。
怒涛の如く謎と不思議が溢れかえり、押し流されそうになりながら、主人公にしがみつくように読み進めていく羽目に。話が進みそうな気配がするたびに道がかき消える感じが、走ってるつもりなのに走れていないのと同じ感覚で、もどかしい気がするのに気にならない。全くストレスがない。気付けばバンバン読んでました。
最後の種明かしに、ああ! と膝を叩くと同時に、あの不思議なもどかしさの感覚の理由も同時にわかる。これは、主人公が体験していることを読者も体験したんだなと。
読まないとこの不思議な読書感覚が共有できないのも中々もどかしい。不条理フィクションめいたファンタジーの雰囲気をまといつつ、しっかりミステリ。
民俗系推理作家である主人公は「禍魔の仮面」という呪物を調べに長野へと向かう。しかし乗っていたバスが事故に遭い、おかしな村へと辿り着いてしまう。
迷い込んだ村は、民俗学的な視点だけでは解釈ができないほどに不思議なことで満たされています。次々と遭遇する奇妙な出来事、概念。
読者である私も、不穏な濃霧の中にいるような心地になりました。
しかし、違和感を覚え、手探りしながら物語を進んでいくうちに、全ては朧気に繋がり始めるのです。
謎はたくさん、丁寧に提示されます。そして、最後に余すことなく解決されます。
ファンタジー小説のようにも思える世界観ですが、数々の伏線が綺麗に回収され、全ての真相が明らかになる衝撃とスッキリは、まさしくミステリーです!
本当はもっとたくさんのオススメポイントを挙げたいのですが、ちょっとした一言がネタバレになってしまいそうで書けません。
ぜひ、ご自身でお確かめください。安心してこの面白さに飛び込んでください。
最後の最後まで味わい尽くしてほしい作品です!
禍魔(まがつま)の仮面。それは夢を固めるお面。かのお面に興味を持った小説家飯田太朗はその面があるという長野県にフィールドワークと称して赴くことになる。
そこで出会う怪異、頭痛、そして謎の子鬼に演奏師。悪夢のような時間を過ごした結果彼が導き出した真実とは──!
こちらの作品はミステリー小説ですが、王道のミステリーとは少し変わった作風です。摩訶不思議な出来事が次々と起こり、村人達の言動もフワフワしていていまいち要領を得ない。おまけに四人の子鬼を探して殺せと言われ武器まで持たされる始末。
殺人事件が起きて、探偵が謎解きをする展開を期待して読み始めたミステリー好き読者さんは、最初はちょっと読みにくいなと感じるところもあるかもしれません。
だけどそこで読み止めてしまうのは勿体ない!数々の名作ミステリーを書かれているこの作家さんの実力は私が保証します!
序盤から出された数々のヒントが中盤から少しずつ繋がっていき、なんとなく事件の全貌がぼんやりと見えてきます。この作家さんは謎解きに必要な情報をしっかりと提示してくれますし、本編の中でも度々飯田先生が状況と情報を整理してくれるのでしっかり読んでいれば正解にたどり着くことができます。
演奏師とは何か、子鬼とは何か。禍魔の仮面とは何か。その意味がわかるにつれてどんどん面白くなっていきます。
ラストの謎解きも最高でした!大体こんな感じかなと予想して謎解きパートを読みましたが、ラストに(良い意味で)意外な結末が待っていて大変面白かったです!!そう来たかー!!最後の最後にすべてが繋がって、大変スッキリとした読了感でした。
一見すると幻想小説のようですが、中身はしっかりした本格ミステリー!不思議な世界に浸りながら謎を解いていくカタルシスをぜひ堪能して頂きたいと思います。
本作の主人公は小説家・飯田太朗。
作者自身の名を冠した彼が、『禍魔の仮面』と呼ばれる呪物を求めて出かけた道中でバス事故に遭い、謎の村に迷い込むところから物語は幕を開けます。
この村が、とにかく変。村じゅうの時計が特殊仕様だったり、村人に話しかけても常識を逸脱したリアクションが返ってきたり、宿では毎回おなじ食事が出されたり。
「月の目が開く」ことを極端に恐れる村人から、「4人の小鬼」を殺すようにと言われたり……
倫理観が根底から違う文化は、それだけで恐ろしい。だけど、どこか魅力的でもあります。
序盤から描き出される幻想的な村の様子は、どこをどう切り取っても理解不能、だけど何とも意味深で、それぞれが何を表すものなのかと考察魂を揺さぶります。
飯田先生は何に巻き込まれているのか?
4人の小鬼とは誰のことなのか?
そもそも、この村はいったい何なのか?
読み始めたら止まらなくなること請け合いです。
巧妙に張り巡らされた伏線に導かれ、全ての謎が解ける時、『禍魔の仮面』の真の恐ろしさが分かるでしょう。
そして事件の真相には、創作者にとっては痛いほど理解できることが隠されています。
ぜひあなたの目で、全てを確認してください!