MAIN STORY 4-2 天才と女優の家族 九条家編 side優斗

智=九条くじょう智沙斗ちさと

リ=九条くじょうリリア

規=九条くじょう規和のりかず

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デートの翌日、土曜日、午前11時30分。

いくら疲れた学生さんでもそろそろ寝苦しくなってきて起きる時間。


今、僕は部屋のリラックスチェアでのんびり読書している。

読んでる本はアーサー・コナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』。

僕のお気に入りで、もう10回は読み返してるよ。気になった人は読んでみてね。


そんな感じで僕がゆっくりしていた時だった。


智「お兄、出かけるからいつものジージャン貸して。」


ノックもせずに入ってきたのは一つ下の妹の九条智沙斗。髪や目は僕と同じ亜麻色で、髪型はショート。外見は身内贔屓なしで整っているが、何故かあんまりモテない。


聞くと、周りの男子が子供らしすぎて色々メンドクサくなり、いつもそっけない態度で接しているとのこと。

もともと智沙斗は精神年齢が人より高く、いろいろ達観しているダウナー系のため『可愛げがない。』とよくいわれるらしい。


本人曰く『可愛げは今の生活に必要ない』とのこと。

・・・言いたいことはわかるけど、そういうところだよ?


ただ、最近は気になっている男子がいるっぽいんだよねぇ。

今日は違うみたいだけど、たまにめっちゃ気合が入ってる時がある。

多分母さんも気づいて黙ってるし、智沙斗もには気づいてると思う。


ただ、恐らく僕に気づかれていることには気づいてない。

多分『男は鈍感だから分からない』って高を括っているんだと思うけど・・・

智沙斗はかなり分かりやすいからね。


優「はいはいわかったよっと・・・ほい。」

智「ありがと。」


智沙斗は僕のジージャンがお気に入りらしく、と出かける時は毎回取りに来る。智沙斗の部屋にもっていけばいいと思うんだけど、本人曰く『置く場所ないからムリ』とのこと。


確かにその辺にぺいされるより取りに来てくれた方がいいんだけど・・・

じゃあ場所作ろうよ、と思ってしまう僕は思いやりがないのかな?

・・・ないって言われるんだろうなぁ。


智「じゃ、晩ご飯までには帰ってくる。」

優「もうちょっと具体的に。」

智「・・・7時までには。」

優「わかった。それに合わせてご飯作るね。」

智「ん。行ってきます。」


とだけ言うと、僕の『いってらっしゃい』を聞かずに行ってしまった。

全く、返事を聞いてから行きなさいっていつも言ってるのに・・・


・・・まあいっか。

さて、続きを読もう。よっこらせっと。

え~っと、さっきのページは確か――――


コンコン、ガチャ。


リ「優斗く~ん。今から一緒にお買い物に来てもらえないかしら~」

優「・・・いきなりだなぁ。」


この人は僕の母親の九条リリア。

きれいな金髪に亜麻色の目、アイドルなんて比にならないほど整った顔、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだ抜群のプロポーション、学生の僕よりきれいな白い肌。

の、41歳のお母さん。


・・・ほんとに僕の母親なの?


正直、実の子どもの僕から見ても20後半で通じるくらい若い。

実際に最近一緒に歩いてたら姉弟とか恋人に間違えられた。

お母さんは『まだまだ若く見られる』と喜んでいたが、僕としては『姉弟』はまだしも『恋人』は菫がいるから複雑だったなぁ・・・


性格はおおらかで優しく、その容姿と合わさり包容力や癒し効果はすさまじい。でも、時々いきなり『~~するから手伝って』みたいなことを言ってきて困ることもある。・・・もしかしなくても、天然さんなんだろうね。

あと、他人の恋愛が大好きで、ラブコメには異常なまでの勘の鋭さを見せる。


両親はロシア系の人らしく、日本には高校生の時に引っ越してきたらしい。そして、として合気道に興味があり、部活に入ってやっていたらいつの間にか合気道五段になっていたという。ほんわかしているが実はメッチャ強い。


リ「・・・ダメかしら?」

優「いや、いいんだけど・・・いつもいきなり過ぎない?」

リ「そんなことないと思うんだけど・・・ごめんなさいね。」

優「次からは行く10分前には教えてね。」

リ「気をつけるわ。」


・・・多分、次もいきなりなんだろうなあ。


優「それで、どこに行くの?」

リ「駅前のスーパーね。今日はお肉とお野菜が安売りなのよ~。いっぱい買いたいから荷物を持ってもらうのを手伝ってほしくて。それに、いつものもお願いしたいの。」

優「何買うの?」

リ「う~ん、今欲しいのはほうれん草と、キャベツと、レタス、ニンジン、男爵イモに、鶏ももと豚バラの切り落としと、あとおつまみ用に鶏皮ね。あとは向こうで安いものがあったらって感じね。」

