導き手
俺様の心に無駄に傷を付けただけの楽しい百合園会は終わり、一夜明けて早速勇者召喚の儀の当日である。突貫スケジュールにも程がある。
しかしその前に、パーティメンバーが一人合流するとのこと。
まだ選定中だと思っていたが誰だろうか、という疑問はすぐに解消された。
勇者召喚にはある程度のお約束がある。
それは必ず当代の千里眼の魔女が魔王復活を告げることであったり、本物の聖女が生まれることであったりする。
その中でも分かり易い存在が
ハイエルフというほぼ絶滅したとされる種族の数少ない生き残りである彼女は、その長い寿命を全て魔王封印にかけているとされている。
最低でも過去5回の魔王封印に同行し、ある程度まで勇者を導くと姿を消すミステリアスな女性。
その美貌は陰ることなく永遠に美しい……みたいな話だったんだがなぁ……。
「レラ。魔王復活を聞いてきた。今代の勇者は何処に」
「レラ様、勇者召喚はこれからです」
「そう。待つ」
コミュニケーション能力が終わってんなコイツ。
姫様は召喚の儀の召喚する側としての準備があるから俺様に相手を任せてきたが、このクソコミュ障と二人きりとかきつすぎる。
コミュ障だろうがなんだろうが経験豊富なのは間違いがないし生きる伝説として無碍な扱いもできないからとハーレムパーティ控室に通されたようだがぱっと見無愛想なガキだ。
ハイエルフという生き物は本当に時が止まっているようで最低1000年は生きている筈なのに外見年齢は12〜14くらいか、俺様の銀髪とは異なり完全な白髪だがその瞳は森のように複雑な色をしている。
なんというか、こいつ俺様とちょっとキャラが被ってる。種族的に仕方ないのか性を感じさせないシュッとした……率直に言うと色気のねぇまな板体型をしたショートヘアの女はどう見ても合法ロリ枠だからだ。
ツルペタロリ枠が二人いる勇者パーティとかなんかやだぞ俺様は。勇者が変態にしか見えなくなる。
今の勇者パーティ、金髪碧眼平均体型姫様と銀髪金眼男の娘聖女と白髪緑眼合法ロリって乳がたんねーぞ巨乳枠連れてこい。ちなみに俺様は尻派。
「先に言っておく。レラは勇者が誰か一人を選んだら離脱する」
「……、はい?」
「勇者がレラの夫に相応しいか旅の途中で見極めていく」
「えっと」
「
完全に婚活じゃねーかっ!!!!!
何が導き手だよ!男漁りに来てんじゃねーよ!!!てかこいつ過去5回の魔王封印に同行してまだ未婚ってことは完全に負けヒロインじゃねーか!!!
1000年もそんだけ拗らせてりゃそらハイエルフも滅ぶわアホ!
世間はこんなバカ女を持て囃してるのか……?伝説ってそんな矮小なものだったのか……?
教会史を知った時以来の脱力と衝撃に乾いた笑い声しか出ない。
「え、えっと、レラ様は魔王封印に興味は……」
「アレはレラに出来ることはない。勇者の仕事。道中の露払いなら手伝ってきたが夫以外に協力する所以は無い」
「わぁ……」
幼い頃僅かな時間とはいえ勇者の魔王封印の旅に心躍らせた愚かで愛おしい俺様よさようなら。
この世はクソだ。
何度目か解らないが世界の真理に触れてしまった俺様が呆然とバカ女を見ていたからか、こちらに興味を持ってしまったのかとんでもないことを言い出した。
「お前」
「ユールです」
「ユールは本物ではないのに聖女を名乗るのか」
とことん厄ネタだぞこの女。
どうする?俺様はギアススクロールの契約で一切情報を漏らすことが出来ないから偽聖女だと明かすことは論外だ。
でもこの女、恐らく本物の聖女を何人も見てきている。下手な誤魔化しは通用しないだろう。
「、確かに私は力不足ですが、この魔王封印の旅にて己の役目を全うする覚悟があります」
「……そう。別に良い。もはやアレは聖女にどうにか出来るものではないし
なんか意味深なこと言うのやめてくんねーかな???
重要な情報だと思うが、
後々必要になりそうな情報を俺様にだけ渡すのはやめてくれ。頭脳労働担当に言ってくれよ頼むから。
あとこいつ、姫様の前で偽聖女だとバラさないだろうか……。教会が擁立している聖女の半数以上が偽物なのはバレていると思うが魔王復活の年の聖女が偽物なのは史上初らしいから流石に国も疑っていない筈だ。
バラされたら色々終わる。
「その、この事は姫様には……」
「いい。レラは勇者の事だけを気にする」
クソボケ婚活女で良かったなんて思う日が来るとはな……人生何があるか分からないものだ。
代行聖女(男)は勇者パーティに男バレしてはならない ロロノレ @wanankoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。代行聖女(男)は勇者パーティに男バレしてはならないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます