第二賞 第三話ライバルと結果
「喰わねば!喰わねば! 」
矢崎はテーブルの肉を貪り喰う。
「止めてくださいよ矢崎さん! 」
「はぁこんなのが私達の担当だと思うと恥ずかしいわ、まったく。」
二人はそんな矢崎にあきれ、自分の担当がこんな人だとはばれないか心配になっていた。
「極貧時代が無いからそんな事言えるんですよ~ 無一文になったことありますか? なったら分かりますよ。」
「成りたくないわよまったく。」
そんな風に夢咲が呆れていてると前から銀髪の男性がやってくる。
「相変わらず凄い食欲やのー矢崎。」
「ゲッ白倉!なんであんたがここにいるんですか?」
「なんでって同じ会社の上司に向かってなんだその態度は!?」
白倉は部下に忘れられたことを怒り、ヘッドチョークをかけた。
「ギブ! ギブ! そうでした! つい昔の癖で!」
「昔の癖?」
夢咲はそう言えば矢崎の昔の事は知らないなと思い問いかける。
「えぇ、白倉とは昔はライバルでしてそりゃあもうバチバチでしたよ~」
「誰がライバルや!お前なんかわしにとってはミジンコじゃ!」
「何をー!? ミジンコパワー見せてやりましょうか!?」
二人は取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。
「やれやれ相変わらず矢崎さんは元気っすねー」
「そうね。ってあなた誰!?」
夢咲はいつの間にか隣にいた女性に驚く。
「やだなー、忘れたんすか?一緒に働いた仲じゃないっすか、メイド服じゃないから分からないんすか?」
「あぁー! 椿さんとこのメイドさん!」
猪瀬は見たことがある顔だったがメイド服という単語で完全に思い出す。
「そうっす。椿店長の店で働かせて貰ってます、柳七緒っす。以後お見知り置きを。」
柳は手を差し出す。。
「えぇ、私は夢咲よろしく。」
夢咲は手を握りかえす。
「俺は」
「知ってますよ猪瀬さんっすよね?店長がよく言ってますから? 」
「よく言ってるって変なこと? 」
猪瀬は今までの矢崎さんとの色々の事を思い出し、自分も変人扱いされてないか心配する。
「大丈夫っすよ。面白い人ってだけですから。」
「大丈夫じゃないんですが!? もう矢崎さんから変えて貰おうかな。」
猪瀬は自分を面白い人認定されていることにショックを受けた。
「ならわしが受け持ったるで! 」
「こら!人の作家横取りしようとするな! この白髪じいさん!」
「誰が爺さんじゃい! まだわしは30じゃ!」
「30はもう立派な爺さんですよーだ!」
二人はまた言い争いを始めてしまう。
「やれやれ。本当に変えて貰おうかしらね猪瀬?」
「ハハ」
夢咲は呆れ、猪瀬は乾いた笑いをあげることしか出来なかった。
そんな中突然電気が落ちる。
「おっ、はじまるみたいっすね。」
「そうね。まぁ、三冠でしょうけど。」
そういいながらも夢咲の手は震えている。
猪瀬も緊張しながら発表を待つ。
「えー長らくお待たせしました。今回も様々な作家さんからの応募を頂き、ありがとうございます。本当ならここで面白い話なんかを出来ればいいのでしょうが私にはそんなボキャブラリーは無いので早速発表へと移りたいと思います。」
「まずは最優秀からの発表です。ですが今回はダブル受賞となりました。」
多くの作家達は困惑する。
ダブル受賞は珍しく、本来なら様々な作家をノミネートすべく分けられる。
それだけその小説が強すぎると思い作家達は緊張する。
「最優秀と読者賞は柳七緒さんで『異世界メイド』です! ダブル受賞はアイルさん以来となります!おめでとう!」
会場から拍手が起こる。
「やったっす!」
柳は嬉しさのあまりジャンプする。
「クッ! まだあるわ!」
「あぁ!」
夢咲は手を合わせ祈る。
最後は編集長賞。これにノミネートされなければコンビは解散。
二人は大いに緊張する。
「編集長賞の発表です。今回は優秀な作品が多く迷いました。今回は将来性があるとして夢咲優也の『不思議の地下』に決定しました!」
「「将来性...」」
二人は賞を取るには取ったが納得は出来なかった。将来性、それはつまり今は無題には勝てないということに他ならない。
「二人ともやりましたね!」
矢崎は二人に抱きかかる。
「これって姫野に認めて貰えるのかしら?」
「あぁ、そうだな。結果的には柳さんに完敗だし...」
二人は大いに落ち込む。
「認めますよ。」
そんな中聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「姫野先生!?なんでここに!? 」
「なんでもなにも私も関係者ですし、呼ばれますよ。」
「そりゃそうね。それで認めてくれるって!?」
「えぇ、認めます。あの編集長が将来性を認めたなら文句はありません。」
「えぇー私の話は信用しなかったのに!?」
「「「矢崎さんだしね。」」」
「もーなんでですか! 」
周りに大爆笑が起きる。
「おめでとうございますっす!あの編集長さんに認められるなんて凄いっす! 」
「こっちこそおめでとう。ほら夢咲も」
「おめでとう。でも次は負けないわ! 」
「こっちも負ける気無いっすよ! 」
「ここに新たなライバル誕生ですか。」
姫野は羨ましそうな顔で三人をみる。
「お疲れ様でした編集長。」
「おうありがとよ。」
矢崎はビールを編集長に渡す。
「本当は柳さんを選びたかったんでしょ? 」
「…そんなまさか。」
「編集長私との仲でしょ?教えてください。」
「俺がそんなに優しく見えるかよ。」
編集長は歩いて消える。
「真実は闇の中か...」
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