優「わかった。」


ほうれん草、キャベツ、レタス、ニンジン、男爵イモ、鶏もも、豚バラ切り落とし、鶏皮。よし覚えた。


リ「忘れないうちにメモしないと―――」

優「いいよ。覚えたから。」

リ「え?・・・あ、そうだった!優斗君のお買い物はメモいらずだったわね!」

優「味の素のギョーザのCMじゃないんだから。」


おいしいよね、味の素のギョーザ。どうでもいいけど。


優「なにで行くの?自転車?」

リ「う~ん、自転車でもいいのだけれど・・・今日は荷物も多いし車にしようかな~って思ってるわ。」

優「わかった。はい、車の鍵。」

リ「ありがと~。」


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リ「何か安くていいものはないかしら~~♪」


今はお母さんとお買い物中。

ほしいものを一通りかごに入れ、今は掘り出し物を探している。


因みに今日もスーパーの前でビラ配りしていたお姉さんに姉弟に間違われ、現在うちのお母さんは非常にご機嫌である。


しかも、一方では―――


男1「…おい、見ろよ。あそこのねーちゃん。」

男2「…うっわきれーすぎだろ・・・しかも胸デカいし。」

男3「…隣の男誰だ?カレシ?かなりイケメンだけど。」

男1「…弟じゃね?髪の色とか似てるじゃん。」

男2「…ならワンチャンいけるか?」


その人は僕の母ですよ~~。


ただ、自分の母親にいやらしい目を向けられるのは非常に不愉快なのでとりあえず殺気を放っておく。


男1「…ヒィッ!?」

男2「…やっべカレシだった!逃げろ!」

男3「…殺される!?」


さらにもう一方では―――


女1「…うわ、あそこの姉弟きれいすぎ・・・えっ姉弟だよね?」

女2「カレシの可能性もあるよ。」

女1「どっちにしてもヤバすぎ・・・てかあの男の子めっちゃタイプ。」

女2「ホントそれ。お持ち帰りしたい。」

女1「姉弟だったらイケんじゃね?」


僕たちは親子で~す。

あと僕はこの人とは違う人ですが既に彼女がいるのでお持ち帰りはNGでお願いします。


リ「ふふっ。」


と、ここでお母さんが威圧した。


女1「…ヤバッ、睨まれた。」

女2「…てことはカレカノ?」

女1「…ブラコンの可能性もあるけど、とりあえずお持ち帰りは不可だね。」

女2「…ざんね~ん。」


お母さんも怒ると怖いんだよねぇ・・・

自分に対して怒られたことはないけど、横から見たときは怖かったなぁ。

イジメに気づかなかった先生相手に聞いてて先生が可哀そうになるくらい言ってたし。


あの時は僕は泣かれたんだっけ・・・あれもショックだったな・・・

本当に・・・僕が天才こんなじゃなかったら・・・・・・クソっ。


リ「あ、優斗く~ん。ミニトマト入れてちょうだ~い。」

優「は~いっと。1パック?」

リ「うん。さ~て、ほかに安いものはないかしら~~。」

優「レタスと鶏ムネとが安かったのと、卵が1人1パック限定で半額だった。」

リ「ホント!?じゃあ行きましょう!」

優「はいは~い。」


真っ先に卵コーナーに行くお母さん。


今回は値段も値段だけど、僕の中で女性は『~~限定』に弱いというかその文言につられやすい、っていうイメージがあるなぁ。菫も『期間限定』とか『数量限定』のものをよく買ってるし。僕は、どちらかというと限定品より『安定して良いもの』の方が好きなんだよねぇ。


まあこれは人それぞれだからね。でも、僕の感覚では男性は定番品、女性は限定品の方が好きな人の割合が多い気がするね。


リ「まだ残ってたわ!よかった~。安すぎるから売り切れてないか心配だったのよ~。」


いやいや、何言ってのさ。


優「僕が売り切れてるものを教えると思う?」

リ「・・・そういえばそうね。変なこと言ってごめんなさいね。」

優「あとレタスと鶏ムネが安かったけど買う?」

リ「もちろんよ!」


そのあと目当てに物を全て購入できて上機嫌なお母さんと共に帰宅した。


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リ・優「ただいま~」

規「おかえり~」


買い物から帰ってきたらお父さんが先に帰っていた。


リ「あら、ノリ君帰ってたのね。」

規「うん!仕事がやっっっっっっっっっっっと終わってね!!」

リ「お仕事お疲れ様~。」

規「リリちゃんも買い物お疲れ様!優斗も手伝ってくれてありがとうな!」

優「どういたしまして・・・っとお父さ~ん、入れるの手伝って~」

規「よ~し分かった!任せなさい!」


この家族愛溢れる人は、僕の父親の九条規和。

家ではこんな感じで家族にデレデレなお父さんだが、実は警視庁の刑事部長。

それも41歳という歴代トップレベルの若さで就いたウルトラエリート。

現在43歳で、黒髪黒眼の純日本人。ただ、僕も智沙斗も母親の遺伝子を色濃く受け継いでいるから、あんまり似ていない。


性格は、外では他人に厳しく自分にも厳しく、内では他人に甘く自分にも甘く、という感じ。なかなか両極端な性格のお父さんなんだけど、家族に甘すぎる、というかもはや過保護レベル。


