聖女代行
俺様の人生のターニングポイントは間違いなく4年前にあった。
スラム街のクソカス以下のゲロだった俺様は俺様の持つモノの中で最も
できるだけ条件が良い方がいい。
肉体を傷つけるような趣味を持っていたり特定の年齢以下にしか興味がないのは駄目だ。
欠損したやつは生きられないのを
金持ちであることは第一条件だができれば女がいい。
理想を言えば貴族の女主人で家庭が冷え切ってて婿入りしてきた旦那は若い女に逃げて子供も居ないような家の養子になりたい。俺様の今の美貌からして間違いなく大人になっても美しいだろうから、卑しい血であっても顔だけで引っかかるバカ女は居るだろうからそいつのとこに婿入りか嫁にとって仕事は丸投げして生きるのが最終目標だ。
まずその理想の成り上がりの第一歩の為にどうやって貴族に拾われるか考えていた。
男にしては長く伸ばした髪は念入りに汚してあるが、髪に隠れた顔は最低限ちゃんと見れるように気を使っている。資産価値のあるものを俺様は大切にするので。
その日もいつも通り表通りの喧騒が聞こえてくる程度の距離を取りながらも腹をすかしていた。
「君」
「……あ?」
妙に小綺麗な格好をした男に突然声をかけられた。
人攫いかもしれないから逃げる体勢に入ろうとしたが、気がつけば周りを囲まれていた。
白いローブに刻まれた白百合の刺繍は金と権威をわかりやすく示している。そのシンボルが何を示すのか学が無い俺様でも知っている。
「聖女教会が何の用だよ」
「ちょっと失礼」
「あ゙!?」
いきなり人様の顔を掴んできたと思ったら、前髪をかき分けて顔をガン見してきやがった。
何ジロジロ見てんだよ金取るぞ。
「処女か?」
「死ね」
顔面に唾を吐きかけて無理矢理拘束から抜け出した。
いたいけな美少年捕まえて何いってんだこいつ。
「はいかいいえでいいから答えてくれ」
「金払え」
「とりあえず金貨でいいかな?」
無造作に渡された金貨にビビる。何コイツラ頭イカれてんのか?
ドン引きするこちらを気にせずに再度一歩詰めてくるオッサン。
「で、処女かね?」
本当に最悪の大人だった。
でも、そのお陰で莫大な金が手に入ると思えばいい出会だったかもしれない。
次の日からドブの底を這いずり回る生活からオサラバして教会に連れて行かれた。
代行聖女とかいう厄ネタを引き受けたのはとにかく金と教育を受けられるということがあったためだ。
しかも代行期間が終わったあと還俗する際にその後の生活の斡旋をしてくれるという。
一般家庭なら家が建つ位にバカ高いギアススクロールで俺様は聖女教会で知った秘密を他言しないことを約束し、聖女教会は俺様の給金とその後の人生の保証について約束した。
偽聖女としてまずしたのは外見を磨き上げることだった。生まれて初めての湯船やら謎の美容にいい液体やらで薄汚れたドブネズミがあっという間に白鳥になった。美しさに自覚と自信はあったが短期間でまさかここまで見れるようになるとは流石に驚いた。
その後栄養状態の回復を待って肉付きがましになったタイミングで成長抑止の神器を与えられた。
成長抑止の神器なんて大層な名前で呼ばれているがその形状としては直球で表現すると貞操帯としか言えない。
この時点である程度聖女教会の歴史について学んでいた俺様はこの教会は変態しか居ないのかと静かに絶望した。
しかし見た目は最悪でも効果は本物で、
勿論成長期の身体を無理矢理成長抑止するということは肉体に負担があるとのことで、そのために任期は限界の5年とされた。
神器を外したタイミングで一気に成長痛が襲ってくるらしいので外すときは気をつけるように注意されている。
この神器をつけてお飾り聖女として民衆にニコニコしてやって、効果は大して無い見せ技の聖属性をちらつかせる生活を5年するだけで一生の稼ぎになる。衣食住すべて保証されてボロい商売だとほくそ笑んでいたら、まさかの魔王復活。
当代聖女として召喚勇者のハーレムパーティ入りとか聞いてないんだが????
俺様に国からの招集を伝えてきた
「おいテメェ、今なんつった?」
「聖女ユールに、勇者パーティ入りの打診が来ています」
「俺様は確かに美しいが、本物の聖女じゃねぇことを忘れたのか?そもそも魔王復活なんてしたなら本物が湧いてるはずだろ」
「本物の聖女は確かに見つかりました。……ただ、その、御年7歳でして」
「ガキじゃねーかっ!!!!!」
流石に7歳の糞ガキに聖女やれなんていえないのか思ったより真っ当だなぁ!?でも代役が俺様ってのもいかれてんだよ!俺様ができることといったら最低限の野良ヒーラーレベルの回復とエフェクトだけ派手な特に何も起きない奇跡(笑)だけだぞ。顔はいいが顔だけだ。そんなやつ勇者パーティに入れるくらいなら野良のベテランヒーラー入れた方が圧倒的にマシだろうが。
「勇者パーティには聖女がお約束なので……」
「お約束で殺す気か!」
「もちろん護衛はつけます。聖女ユールにはいつものようにそれっぽく振る舞っていただければ」
「お前結構俺様のこと馬鹿にしてるよな」
クソ、11歳の頃から碌に成長していない肉体が憎い。きちんと成長してればこいつをボコボコにしてやれたのに。
「そして、もう王家から移動用の馬車も着いていまして」
「死ね!!!」
逃げ場も何もない俺様は哀れにも王家に招集されましたとさ。カス。
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