MAIN STORY1 天才と女優の入学式 Side雄太

職=職員

ナ=ナレーター

瀧=神宮寺じんぐうじ瀧雅たきまさ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


桜舞う季節・・・二人の天才と二人の女優が広い校門の前に佇んでいた・・・


雄「ここか・・・私立、龍皇りゅうおう学園か・・・」

優「そうだね・・・ここで僕たちは三年間過ごすことになる・・・」

菫「ああ。だから・・・後悔したくない。」

桜「うん・・・目いっぱい青春してやる!」


職「感傷に浸っているところ悪いけど、あんまり立ち止まらないようにね!」


おっとそうだった。


雄「よし!行くか。」

優「ああ、そうだね。」


さて、行くか。


確か俺たちは全員A組のはずで、俺は13番だから、席は・・・っと、ここか。

で、優斗は俺の右隣、菫さんが優斗の後ろ、桜ちゃんが俺の後ろのはずだ。


優「僕は12番・・・3×2^2だね。っと、ここか。よろしくね。」


と、俺の右隣に座った。予想通り。


菫「32番・・・っと、ここか。後ろ失礼するね、優斗。」


と、菫さんが俺の右斜め後ろに座った。予想通り。


桜「33番♪、33番♪・・・っとここかな。お!雄くんの後ろだ~!やった!」


と、桜ちゃんが俺の後ろに座った。予想通り。


ふう、簡単な推理でも当たるとすっきりするな・・・


桜「・・・雄くんなんですっきりした顔してるの?」

優「僕たちがどこに座るか推理していて、当たったんじゃない?」

桜「そうなの?雄くん。」


何の造作もなく心を読むなぁ優斗は。


雄「ああ。ちょっと暇だったからな。」

桜「そっか。ふーーん・・・」


桜ちゃんの血色のいい唇が少し盛り上がる。

ありゃりゃ。拗ねちゃったか。


雄「桜ちゃん、ちょっとこっち来て」

桜「?」


桜ちゃんが不思議そうな顔をしながら腰を浮かせて顔を寄せてくる。

やっぱ目大きいな。まつ毛長・・・じゃなくて。

こういう時にぴったりなスキンシップがあるのだ。


雄「入学式終わった後ぎゅーしながらナデナデするからそれで許して?」


と、耳元で優しく囁いてあげると・・・


桜「ふぇ!?・・・わ、わかった・・・許したげる。」

雄「ありがとう・・・大好き。」

桜「あうぅ・・・学校ではあんまりしないでよ・・・」

雄「ごめんね。」


ふう。何とかなったぜ・・・


優「ちょっと、こんなところで練乳ワールド作らないでよ・・・特に雄太。」

菫「二人とも少しは自重してくれ・・・特に雄太君。」

優・菫「はあぁ・・・」


盛大なため息をつかれた。

えーなんで俺だ・・・あー、うん。これは俺が悪いな。うん。

雄:桜=10000:0くらいで俺が悪い。


雄「申し訳ない。」

桜「わたしもごめんなさい。」

優・菫「まったく・・・」


アナ「まもなく入学式を始めます。服装等の乱れを今一度確認してください。」


優「・・・念のため確認しておこうか。」

雄「そうだな。」


ここで確認せずに後で注意されたらはずかしすぎる。

みんなが立ち上がり、それぞれに確認する。


桜「雄くん。わたし大丈夫?変なところない?」


と言いながら、桜ちゃんはその場で軽くターン。

うん、かわいい。

服装にも変なところはなし。


雄「完璧。かわいいよ。」

桜「えへへ~」


照れる桜ちゃん。かわいい。


菫「優斗、どう?」

優「あ、ちょっと待ってね・・・よし、オッケー。」


あっちは割と淡々としてるな。


優「菫、緊張はいらないよ。僕がいるからね?」

菫「ふああぁぁ・・・・・・うん・・・ありがと。」

優「落ち着いた?」

菫「・・・(コクリ)」

優「うん。いい子いい子・・・」

菫「~~~っ!///////」


違った。めちゃめちゃにあまあまだった。

なんだあれ!?優斗が見たことないレベルで優しい顔してる・・・

