others story1 秀才御曹司とその後 side瀧雅
龍=
幸=
瑞=
兵=
使=使用人
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瀧「・・・堺、雄太さん、っと。」
僕は神宮寺瀧雅。日本三大財閥の一つ、神宮寺財閥の長男です。
イギリス人の祖母譲りの金髪碧眼で、日本人離れした容姿をしています。
勉学も小学生のときからたくさんしてきました。
私立の中学校に通っていましたが、成績は常に一位。テストも満点。
全国区の模試で一位を取ったこともあります。
なので、今回の龍皇学園の入学試験も一位を取れたと思いました。
実際、新入生代表挨拶の話が来たときは一位を確信しました。
ですが本当は・・・二位でした。
兵治さんによると、7割でTOP10に入れるテストで、満点を取った人がいる・・・と。そして僕は8割ちょっとだったそうです。本来であれば確実に一位になるはずの点数のはずなのですが・・・
そして、その人はどこのお嬢さんでも御曹司さんでもないらしいとのことでした。
どこも、『むしろあなたではないのですか?』と返ってきたそうです。
その満点を取った人が・・・堺雄太さん。
奇しくも入学式で僕の隣の人でした。
話しかけられた時から不思議な感じのする人でした。
最初から僕が新入生代表挨拶をすることを見抜き(公表してません)、僕の名前を知っており(挨拶で二度程呼ばれただけです)、ご友人達が疲れて帰ってきた理由を一瞬で推理して(考えるそぶりもなかったです)しかも当てています。
ご友人も、警視庁刑事部長の息子さんに、大手電機メーカー「HYU-GA」の娘さん、さらに恋人は神宮寺と同じく日本三大財閥の湊川家、筆頭分家の娘さん。
日本のトップのご子息やご令嬢たちです。さらに湊川さんと日向さんは役者さんもしておられると聞きました。オーラが・・・
控えめに言って僕も気圧されるメンバーです。
そのメンバーに普通にタメ口で話していました。すごいです。
ですが、妬ましくも憎らしくも思いません。
なぜなら、僕が緊張していることを見抜き僕にとても刺さるアドバイスくれました。
今回の成功の7割は彼のおかげです。
彼は、きっと自分の
それが、初対面の人であったとしても。
そんな彼のことが気になります。
ちょっと調べてもらいましょう。
瀧「兵治さん。」
兵「はい。どうしましたか。」
この人は周防兵治さん。いわゆる「じいや」です。
瀧「この、1-Aの堺雄太さんという人物を調べてください。」
兵「承知しました。ところで、その堺様は坊ちゃんとどのような関係でございますか?」
瀧「恩人です。今日の挨拶は彼のおかげで成功したといっても過言ではありません。そして・・・入学試験で満点を取った人です。」
兵「なんと・・・!それは本当でございますか。」
瀧「はい。本人が言っていましたし、呼吸の大きさやペースから僕が挨拶すると見抜き、実用的なアドバイスもいただきました。」
兵「さようでございますか・・・わかりました。調べてまいります。」
瀧「お願いします。」
さて、これでいいですね。
ですが・・・堺雄太さん・・・常人ではありませんね。
龍「瀧雅にしては珍しいな。人の名前をフルネームで覚えるなんて。」
瀧「父上。」
この人は神宮寺龍河。僕の父親です。黒髪黒眼ですが目鼻立ちははっきりしてます。
名前が僕より現代風とか言わないでください。割ととても気にしているので。
少し豪快なところがありますが、いい人です。
龍「彼はなぜ覚えたんだ?何かあったんだろ?」
瀧「恩人だからです。」
龍「恩人?何のだ?」
瀧「今日の挨拶のです。アドバイスを頂いて。」
龍「ほう。そのアドバイスは役に立ったのか?」
瀧「そのおかげで成功したといっても過言ではありません。そして・・・」
龍「そして?」
これを言って父に目をつけられたら迷惑ですかね・・・
龍「・・・初めに言っておくが、私は瀧雅が犯罪に巻き込まれない限り絶対にその子に接触しないと誓う。」
なら、話しましょうか。父は家族には嘘はつかないですし。
瀧「・・・今回の入学試験で満点を取った人です」
龍「な・・・・・・・・・」
父が絶句しています。
ここまで父が驚くのも無理はないですね。
龍「なんだと!?くっ、接触したい!したいが・・・瀧雅と約束したしな。」
瀧「そうですね。迷惑はかけたくありません。」
父が大声を上げて驚くのなんて滅多にないですね
コンコン
ん?
