姫の自室
美少女とふたりっきり(護衛除く)のシチュエーションでなんでこんな盛り下がるんだろうなぁ。
ゴーレム姫は俺様にソファを勧めると歓迎のため手づから紅茶を入れてくださった。今日も人間パフォーマンスがお上手なこって。
「聖女ユール……いえ、これから苦楽を共にする仲間としては余所余所しい呼び方ですね。ユール、とお名前で呼んでもよろしいでしょうか?」
「まぁ!ありがとうございます姫様、とても嬉しいですわ」
「ありがとう、ユール。貴女もどうか私をメリルローズとお呼びになって」
「メリルローズ様……、何だか呼び方が変わるだけでぐっと距離が近くなった気がしますわ」
おほほ、うふふ、と美少女二人で秘密の花園してやってる。相変わらずつまんねー女だ。
俺様の女言葉も板に付いたもんだ。最初の頃は死ぬ程矯正されたからな、咄嗟に出る言葉も女言葉になるようにわざと驚かされたり抜き打ち検査を徹底的にやられた。
免許皆伝もらうまで男言葉使う事が出来なかったから、皆伝された途端反動で更に口が悪くなったような気もするが。
聖女やめた後女言葉が直らなかったらオカマになっちまうからキチンと切り替えているつもりだが、骨身に沁みた癖は簡単に直せないかもしれないので今から気が重い。
「ユールは救世の旅についてどの程度の知識をお持ち?」
「そうですね……、不勉強で申し訳ないのですが一般的な知識程度しかございません」
「聖女としての仕事で忙しいので仕方有りませんわ。では簡単に説明させていただきますね」
「よろしくお願いします」
薄皮1枚隔てたような当たり障りない会話をしておしまいだと思っていたが、思ったより実のある時間になりそうでゴーレム姫に意識を向けた。
実際詰め込みが完了して人前に出られるようになってからは、聖女としての巡業とかであちこち移動しっぱなしだったので知識が偏っている自覚がある。報酬については来る前に死ぬ気で聞き出してきたので人より詳しい自信があるんだがな。
「救世の旅ですが、必ずハーレムパーティになる理由があります。明日召喚される勇者様もそうですが、一方的な召喚のため元の世界に返すことができません」
「まぁ……」
最悪だなその召喚。
俺様がされた勇者の立場なら絶対にキレるし逆に人間滅ぼしてやろうかって気になるぞ。
「そのため勇者様にせめてもの償いをということで見目麗しい適齢期の女子をパーティメンバーとして苦楽を共にさせ、恋愛関係に持ち込む事が目標です。この世界に根付いていいと思わせる事がパーティメンバーの役目と言えるでしょう」
「随分と、その……」
「下世話な話しで申し訳ありませんわ。それでも魔王はこの世界の人間では封印することが出来ず、異世界の勇者様に頼るしか無いのです。封印失敗の悲劇を再度起こさないためにも私達の最も重要な仕事は勇者様のモチベーション維持です」
勇者パーティに勇者以外にも一人男がいまーす、なんて言ったらこの女がどんな反応するのか見てみたいわ。
おいおいますますやべーんだが。これもし勇者の好みのタイプが銀髪金眼スレンダー美少女だったらどうするんだよ。俺様に惚れられても困るしそもそも今の姿は期限付きだ。
俺様のあまりの美しさに勇者が男色に目覚める可能性もあるが俺様がお断りだぞ。こちとらもうある程度目ぼしい
「過去の勇者の好みの傾向から、
「け、健康的でいいと思うのですが……」
「聖女として貞淑に生きてきた貴女には知り得ない世界かもしれませんが、今のうちにある程度勉強をしておきましょうという意味で招かせて頂きましたわ」
わ、わぁ……。今すぐ聖女辞める方法とかありませんかね……。
てか生まれからしてそーゆー話しはかなり詳しいぞ多分。最悪そっちも就職先に視野に入れてた時期があったしな。女を誑し込む術を磨くためにプロヒモの話聞いてついでにおこぼれ貰ってたし。
「他のパーティメンバーも属性違いを基準に選んでいる最中ですので勇者様の好みが余程偏っていなければ大丈夫だとは思いますが……。もし外見で誰も気に入られなかった場合、心を掌握するしか無いので男心を学んでいきましょう」
俺様はパーティメンバーの誰よりも男心に詳しい自信あるから今すぐ帰っていいかな???
なんて思いつつも内心がどれだけ死んでいても帰るすべはないし俺様は聖女なのでキチンと仕事は全うした。
世の中の女への不信感が上がった。
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