Prologue Ⅱ 九条 優斗という天才 Side 優斗

私立敬麗学園の生徒にしててぇんさい高校生の九条優斗は、ここ、学園宿舎の一室にて、青春アオハルな思い出の1ページを刻むのであった……


これで満足かい?

全く……なにを言わせるかと思えば…………

なんで物理学者系特撮ヒーローのセリフなんだよ。もう少しマシな言葉はなかったの?

愚痴はいいから早くやれ?

わかってるよ!

え?ああ、雄太の気持ちがよくわかったよ。

わかったからそんなに急かさないでよ。


コホン。

まあ、そんな茶番は置いておいて。


僕、九条優斗は生まれつきの天才である。

父が警視庁の刑事部長な事もあり、実は小学生から事件解決の手伝いをしていた。

リアルガチの小学生探偵である。


テストはずっと満点。

年相応なバカもしない。

でも自分の意見はしっかり言う。

当然、大人たちからは褒められた。


でも、それは良いことばかりではない。

もちろん、クラスでは目立つ。

そして、女子にモテる。

すると、それをよく思わない奴も出てくる。

声と態度だけデカいバカと二番目。

要するにイジメっ子とナルシストである。


……ねぇ、こんなこと言わないとダメ?

イジメっ子はともかく、ナルシストなんかいなかったし「二番目」って下手な悪口よりキツくない?

何か恨みでもあるの?

あ、桜さんの要望?

う~ん、そっか………ならしょうがないか。

え?イジメっ子は良いのって?

うん。

というかこれでもマシな方だよ。

本音?なんだろう…………

脳味噌ド腐れゲロブタ野郎とか人類の不要品とか?

そ、そんな引かなくても…………

なんでそんなに目の敵にするのかって?

うーん。

自分だけならこんなには言わないんだけど、菫まで袋叩きにしたからね。

このくらいで妥当じゃない?

わかってくれる?ほんとに?そっか!

いやぁ、やはり持つべきものは友だねぇ。

ああ、わかった。続けるね。


最初は簡単な嫌がらせだった。

小学生がするしょうもないものだ。

でも、ここでやり返さないのは僕のプライドが許さなかった。

だから、頭を使って、大人にばれないように、こっそり仕返ししていた。

最初は相手も不思議がっていたが、やがて相手も気づく。

そして、大人に言おうとするが、信用の差で相手の意見を聞き入れてはくれない。


そしてとうとう、相手は実力行使に出た。

しかし、僕もこれは読んでいた。

そして、僕は父から空手を習っていた。

当然、返り討ちには出来る。

だが、ここで変な言いがかりをつけられるのも面倒だ。

だから、僕はで撃退した。


奴らは学習して僕には手出ししなくなった。

しかし、


奴らは標的ターゲットを僕から、僕が当時から仲が良かった菫に変更した。

菫は強気で言いたいことをはっきり言うタイプだった為、元から鬱陶しかったのだろう。これを好機とばかりに一気に攻撃を始めた。

僕は菫を守ろうとしたが、菫に「大丈夫。私が我慢するから。」と断られたため、何かしようにも何もできなかった。


しかし、ある日事件が起こる。

菫が袋叩きに遭っていた。亀のようになって丸まっている菫を6人の男子が四方八方から蹴っていた。

僕は我慢できなかった。

何かが切れた音がして奴らに向かって走り出したとろこまで覚えているが、次に気が付いたら6人の男子が地面に転がっていた。


菫は隅のほうで丸まって震えていた。

声をかけようとして、気づいた。いや、

僕の体に痛みはないことから、僕はほぼ無傷で男子6人を沈めたということ。

つまり、ことになる。


もし目の前に同年代の男子を複数人同時に相手取って蹂躙した人がいたら?



怖い



そういうことである。


つまり、ここで菫に怖がられて終わりだ。


プライドなんか無視して耐えるべきだったか?

時間を費やして大人を呼ぶべきだったか?

もっといい方法はなかったか?

様々な疑問が浮かぶ。


ここで何の迷いもなく自分の行動を肯定できるほど、僕の心は強くない。

僕はいつもより小さい菫の背中を、ただ茫然と見つめることしかできなかった。



どうする?どう説明したらいい?どう接したら菫に怖がれずに済む?いや、怖がられずに済むのは恐らく不可能だ。なら、どうすれば最小限に抑えられる。

どうすればいい?どうすれば嫌われない?どうすれば・・・


どれだけの時間考えただろうか。

実際はどうかわからないが、僕には数秒にも、数分にも、数時間にも感じられた。

そして、考えすぎたために気づいていなった。


・・・ちょっとここ、菫が声いれてくれない?

お願い!一言だけでいいからさ。

ほんとに!?ありがとう!


『ゆうとくん?』


ナイス!最高だよ!


僕は全ての思考が全身とともに停止した。

静かになったことに気付いたらしい菫が、こちらに振り返っていた。

僕の頭の中にはある一つに言葉が浮かんでいた。


「オワタ。」・・・・・・と。


『『『ブフッ!!』』』


ちょっとみんな吹かないでよ!

特に雄太!君のボケは僕耐えたんだよ!?僕のボケも耐えてよ!

え?ここでボケ挟むと思ってなかった?

