Prologue Ⅰ 堺 雄太という天才 side 雄太
雄=
優=
桜=
菫=
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俺、堺 雄太は天才である。
初手からこんなこと言うと、聞いている人の反応大きく分けて2つある。
1つは「なに言ってんのこいつ」と困惑するものと、もう1つは「こいつヤバ。イタすぎでしょ。厨二病じゃん。」と罵倒するものである。
そりゃそうだ。当たり前の反応である。
これ以外の反応をする人は、とんでもなく心優しい人か、頭のネジが数本抜けている人である。
とは言え、何の根拠もなく自分は天才などと言っているのではない。
もちろんテストの点数が高いとか、難問が解けるとかそういう根拠でもない。ちゃんと科学的な根拠があるのだ。
その名も、後天性サヴァン症候群、通称「天才病」。
計算能力や記憶力、読解力等が著しく高くなる病である。他にも、素数が光って見える。
俺は約3年前、12歳のときに交通事故に遭い、頭を強打したことで発症した。
そして、この病は科学的に認められている。
つまり、俺は科学的に認められた天才というわけである。
ここで医学部や心理学科の学生、博識な人は気づくと思うが、通常サヴァン症候群は自閉症など他の精神疾患と同時に発症する。
だが俺はそんな精神疾患は発症していない。まあ何事にも絶対はないということだ。
しかし、何の犠牲もなかった、なんて事はない。流石にそんな上手い話はない。
俺は精神疾患の代わりに、生まれてから十年の記憶を失った。
なあ、こんなこと言わないとダメか?
え?言い出しっぺなんだからやれ?
確かに自己紹介ビデオ作ろうとは言ったけどこんなイタいこと言うとか聞いてないんだけど?
言ってない?ふざけんなよ!
時間押してるからさっさとやれ?
わかったよわかったから。
はあ………
記憶を失った時は確かにかなりのショックを受けたが、言語能力やマナー等は覚えていた。
どこでどう覚えたかは覚えていないが。
例を挙げるなら、「自転車は漕げるがどうやって練習したか覚えていない状態」と言ったところか。
だから基本的に日常生活には支障はない。
知らない顔ばっかりの集合写真を見て寂しくなったり、知らない人から「久しぶり!」と声をかけられてどう反応すればいいか分からなくなったりはするが。
ちょ、泣かないでよ桜ちゃん。
典型的なお涙ちょうだい系の言い方はしたけどさ。
そんな泣くことはないんじゃない?
え?気にせず続けて?
そう言われてもなぁ。
わかったわかったから。続けるから。
ただ、どこかの偉人が言ったように時間はすべてを癒してくれる。あの事故から約3年。彼女の献身的なサポートのおかげで心の傷はほとんど癒えた。
だから、俺は決めた。
献身的なサポートをしてくれた彼女に一生を懸けて恩返しをし、そしてこの学園生活で他のどのカップルよりもイチャイチャして二人で青春を謳歌してやる…………と。
「カーーット!!なに最後ワケわかんないこと言ってるのさ!せっかくのシリアスな空気が台無しじゃないか!」
と叫ぶのは俺の友人の九条 優斗。
桜ちゃん紹介されて仲良くなった友人だ。
全体的に色素が薄く、亜麻色の瞳と同じく亜麻色のサラッサラの髪を七三分けしている。
フランス系のクォーターらしい。
俺とは違い、先天性の天才だったりする。
「う~~恥ずかしいよぉ。雄くんなんでどのカップルよりもイチャイチャするとか堂々と言えるの?もぉ~~~~。……でも嬉しいな。えへへ」
と、
いぬ系の彼女であり我が天使である。
そして、セレブの一人娘で、咲良アリスとして活躍する高校生女優だ。
お姫様系の美少女で、ブラウンの髪を腰まで伸ばしている。瞳も髪と同じ色である。
本人が言うに外国にルーツはないらしい。
「あはは。まあそれも雄太君らしさなんじゃないかな?堂々と言えるところは雄太君の長所なんだからさ。」
と、俺を擁護してくれるのは
桜をお姫様系の美少女というなら、こっちは王子様系の美少女である。
黒髪のショートボブに青い瞳をしているが、
聞けばひいおじいさんの1人がカナダ人だとか。俗に言う先祖帰りらしい。
こちらも舞台で
そして俺の友人の優斗の彼女である。
ちなみに、俺と優斗が出会う切っ掛けは桜ちゃんと菫さんだったりする。
ある舞台で二人が共演したときに仲良くなり、二人とも彼氏がいたり目指す高校が同じということもあって「もし二人とも受かったらお互いに彼氏を紹介しようね。」と約束したらしい。
ここはとある高層マンションの一室。俺の家である。
俺らは私立の難関進学校の龍皇学園の一年生。ここは学校が一棟丸々借りている高層マンションで、寮の代わりとして確保しているらしい。
「ちょっと菫、なんで雄太を擁護するんだ?言い出しっぺなのにふざけたんだぞ?おかげで僕は手の震えを押さえるのに苦労したんだからな!…………ククッ」
と、優斗がわざとらしく怒る。
笑いながら。
「でもあんなめちゃくちゃな台本を考えたのは優斗だろう?というか手が震えてるってことは優斗も笑ってたんじゃないか……フフッ」
と菫さんが俺を擁護する。
笑いながら。
「わたしはとても良かったと思うけどなあ。この作品。えへへ。」
と桜ちゃんが褒めてくれる。
ニヤけながら。
俺の彼女が天使なのは置いといて二人はなにをそんなに笑ってるんだよ。全く…………
「それで、ちゃんと撮れたのか?」
これで撮れてなかったらさっきの時間マジで全部無駄になるぞ。あと俺の精神も。
優「ああ、それは大丈夫だよ。多少手ブレはあったと思うけど、最新のスマホのブレない撮影機能を使っているからさ。声も全力で我慢したから入れてないし。」
そっか。なら良かった。
菫「あ、でもあの会話はどうしようか?」
桜「あっ、確かに!」
雄「会話?」
はて?そんなシーンは………………アッ
『なあ、こんなこと言わないとダメか?
