人生に幕間はなく、河もまた絶えず流れゆく

祝福に包まれた前作のラストから、ほんの少し時が流れ、年も明け、各々の新しい生活が始まっています。

それは奇縁ではなく、運命の導きでした。巡り逢った若き男女は、周囲の親友親類を巻き込んで、巻き込まれて、約十年の歳月を越えて、契ります。

翼も心も粉々に砕けた時期もあった。しかし、二度と治らない翼も、癒やされず回復しない弱い心もなかった。困難と不運を乗り越えて、ここに居ます。心優しく、少しお節介な親友も変わらぬ笑顔と素顔を見せてくれます。

旧知の読者にとっては、懐かしい面々との再会です。和やかな同窓会のよう。ただし、時に同窓会は波瀾の始まりになることもあります。悲しい報せを耳にして嘆くこともありましょう。

人生という模様は決して鮮やかな、好みの色だけで描かれてることはないのです。悲喜交々、禍福も交々。深山の向こうに草原が広がり、その果てに深い谷があります。

大河は流れ流れて、景観をどう変え、また、どんな風景を見せてくれるのでしょうか?

さあ、幕が開けました。絶え間ないアンコールの拍手を受けた新たなステージの開幕です。身を乗り出して観劇しましょう。そして皆さん一緒に、作者が奏でる至高のドラマツルギーに酔い痴れましょう。


【付録:ビギナーズガイド】

『あの娘が見上げる理由』は連作の大河小説です。単体で楽しむことも可能と存じますが、初見の読者は第一作から読み進めることで、より味わい深く、登場人物の心象風景を追体験することが出来ます。

①『あの娘が空を見上げる理由ー憧憬ー』https://kakuyomu.jp/works/16816700427307638781

②『あの娘が空を見上げる理由ー結ー』https://kakuyomu.jp/works/16816700429551266387

③『あの娘が空を見上げる理由―赦し―』https://kakuyomu.jp/works/16817139556035399931

それぞれ長編で、話数も多いですが、読者が貴重な時間を失うことはありません。人生が実り豊かになる、と私はここで言い切ります。

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