なんというか・・・包容力がヤバい。いつものクールさはどこ行った。

これは聖母も逃げ出すぞ、まじで・・・優斗って男のはずなんだがなぁ。

てか二人も人のこと言えないだろ。


雄「ヤバくない?特に優斗。」

桜「うん、ヤバい。あんな顔されたらだいたいの女子イチコロだよ。」


だろうな。

実際隣の元気系女子が心ここにあらずになってる。

男が余波で女子赤くさせるとかラノベにもねーぞこんな展開。

取り敢えず、二人には現実世界こっちに戻ってきてもらおう。


雄「ちょっとお二人さ~ん。お~い。」

桜「二人とも~戻っといで~。」


優・菫「はっ!・・・!?・・・~~~~っ!!!??」


雄「ちょいちょい、こんなところで練乳ワールド作んなよ・・・特に優斗」

桜「二人とも少しは自重してほしいなぁ・・・特に優斗君」

雄・桜「はあぁ・・・」


優・菫「・・・・・・・・・(///////)」


二人ともさっき俺たちに言っていたセリフだと気づいたのか、さらに真っ赤になる。


・・・なんとなく空気が気まずい。


桜「この服だと気兼ねなくターンできるね。」


桜ちゃんが「そういえば、」という感じで切り出してきた。


菫「確かにね。それを抜きにしてもこの制服は私の好みだな。」


因みに、桜ちゃんも菫さんもズボンである。

もちろん、俺も優斗もだが。



合格説明会の時の説明では、この学校では盗撮、覗き等の犯罪防止面から、女子のズボン着用が推奨されているらしい。

ぱっと見回してみた感じ、8割以上の女子がズボンのようである。

ズボンが多すぎるせいで逆にスカートが目立っている。

桜ちゃん曰く、『スカートのほうがカワイイもんね。』とのこと。

正直俺にはよくわからなかった。


さらにこの学校では、入学式・始業式・終業式・卒業式を除き、多様性のため私服登校が許可されている。

ただ、主に男子に見られる傾向として『服を選ぶのがめんどくさい』、『服のバリエーションが少ない』、また、この学校の制服がカッコいいため、『この制服よりイケてる服がない、または少ない』等の理由で、全校生徒の6割以上が制服で過ごす、と生徒会長(デキるオンナ感溢れる進学科3年生のお姉さん)は言っていた。


かくいう俺と優斗も上記3つすべての理由で、制服で過ごすつもりである。

なお、うちの女子2人は合格説明会時『どんな服着ていこっかなー』とはしゃいでいたが、俺たちが制服で過ごすことを知り『普段は制服を着て、放課後に仕事があるときやデートするときは私服で行く。』という形に落ち着いたらしい。


理由を聞くと、『お揃いがいいから』とのこと。

・・・・・・かわいすぎだろ、うちの彼女天使・・・


ただ、お世辞抜きにうちの制服はカッコいい。

話によると、この学校のOBのデザイナーがデザインしたとのこと(生徒会長談)。


真っ白のカッターシャツの左胸に校章。

冬はベージュのカーディガン着用可

男子は紺、女子は赤のネクタイ。なおネクタイはリボンに変更可。

紺色のストレートズボン。スカートは紺に白のチェック模様。

ズボンもスカートも冬は生地が厚くなる。

男子は太もも、女子は腰の長さまでの黒に銀ラインにのジャケット。

因みに冬は男女ともにコートの長さになり裏ボアになる。


ここに画像はないのでどれだけかっこいいかはお見せできないが、凄くかっこいい。

それはもうカッコいい。



さて、俺も大丈夫そうだな。


桜「二人とも!ネクタイ!ちゃんとしないと!」

菫「・・・ほんとだ。ちょっと緩んでるよ。締めなおさないと。」


・・・あ、ほんとだ。


桜「もう、直してあげるからこっち来て!」

菫「優斗も、こっちに来てくれ。」


いやそれは流石にはずいな。


雄・優「え、でも自分で」

桜・菫「じーーーーーーー」


・・・お願いするか。


雄(優斗、恥ずかしいかもしれないが諦めろ。)

優(・・・そうだね、諦めようか。)