幸「瀧くん、入りますね?」
誰かと思えば母でした。
瀧「はい。今開けますね。」
ガチャ
幸「龍河さん?どうしました?珍しく大声なんて上げて・・・」
龍「いや・・・瀧雅のことでちょっとな。」
この人は神宮寺幸希。僕の母親です。ブロンドの髪と青い目を持つ美人です。
家族思いでとてもいい人なんですけど・・・
ちょっと心配症です。
幸「瀧くんの?・・・何かまずいことですか?」
龍「いや、悪いことではない。だが・・・外に広がるとよくないな。」
瀧「彼に迷惑が掛かります。」
幸「・・・わかりました。では聞かないようにしますね。」
龍「いや、今日の夕食で伝える。」
幸「・・・いいのですか?」
龍「ああ。瀧雅、兵さんにも調べさせてるんだろ?」
瀧「はい。」
龍「なら、その報告も含めて夕食で伝えよう。」
幸「わかりました。龍くん、ちょっと瑞稀が勉強のことで聞きたいことがあるらしくて。今からお願いできる?」
瀧「はい。」
コンコン
瀧「瑞稀~、きたよ~。」
瑞「は~い。今開けま~す。」
ガチャ
瑞「お待ちしておりました、お兄様!」
この子は神宮寺瑞稀。僕の2つ下の妹です。僕と同じ金髪碧眼の美少女です。
瑞稀も龍皇学園を目指しており、よく勉強のことを聞きに来ます。
瀧「どこがわからないんだい?」
瑞「数学のここなのですが・・・」
瀧「ああ、この問題はここに補助線を引いて・・・」
瑞「ふんふん・・・」
なるべく丁寧丁寧を心掛けて教えていく。
瀧「で、最後にここを求めれば・・・」
瑞「・・・なるほど!わかりました!ありがとうございます!」
瀧「他にはない?」
瑞「今のところはありません。」
瀧「じゃあ、僕は自分の部屋にいるからまたわからないことがあったら来てね。」
瑞「はい!」
今の時間は16時過ぎ。
さて、夕食まで何をしようかな。
最近は習い事もありませんし・・・
中学生まではたくさんあったのですが、どれも修得してしまったのです。
なので、今は一日に1時間ほど空く時間ができてしまうのですよね・・・
新しい娯楽を探さないとですね。
仕方ないので今日は読書しましょうか。
・・・雄太さんなら何か知っていますかね?
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使「瀧雅様、夕食が出来上がりました。」
瀧「わかりました。片付けをしますので5分後に行くと伝えてください。」
使「かしこまりました。」
ふう、思ったより熱中してしまいました。
面白いですね、スプラトゥーン3。
実は、入学式の後雄太さんとRINEを交換したんですよね。
それで、『何かいい娯楽ないですか?』と聞いたら『スプラトゥーン3はいいぞ。』と返信がありました。
ちょうど、ゲーム機とソフトがあったので、遊んでみたら思いのほか面白くて1時間熱中してしまいました。雄太さんや雄太さんの弟さん、九条君もしてるみたいですし、雄太さんの言う「ふれんど」とやらもいつかしてみたいです。
ゲーム機を仕舞って、テレビを消して・・・よし!
さて、今日の夕食はなんだろな~♪
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ダイニングに行くともう全員揃っていました。
どうやら僕が最後のようですね。
龍「よし、これでそろったな。では、いただきます。」
幸・瀧・瑞「いただきます。」
今日の夕食はフレンチですか。
・・・今日は中華の気分だったんですが。
龍「瀧雅。彼について報告してくれ。」
瀧「はい。彼、堺雄太さんは僕の恩人です。」
瑞「恩人、ですか?」
瀧「はい。今日の挨拶が成功したのは彼のアドバイスのおかげです。」
幸「まあ、そうなのですか。」
瀧「そして、彼は・・・」
龍「・・・言いたくなかったら、私の方から言おうか?」
瀧「いえ。僕が言います。彼は、今回の入試で満点を取った人です。」
幸・瑞「え?・・・え!?」
幸「噂になっていた・・・あの?」
瀧「はい。本人が言っておりました。」
瑞「・・・それ以外に、何か裏付けることはありましたか?」
幸「こら、ミーちゃん。」
まあ、疑うのも当然です。
瀧「僕が新入生代表挨拶をすることを見抜かれました。」
龍・幸・瑞「!?」
瑞「うそ・・・お兄様が!?」
龍「おいおい・・・家族でも見抜けないのに・・・」
幸「・・・天才、というお方なのでしょうね。」
それにしても、兵治さん遅いですね。
兵「旦那様、坊ちゃま、申し訳ありません。夕食の時間に間に合わず・・・」
あ、来ました。噂をすればなんとやら、ですかね?