え?言い出しっぺなんだからやれ?
確かに自己紹介ビデオ作ろうとは言ったけどこんなイタいこと言うとか聞いてないんだけど?』
『ちょ、泣かないでよ桜ちゃん。
典型的なお涙ちょうだい系の言い方はしたけどさ。
そんな泣くことはないんじゃない?
え?気にせず続けて?』
………………オワタ。
優「すごく落ち込んでるなぁ。」
菫「そうだねぇ。」
お前ら他人事だと思って…………!
絶対同じことやり返してやる………!
桜「でもさ、こういうお茶目シーンがあってもいいんじゃない?テレビじゃないから完璧である必要なんて無いし、むしろこっちの方が見返したとき笑えるから良いと思うけどなぁ。」
Oh! God is with us!《神はここにおられる!》
流石桜ちゃん、発想が神すぎる。
ほんと桜ちゃん最高、神、天才。
雄「……桜ちゃん大好き。」
桜「ひょわっ!?」
思わず抱き締めてしまった。桜ちゃんの顔が朱に染まる。
びっくりさせてしまったが反省も後悔もしてない。
何故ならばびっくりして変な声を上げる桜ちゃんもかわいいからである。
桜「も、もう!びっくりした……」
雄「ごめんね。ちょっと桜ちゃんが神過ぎて。」
桜「そ、そんなこと言ってもわたしの機嫌は直らな────」
雄「ナデナデしたら直る?」
と言いながら桜ちゃんの頭をナデナデする。
桜「直らな……くもないけどぉ!誤魔化されないからね!」
ツンデレ桜ちゃんもかわいい。
雄「何したら誤魔化されてくれる?」
桜「う~ん。じゃあ今日寝る前に膝枕して頭ナデナデしながら愚痴聞いて!そして寝る前にぎゅーして!」
要求がかわいすぎて神。
そんな天使にはサービスである。
雄「寝てる間はぎゅーしなくていいの?」
桜「えっ、寝てる間……お、お願いします……」
桜ちゃんの顔がさらに赤くなる。かわいい。
これはサービスでキスもしてあげなければ。
優「おーい、お二人さ~ん?」
菫「私達の事を忘れていないかい?」
誰だよ邪魔するな…………ん?
雄「アッ」
桜「あ。」
雄・桜「めっちゃ忘れてた。」
いやガチで。
優「ちょいちょい、全く……」
菫「こっちの身にもなってくれ……」
いやぁ、ごめんごめん。
菫「私たちが出来ないのをいい事に……っ私たちもここでイチャイチャするぞ!?」
いやいや、なにを言ってるのさ。
雄「良いよ」
桜「全然」
菫「へっ」
菫さんフリーズ中……………
というか、そんなこと言うってことは…………そういうことだよね?
桜「なあんだ、菫ちゃんも優斗君とイチャイチャしたいんじゃん!」
菫「なあっ!?そ、そんなことは───」
桜「無いの?」
菫「っ……あるけど…!で、でもそういうのは場所をわきまえないと───」
桜「その場所にうちを使って良いんだよ?」
菫「い、いや、しかし……」
おいおい彼氏さんや。これ大丈夫?
止めようか?
優(いいや、もう少しこのままで。かわいいし。)
そっか。でももう少ししたら俺も介入するぞ?
優(了解。)
桜「ねえねえ、イチャイチャしないの~?」
菫「う~~……」
そろそろ行くぞ。
優(オーケー)
よし、3・2・1!
優(─3・2・1!)
雄「桜ちゃん、そろそろ止めようか。」
後ろから優しく抱き締める。
桜「は~い。」
桜ちゃんも止めどころを失っていたようで、声をかけたらすぐに止めた。
こっちは上手く行ったぞ。
優(オーケー)
優「よく頑張ったね。」
菫「う~~、私、頑張った?」
優「うん。凄く頑張ったね。」
菫「ほんとに?頑張った?」
優「スゴイよ、菫。ほら、おいで?」
菫「……優斗……ありがと…………っ」
優(こっちも上手く行ったよ)
おし、了解。
お互いに彼女とイチャイチャする事数分。
俺は話題をそらす意味も含め若干大きな声で言った。
雄「よし!じゃあ優斗もビデオ撮って貰おうか!」
優「………うぇ?」
桜「良いね、それ!」
優「………嘘ぉ?」
菫「私も賛成だな。」
優「菫まで!?」
さあ、頼むぞ優斗くん!!
優「…………はぁ、わかったよ……」
と、優斗が渋々カメラの前に行ったので僕らもセッティングに入るのだった。
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