雄「では、お願いします桜様!」

桜「うむ、桜様にまかせなさい!」

雄「ありがとうございます!」

桜「ふふん。っと、ちょっと待ってね・・・よし!これでオッケー!」

雄「おお!やはり桜様!完璧でございます!」

桜「だろう?またいつでも頼るがよい!」

雄「はは~」


桜ちゃんはノリノリである。


優「ごめんね、菫。ありがとう。」

菫「いや、気にしないでくれ。したいからしてるだけだよ。」

優「それでも、ありがとう。」

菫「フフッ、どういたしまして・・・っと、できたよ。」

優「おお、完璧。菫に頼んでよかったよ。いつもありがとう。」

菫「・・・うん。」

優「菫・・・大好き。」

菫「優斗・・・私も。」


ま~たイチャイチャしてるよあの二人。どんなけしたら気が済むんだよ。

・・・俺も人のこと言えないけど。


雄「・・・お~い、二人とも~」

優・菫「はっ!?」


・・・またかよ。


雄「そろそろだぞ。」

優・菫「・・・わかった。」


ナ「それでは、第80期生入学式を執り行います。」


そこから校長と理事長の挨拶、来賓の言葉と、おじいちゃん達の非常に退屈かつ長い話が・・・と思いきや全員若くて(全員40歳いかないくらい。来賓には20代のお姉さんもいた)話も非常に面白かった。


現在はトイレ休憩中。なお俺以外の三人は伸びしに行った。


そして、次は新入生代表の挨拶だ。

誰だろうな・・・というのは冗談で、大方予想はついている。

それが俺の左隣の男子である。苗字は確か神宮寺。

金髪碧眼の美青年。イケメンでも男前でもなく美青年。

始まってから度々深呼吸していて、明らかに緊張のしかたが違う。


瀧(スー・・・ハー・・・)


・・・めっちゃ緊張してんなぁ神宮寺君。

う~ん、どうにかしてリラックスさせたいなぁ。


雄「なぁなぁ、神宮寺君。」

瀧「はい。どうしましたか?」

雄「挨拶するんだろ?」

瀧「!?なぜそれを・・・」

雄「明らかに緊張しすぎてるからな。すぐわかったよ。」

瀧「そうでしたか・・・これでも顔には出ないほうなんですが・・・」

雄「顔には出てないけど、仕草には出ていたな。深呼吸のタイミングとペースが話を聞くだけにしては多すぎる。」

瀧「なるほど・・・そういうことでしたか。」


というか雰囲気がどう見てもお坊ちゃんなんだよな・・・

それに、しな。


雄「見た感じ慣れてそうだけど、やっぱ緊張するのか。」

瀧「そうですね・・・やはり、間違えられませんから。」

雄「俺らをジャガイモと思えば・・・」

瀧「流石にこの人数はちょっと・・・」


流石に無理があるか。


雄「いいことを教えようか。」

瀧「何ですか?」

雄「人間は、、失敗しやすいんだと。」

瀧「はぁ。」

雄「こういう教訓があるんだが、『味噌汁を運ぶときは、「こぼしても仕方ない」と思え。そうすればこぼれにくくなる。』らしい。」

瀧「・・・なるほど。」

雄「だからさぁ・・・」

瀧「・・・」

雄「間違えても仕方ないだろ。人間もともと大量の同族の前でいつも通り話せるようにできてないんだから。」

瀧「!」

雄「昔の為政者って、民衆がいる高さより上向いてないか?あれって民衆の方向いたら緊張するからじゃないか?」

瀧「!!」

雄「間違えて責められたら言ってやれ。『じゃあお前らは同じ条件で完璧にできるんだな?そうだよな?だって自分を責めれるんだよな?なら完璧にできないとおかしいよな?』ってな。煽ってやれ。」

瀧「・・・ふふっ」

雄「これは俺に考えなんだけどさ、他人の失敗を責めたり馬鹿にできるのはそれができる奴だけだって思ってるんだよ。間違ったことを怒るのは話が違うけどな。」

瀧「・・・」

雄「だから、俺は神宮寺君が失敗しても責めないし、馬鹿にしない。」

瀧「・・・はい。」

雄「だから、完璧にできないことを念頭に、がんばれ。」

瀧「わかりました。完璧にできないことを念頭に、がんばります。」


ナ「あと5分ほどで再開します。・・・そろそろご着席願います。」


雄「ふう、そろそろ帰ってくるか。」


・・・ていうか伸びにしては長くね?