まあでも、お父さんのスタンスは『家族の意思が最優先』だから、子どもの結婚相手に『どこの馬の骨とも知らん奴に・・・』とか理不尽なことを言う人じゃないから、そこはまだマシな方だね。


実際、菫とあいさつに行ったときには寂しそうだったけど祝福してくれたしね。

まあその時はお母さんのラブコメ好奇心に火がついて大変だったけど。


そして、みんなが気になるお母さんとの出会いなんだけど、お母さんが入った時の合気道部の当時の部長がお父さんだったんだって。それで合気道の技はもちろんだけど、日本語も嫌な顔一つせず、根気強く、丁寧に教えてもらったことで、お父さんに惹かれたんだって。


因みに、お母さんが女は度胸と言わんばかりに真正面から告白したらしいよ。

お父さん曰く『リリちゃんみたいな超美少女がアピールなしで告白してきたから30分ぐらい本当に夢だと思ってた。』とのこと。


・・・まあ気持ちはわかる。


優「さて、今日は豚バラブロックのカレーにしよう。」

リ「ほんとに!?やった~~~!」

規「久しぶりのごほうびだ~~!!」


ということで、今日は我が家全員の大好物である『豚バラブロックのカレー』を作ります。シェフは15歳にして料理歴7年の九条優斗です。


材料はメークイン、ニンジン、玉ねぎ、ブロックの豚バラ、市販のルー。

ルーは何でもいいけど、僕の家ではバーモントカレーの中辛を使ってるよ。

野菜の分量はパッケージの裏側の分量でOK!豚バラは一人200g。


あとはパッケージ裏の順番で作ればいいんだけど、僕はひと工夫として肉を表面に焼き色がつくくらい焼いて、その油で玉ねぎを炒めてるよ。


たったこれだけなんだけど、我が家では好きな料理でぶっちぎりのナンバーワンなんだよね。小学生の時、智沙斗の自己紹介で好きな食べもの『お兄のカレー』だったときは嬉しかったなぁ・・・


優「お父さん、野菜切るの手伝って~。」

規「よし、任せなさい!」

リ「私は!?何かすることある!?」

優「お米研いで炊いといて。」

リ「任されたわ!!」


このメニューの時の我が家の熱量はすごい。

眼がキマりすぎてこっちが引いてしまうくらいにはすごい。


そして、お気づきの方もいるかも知れないけど、我が家の料理番は僕とお父さんなんだ。お母さんも決して料理ができない事はないんだけど、味が性格的にかなりおおざっぱなんだよね。だから、実はお父さんの方が料理は上手くてお母さんは買い物にはよく行くんだけどほとんど料理しないんだよ。


とか言ってる間にあとは煮るだけ。

お米も炊飯器にセット出来たみたいだし、あとは観察しながら放置するだけだね。


そこから約1時間くらいグツグツして、ふと時計を見たら6:30過ぎ。

そろそろ智沙斗が帰ってくる頃だね。 


ということで4人分のお皿を出して先にご飯を盛り、少し冷ましておく。こうすることでアツアツのカレーをかけても少し食べやすくなるよ。


カチャン、ガチャッ


お、帰ってきた。


優「お帰り。」

リ・規「お帰り~。」

智「ただいま~・・・はっ、この匂いは!」


すると、手も洗わずとんでもない勢いでキッチンまで走ってきた。


優「ご褒美カレーだよ。」

智「勝った!!!!!!」

優「何に?」


あとうるさい。


智「これで・・・あと1ヶ月は頑張れる。」

優「じゃあ、次のご褒美カレーは1ヶ月後でいい?」

智「・・・ダメ。2週間に1回は必要。」

優「はいはい。あ、でも豚バラが安売りしてないと作らないからね?」

智「それはしょうがない。」

優「よし、聞き分けがいいからお肉追加。」

智「やった!!!!!!」


近年稀に見るダウナー系の全力ガッツポーズである。

これはなかなか珍しいものが見れた・・・明日はアラレ時々雷槍かな。

良い人生だった・・・な・・・・・・ガクリ


とそんな茶番は置いといて、お肉を1つ智沙斗に追加する。

我が家の家族は大概の事は僕のご飯で釣れる。全く現金なものである。


優「智沙斗はとりあえず手洗ってきて」

智「ラジャー」


見事な敬礼を見せて洗面所にダッシュする智沙斗。

普段からそのやる気を見せてほしいね。まあそのためには毎食ご褒美カレーにしないといけないかもね。・・・つくるの飽きてきそう。












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天才彼氏君と女優彼女ちゃん 猫の灯籠 @NekonoRantan

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