・・・ちょっと違いますかね。
龍「構わんよ兵さん。それで、雄太君についてわかったことはあるか?」
兵「はい、順に読み上げます」
・勉強、運動、歌唱、家事、看病・手当て、戦闘もできるスーパー高校生。
・全国模試で5連続満点。
・カラオケで平均98点。
・100m10秒台。全力ではない。
・湊川のお嬢さんを唸らせるほどの料理の腕前。
・空手大会で飛び入り参加で優勝。
・パンチ力210㎏。これも全力ではない。全力は推定300㎏超え。
・戦闘は素手も武器も火器もできる。
・性格は明るく優しく真面目、と理想的だが、危害を加える相手には容赦しない。
・勝負になると少しバトルジャンキーになる一面もある。
・スプラトゥーン10000時間プレイヤー。持ち武器はジムワイパー
・座右の銘は、「何かを得れば、何かを失う。その逆も然り。」
・四人家族で、子供は雄太と年子の弟。
・父親はゲームクリエーター、母は少女漫画の編集長。
・家族間に目立った問題なし。
・湊川家の筆頭分家の娘、湊川桜と交際。
・刑事部長の息子、九条優斗と、「HYU-GA」の娘、日向菫と交友あり。
兵「・・・基本情報はこれくらいです。」
瀧「・・・・・・」
・・・いやちょっと、最初の方のインパクトが強すぎて・・・
勉強、運動、歌唱、家事、看病・手当て、戦闘もできる・・・って
雄太さん、ほんとに人間なんですかね?
龍「・・・ほんとに人間か?その子。」
幸「ねえ、ほんとに人間?彼」
瑞「私たちとおなじ人間ですか?、その人」
珍しく家族全員の思考がそろいました。珍しく。
兵「・・・おそらく」
兵さんも引いてます。
兵「そして、入試で満点を取った件なのですが・・・」
龍「・・・何か言いにくいことがあるのか?」
兵「言いにくいといいますか、雄太様を傷つける可能性があります。」
何かはわかりませんが、雄太さんが傷つくかもしれないのなら・・・
瀧「でしたら、知らないほうが良いのでは?」
兵「私もそう思いましたが・・・ご存じになられた方がよい気もするのです。」
瀧「なぜです?」
兵「質問を質問で返してしまいますが、坊ちゃまは誰にも言えない秘密を他人から詮索されたいですか?」
瀧「・・・いえ。」
でも、それだけでは・・・
兵「そしていざ秘密を打ち明けた時に相手から引かれたらどう思いますか。」
瀧「・・・打ち明けたことを後悔します。」
兵「そういうことです。」
・・・なるほど。
兵「恐らく交際相手様とご友人お二人は知っておられると思いますが、私としては理解者は多い方がよいと思うのです。」
少なくとも、僕はそう思いますね。
瀧「・・・わかりました。教えてください。」
兵「はい。」
彼は、中学校に入るまでは体育が得意な普通の児童だった。
明るく元気で優しく真面目、と性格はこの頃から完成していた。
ただ、この頃はまだバトルジャンキーな一面はなかったようだ。
10歳頃から家事の手伝いはしていたという。
中学生に上がる前の春休みに道に迷っている桜様を助ける。これが出合い。
そしてその一か月後、GW中に交通事故にあう。
瑞「えっ・・・」
幸運なことに病院の前での事故だったためすぐに治療が行われ、一命をとりとめたものの、その事故で頭を激しく打ち、後天性サヴァン症候群を発症する。
龍「サヴァン症候群、だと?確かそれは・・・」
しかし、サヴァン症候群と同時に発症するはずの自閉症等の精神疾患は発症せず、
代わりに・・・
瀧「・・・代わりに?」
生まれてから10年間の記憶を失った・・・と。
瀧・龍・幸・瑞「っ!!?」
現在は落ち着いているようだが、当時はいつ自殺してもおかしくない状態だった。
それでも、ご家族や桜様の献身的なサポートがなければ、今頃どうなっていたかはわからないという。
そして、その過程で桜様と惹かれあい、交際を始める。
そこから、もう二度とこんなことが起きないように、そしてほかの人を救えるように筋トレをし、武道を習い、気分転換に歌を歌っていた結果、現在のようなスーパーな高校生になった・・・と。
兵「・・・以上です。」
・・・うそ・・・生まれてから10年間の記憶って・・・そんな・・・
・・・正直、記憶は失ったことはないので詳しくはわからないですが、物凄い喪失感と寂しさに襲われると聞いたことがあります。
・・・は!?そういうことか。
『忘れてさえいなければ』って、失った10年の間で会ってさえいなければってことですか!
それに「何かを得れば、何かを失う。その逆も然り。」は、才能を得て、記憶を失ったってことでしょう。
それはそれとして・・・・・・・・・・・・・
人生濃いなこの人!!!!
危うく悲しさより呆れが先に来かけたわ!!!
とんでもなく不謹慎だけど!!!
15年で経験していい物量じゃない!!!
というか、経験しようとしてもできる量じゃない!!!
龍「なんというか・・・うまく言葉にできないな・・・」
幸「そう・・・ですね・・・・・・」
瑞「・・・生きる教訓、そう思ってしまいました。」
瀧「確かに、そうかもね・・・」
取り敢えず、このことは雄太さんには黙っておこう。
僕はそう決めた。
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