瀧「あの、お名前をお伺いしても・・・」

雄「堺雄太だ。よろしく。」

瀧「堺、雄太さん。これからよろしくお願いします。私は神宮寺瀧雅と申します。」

雄「知ってるよ。」

瀧「ご存じでしたか?・・・どこかでお会いしたことがありましたか?」

雄「いや、ないな。忘れてさえいなければ。」

瀧「なら、なぜ名前を?」

雄「自分の両隣の名前くらい覚えててもおかしくないだろ?」

瀧「・・・なるほど。」


優「・・・おまたせ~。」

桜「・・・多すぎだよ~。」

菫「・・・疲れた・・・」


伸びにいったにしては疲れすぎだろ。


雄「ファンにでも囲まれたか?」


だいたいこんなところだろ。


桜「その通りです・・・」

優「流石雄太・・・何も言わなくても察してくれる。」

菫「・・・説明する手間が省けるって、こんなに楽なんだね。」


3人が伸びに行く前より疲れた様子で椅子に座る。

ん?なぜが神宮寺君がこっちを見ている。


雄「どした?」

瀧「いえ・・・お友達ですか?」

雄「ああ、亜麻色の髪の男子と黒髪の女子が友達で、茶髪の女子が彼女。」

瀧「ああ・・・なるほど・・・」

雄「・・・どした?友達がいるとは思わなかった・・・てか?」

瀧「はい。ああ、いえ、決して貶しているわけではなく、今日会ったばかりのはずなのに・・・と思いまして」

雄「ああ、俺らは彼女つながりで合格説明会の時に知り合ったんだよ。」

瀧「なるほど、そういうことでしたか。」


まあ、普通は不思議に思うよな。


優「雄太、そちらの方は・・・?」

瀧「すみません。自己紹介が遅れました。私、神宮寺瀧雅と申します。」


・・・そういえば、たきまさってどう書くんだろ?


菫「!?」

桜「神宮寺瀧雅さん!?」

優「二人とも知ってるの?」

桜「知ってるも何も・・・神宮寺財閥の長男さんだよ。」

優「ふーん・・・え!?神宮寺家の長男!?」

雄「・・・そんな驚くか?」

桜「逆になんで雄くんはそんな平常運転なの!?」

雄「いや、だって成績優秀者がする新入生代表挨拶をするんだろ?

それを試験で満点を取った俺じゃなくて神宮寺君がするんだから相当すごい人ってのは想像つくだろ。」


特に優斗。


瀧「あなたが満点を取ったんですか!?」

雄「ああ、そうだ。」

瀧「そうでしたか・・・そうでしたか。」

雄「・・・どうした?」

瀧「いえ・・・皆様のお名前をお伺いしても?」

優「構いませんよ。九条優斗です。」

桜「湊川桜です。雄太君とお付き合いしています。」

菫「日向菫と申します。優斗君と交際しています。」

瀧「ありがとうございます。」


ナ「まもなく再開いたします。お着席願います。」


さあ、そろそろだ。


瀧「スー・・・ハー・・・」


緊張してきたか。


雄「さっきも言ったが、完璧にできないことを念頭に、がんばれ。」

瀧「わかってます。完璧にできないことを念頭に、がんばります。」


ナ「それでは、新入生代表挨拶です。新入生代表、神宮寺瀧雅様。お願いします。」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・・・


雄「Good Luck!」


と、サムズアップで送り出すと、


瀧「Thanks!Wish me Luck!」


サムズアップが返ってきた。てか何その返し。カッコいい!


瀧「新入生の皆様、初めまして新入生代表の神宮寺瀧雅です・・・」


その後、神宮寺君は挨拶を最後まで完璧に言い切った。


その後は各委員会の連絡があり、入学式が終了した。


今日は入学式だけなのでこれで帰れる。

あ~、疲れた。

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