シリアスにならないように考えたつもりだったんだけどな・・・

まあいいや、続けるよ。

えっと、どっからだっけ・・・あ、そうそう。


静かになったことに気付いたらしい菫が、こちらに振り返っていた。


ああ、おわったな・・・


そう思った。


でも、菫は僕が全く予想できなかった行動に出た。


菫、ここもう一回お願いしていい?

ありがとう。


『ゆうとくん!』


なんと、僕に抱きついて来た。

今度は心臓とともに思考が止まった。


僕は勇気を振りしぼって、「僕のことが怖くないの?」と聞いた。

すると菫は、抱きつきながら『いつもケンカしてるなら怖いけど、ゆうとくんはそんなことないでしょ?だから、私は怖くないよ。それに・・・私のこと守ってくれたんでしょ?だから・・・その・・・かっこよかったよ。物語の騎士様みたいだった。』

といってくれた。


何も言ってないのにアテレコしてくれてありがとね。

声、すごくかわいかったよ。最高だった。ありがとう。


そして、一緒に謝りに行って、そのまま告白されて、もう5年以上付き合っている。


当然、先生には叱られたけど、こういうことに厳しいはずの父は僕に対して怒ることはなく、一言「もっと親を頼れ。」と言われ、逆に母に「危ないことはしないで。」と怒られた。


六人を殴り倒したのにそれだけだった。

いや、正確にはもっとあったらしいが、父がいろいろと動いてくれたらしく僕らに降りかかることはなかった。


そして僕は、いままでずっとそばにいてくれた菫を一生をかけて幸せにするとここに誓う。



雄「はい、カット~~!いや~良かった!お疲れ!」


と真っ先に労ってくれるのは、友達の堺 雄太君。

雄太は、僕と真逆で後天性サヴァン症候群を発症したいわば後天的な天才だ。

雄太の彼女の桜さんによると、元々性格がよく、高身長イケメンで、スポーツが得意だったらしい。そこに頭もよくなったため、完全無欠の理想男子が出来上がってしまった。僕もたまに嫉妬してしまうことがある。


桜「あのボケは流石にびっくりしたけど、すごく良かったよ!」


と、褒めてくれる(?)のは雄太の彼女の湊川 桜さん。菫とも仲がいい。

高校生だが、咲良アリサとして活躍している女優さんである。

演技しているときはカッコいいと思うけど、僕の中では雄太に攻められて顔真っ赤でアワアワしている印象のほうが強い。

桜さんの言葉を借りて国宝級イケメンである雄太が、なんと自分をイケメンだと思っていないため、いろんな意味で桜さんは大変だろうなあ・・・と思ったりしている。


あのボケ、そんなにダメだったかなぁ。


菫「アテレコするなら撮影前に一言欲しかったよ。あんなセリフ恥ずかしすぎる。まあでも、シリアスな雰囲気とか話し方はすごく良かったし、あのボケも私はよかったと思うよ。お疲れ様。」


と、恥ずかしがりながら、でもしっかり褒めてくれるのは僕の彼女の日向 菫。

俗に「王子様系女子」や「イケメン女子」と言われる部類の美少女である。

身長は170cm以上あり、男子顔負けのスタイルで、ブラックジーンズを履きこなす。贔屓目抜きでもそこらのイケメン俳優よりずっとイケメンだと思っている。

でも、内面は桜さんより乙女だったりする。ちなみに、菫も役者で主に舞台で活躍している。


ちなみに、身長は雄太が176cm、僕が175cm、菫がだいたい170cm、桜さんがだいたい165cmと、全員平均より高い。しかも全員まだ伸びている。

雄太とは「180cmいきたいね」なんて話している。


いやぁ、やはり菫はかわいいね。

これは、抱きしめて感謝を伝えないと。


優「恥ずかしかったよね。ごめんね。最後までしてくれてありがとう。」

菫「ひゃっ!?あ、ちょ、ちょっと・・・」


優しく抱きしめると、さっきまでの余裕はどこへやら。

途端に顔を赤くして慌て始める。かわいいなぁ。


優「フフッ、かわいい・・・」

菫「~~~~~~!!!??」


耳元で囁くとかわいらしく悶絶して、抱きついて顔を僕の胸に埋める。


雄「俺たちもイチャイチャする?」

桜「しちゃおっか。」


と、二人もイチャイチャし始める。


マズい。これ以上続けるとブレーキが利かなくなる。


優(雄太!そろそろ限界だ!)

雄(わかった。)


雄「よし!次は桜ちゃんの番だ。」

桜「わたしもやらないとダメか~。」


ふと、桜さんと視線があった。微妙に嫌な予感がする・・・


桜「そうだ!菫ちゃん!一緒にやろ!」

菫「一緒に?」

桜「そう!二人で撮るの!」

菫「ああ、そういう。え~っと・・・」


まあ断りにくいよなあ。しょうがないか。


優(いいよね?)

雄(ああ。)


優「いいんじゃない?」

菫「!ありがとう。」

雄「ただし!一つ条件がある」

桜「な、聞いてないよ!」


桜さんノリいいな。


菫「そ、その条件とは・・・?」


菫もノリいいな。

僕もノるか。


優「ま、待て!無茶苦茶な条件を出すんだないだろうな!?」


うまくいったかな?


雄「ああ、そこは安心してくれて構わない。その条件というのは・・・」

優・桜・菫「「「・・・ゴクリ」」」

雄「二人で即興演技をしてもらう!!」



な、なんだって~~!?

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